トランプの国境の壁を支援する民間人によるクラウドファンディングは何が問題なのか?

フロリダの人間は、大蛇ワニレストランの珍事件など、奇妙な事件に遭遇することが多いようだ。 それは、2013年、Twitterのパロディーアカウント「フロリダマン」が登場してからのことで、たちまち大人気になった。

だが、5日前にクラウドファンディング・プラットフォームGoFundMeでフロリダマンが開始した、ドナルド・トランプが推進するメキシコ国境の壁の建設資金を集めるためのキャンペーンは、どうもジョークにしか思えない。10億ドル(約111億円)という強気な目標を立てて先週の日曜日にローンチしてばかりだが、すでに20万人以上の個人から1300万ドル(約14億5000万円)もの資金を調達した。GoFundMeのキャンペーンには締切がない。

その増え続ける巨額の現金の山がどこへ行くのか、そこに疑問がわく。このキャンペーンを立ち上げたBrain Kolfageという男性は、以前、10月にFacebookによって削除されたRight Wing News(右翼ニュース)というFacebookページと共に、陰謀説を唱えるウェブサイトを運営していた。

イラクに派遣されて両足と片腕を失ったアメリカ退役軍人のKolfageは、GoFundMeのページで自身の行動の公共性について長々と話している。また彼は、Fox Newsに「何度も登場している。(だから)自分が信頼できる実在の人物であることがわかる」だろうと言っている。その一方で彼は、寄付しようと思っている人の気持ちを「邪魔したくない」と昨日(現地時間21日)のNBC Newsで語り、これまでのメディアでの問題発言については言及しなかった。

それより心配なのが、寄付の100パーセントが「トランプ・ウォール」に使われるとKolfageはGoFundMeのページに書いているが、今の時点では、その資金を政府に提供できる制度がない。それを実現するためには、そのための法案が議会を通過しなければならない。Kolfageはこう言っている。「この資金を、適切な場所にどのように届けるか? 私たちはトランプ政権と連絡をとり、調達が完了した時点で資金を送る先について確認をしています。この情報が確定し次第、お知らせします。すでに私たちは、非常に高度なレベルで複数のコンタクトをとり、支援を得ています」

このページでは、また、Carlyle Groupの共同創設者David Rubensteinが750万ドル(約8億3400万円)をワシントン記念塔のてっぺん近くにできたひび割れの修繕費用として寄付した2012年の話を例にあげて、アメリカ政府が過去に個人の投資家から巨額の寄付を受け取っている事実を伝えている。しかし、彼のGoFundMeキャンペーンでは、米国議会がその活動の背後にあり、750万ドルの寄付が、それに同額を上乗せする条件(マッチングギフト)で修繕に使用されたのかどうかは明らかにしていない。

たしかに、National Endowment for the Humanities(全米人文科学基金)などのいくつもの政府機関が、マッチングギフト制度のもとで個人の寄付を受け取っている。しかしこの考え方は、寄付金で政府主導の活動に大きな力を与えるものであり、自分たちには決定権のない寄付を募ることになる。バージニア州選出の共和党下院議員で下院司法委員会の議長を務めるBob Goodlatteは、昨日、New York Postにこう述べている。「市民が資金を集めて『政府がこういう目的で私の金を使う』と宣言することなど、とうてい許されない」

アメリカ人有権者のおよそ3分の1が共和党支持者で、その3分の2がトランプが推し進める国境の壁の建設を支持していると考えると、Kolfageの10億ドルの目標が突拍子もない額だとは言い切れない。キャンペーンにはすでに、5万ドル(約560万円)を寄付した人が1人現れている。さらに勢いがつけば、他の人たちも、これが財政的政治的な力を動かす単純で直接的な方法だと思うようになる。

このまま勢いが高まれば、ある時点でこのキャンペーンには、Kolfageに寄付することが賢い方法なのか否かという疑問とは別に、いろいろな問題が浮かび上がってくる。なかでも、紐付きの寄付を政府が受け取ることは法律に反するわけだが、アメリカの一般市民がGoFundMeなどの資金調達プラットフォームを通して団結すれば、ロビイスト・グループのような大きな力を振るうようになるかも知れないという心配がある。KolfageのGoFundMeキャンペーンにどれだけ金が集まっても、政府は壁を作る責任を負うわけではないが、共和党議員たちはすでに、壁の建設のための寄付を財務省が国民から受け取れるようにする法案の準備を進めている。来月、民主党が下院の過半数を占めるようになれば、この法案が通る見通しは消えるが、将来の政権に筋道を付ける可能性は残る。

では、Kolfageが集めた数百万ドルの資金はどこへ行くのか。それを見るのは興味深い。昨日のNew York Postの記事にも書かれているが、GoFundMeでは、「明記された用途以外に資金を使ってはいけない」という規定がある。そのため、政府がKolfageと協力する道が絶たれれば、Kolfageは寄付者に寄付金を返金しなければならなくなる。または、少くともGoFundMeは(我々の質問への返答はないが)、そうする責任を負うことになるだろう。

GoFundMeは、以前にも寄付者に返金をしたことがある。

つい先月のことだ。ニュージャージーの夫婦と1人のホームレスの男性が、GoFundMeを使って作り話で40万ドル(約4450万円)以上を集めた罪で告発された。彼らはその金を、車や旅行や高級ハンドバッグやカジノなどに使っていた。その夫婦と男性は、不正行為による窃盗を犯したことから、詐欺と共謀による第二級窃盗罪に問われている。GoFundMeは、キャンペーンに寄付をした1万4000人の寄付者に全額を返金すると話している。

おかしなことに、GoFundMeは、自社がどれだけの資金を調達しているかは公表していない。同社に投資をしているのは、Iconiq、Stripes Group、Accel、TCV、Greylock、Meritech Capitalなどだ。GoFundMeが最初に外部からのラウンド投資を受けたのは4年前。同社は2010年に設立されている。

上の写真:コロラド州キャッスルロックにある小規模ショッピングセンター。ここでKolfageのGoFundMeキャンペーンへの寄付が呼びかけられていた。

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(翻訳:金井哲夫)