元NSAとAmazonのエンジニアが「データのGitHub」を開発中

6か月ほど前、NSA(米国家安全保障局)、Google、それにAmazon Web Servicesに勤務した経験を持つエンジニアやデベロッパーのグループが出し合ったアイデアがある。

画像クレジット:Oleksandr Hruts/Getty Images

データは、デベロッパーやエンジニアが新しい機能を開発し、より優れたイノベーションを実現するために重要な役割を果たす。しかしデータは、非常に機密性が高かったり、入手しにくいものだったりすることが多い。カギが掛けられた状態で厳重に保管され、封印されていたり、規約によって守られていたりする。アクセスの承認を取るのに数週間かかることもある。そこで、上記のエンジニア達は、Gretelを設立した。まだ初期段階のスタートアップだが、デベロッパーが機密性の高いデータをリアルタイムで安全に共有し、協力して作業できるようにすることを目指している。

共同設立者のひとりであるAlex Watson(アレックス・ワトソン)氏は、それは人々が考えているようなニッチな問題ではない、と述べている。デベロッパーは、どんな会社でも、この問題に直面する可能性があるとも言う。デベロッパーはユーザーデータ全体へのフルアクセスは必要としない場合が多い。取り掛かりとして、その一部や、サンプルのデータさえあればいい。多くの場合、本物のユーザーデータのように見えるだけのデータでも十分なのだ。

「まずは、データを安全に共有できるようにすることから始めます」と、ワトソン氏は言う。「データが使えるようになれば、いろいろ可能になるすばらしいユースケースがいくらでもあります」。同氏は、GitHubのように、広く利用されているソースコード共有プラットフォームが、ソースコードへのアクセス性を高め、コラボレーションを容易にするのに役立ったと述べている。「しかし、データについては、GitHubのようなものがないのです」と彼は続けた。

そこでワトソン氏と、ほかの共同創立者であるJohn Myers(ジョン・マイヤーズ)、Ali Golshan(アリ・ゴルシャン)、Laszlo Bock(ラズロ・ボック)の各氏がGretelを考え出したわけだ。

「現在、データセットの匿名化されたバージョンを、デベロッパーが自動的にチェックアウトできるようにするソフトウェアを開発中です」と、ワトソン氏は述べている。このいわゆる「合成データ」は、基本的には、通常の機密性の高いユーザーデータのように見え、同じように扱える人工的なデータだ。Gretelは、機械学習を使用して、名前、住所、その他、顧客識別子などによって構成されるデータを分類し、できるだけ多くのラベルをデータに付加する。ラベル付けされたデータには、アクセスポリシーを適用できる。次に、このプラットフォームは、差分プライバシーを適用する。これは、大量のデータを匿名化するために使用される手法の1つだ。それにより、データを実際の顧客情報に結び付けることはできなくなる。「これは、機械学習によって生成された、完全に偽のデータセットです」とワトソン氏は説明している。

この活動は、すでに注目を集めている。Gretelは、Greylock Partnersが率いるシード投資によって350万ドル(約3億9100万円)のシード資金を集め、このプラットフォームを離陸させることができた。このシード投資には、Moonshots Capital、Village Global、およびいくつかのエンジェル投資家が参加している。

「グーグル(Google)では、デベロッパーがデータに安全にアクセスできるよう、独自のツールを作成する必要がありました。われわれが必要とするツールが存在しなかったからです」と、元グーグルの重役で、現在はGreylockのパートナーのSridhar Ramaswamy(スリドハー・ラマスワミー)氏は述べている。

Gretelでは、実際に使った量に基づいて顧客に課金するという。それは、Amazon(アマゾン)が、クラウドコンピューティングのサービスへのアクセスに価格設定するのと同様の仕組みだ。

「今、これはまさに進行中であり、開発が進んでいるところです」とワトソン氏は述べた。Gretelは、今後数週間でデベロッパーコミュニティとの関係を強化する計画を立てており、6カ月以内には、Gretelを実際に利用できるようにすることを目指しているとのこと。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Facebookが個人情報侵害の疑いでアプリ数万本との接続を凍結

Facebookは、ユーザープロフィールを不当かつ大量に収集している疑いがある「数万本のアプリ」との接続を凍結したと公式ブログで発表した。

1年前Cambridge Analyticaスキャンダルの後、Facebookの調査チームが個人情報を収集していると指摘したアプリは400件だったから、今回の措置は範囲が大きく拡大されたことになる。2016年の大統領選挙に際して投票先を決めていないユーザー数千万のプロフィール情報がトランプ候補の当選を助けるために用いられた疑いが出ていた。

Facebookは今回凍結したアプリの正確な数については発表していないが、デベロッパーは400社に上るという。

アプリの接続が停止された理由となった利用約款に反する行為の形態は複数だ。Facebookのユーザープロフィールを大量に吸い上げていた場合もあり、個人が特定可能な状態で取得したプロフィールを公開していた場合もある。

Facebookは個人情報の侵害を約款で繰り返し禁じてきたが、ユーザー情報の不当な利用が「これまで公表してきたものだけだったとは確認できなかった」という。過去に公表されたものとしては、韓国のデータ解析企業であるRankwaveによるデベロッパープラットフォームの不当な利用、Facebookによる監査の拒否、myPersonalityのようにクイズを装って400万件以上の個人データを収集していた例などがある。

スキャンダルの発覚によりCambridge Analyticaなど深刻なセキュリティーの侵害を.行ってきた企業の運営は停止されたが、議会、連邦政府当局はさらなる調査を行い、また制裁金を課している。これにはFacebookのLibra暗号通貨プロジェクトから同社のユーザーデータの処理に関する問題などが幅広く含まれる。

Facebookでは「この件に関しては引き続き調査を継続する」としている。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Tim Cook、プライバシーや中国におけるユーザーデータ、Alex Jones追放の件について語る

一方では秘密主義と悪名を響かせたが、Appleはこれまで自社の主義について語ることをためらうことはなかった。最近動きの激しい社会にあって、この1兆ドル企業は以前にも増して発言すべきことを抱えている。

HBOのVICE News Tonightでのインタビューで、AppleのCEO、Tim Cookは多くのトピックについて語ったープライバシー、いかにAppleが法律面で困難を抱えながらもユーザーのデータを安全に保管しているか、なぜ陰謀論者Alex JonesをAppleのプラットフォームから追放することにしたのかなどを含む。

ViceがそのインタビューのやりとりをTechCrunchと共有した。Tim Cookの発言は以下の通りだ。

プライバシーに関し、Cookは“ある程度”の規制を求めている

テック産業はプライバシー問題に関して、もう戻れない地点を過ぎたのだろうか。

「プライバシーは21世紀において最も重要な問題の一つだと考えている」。CookはインタビュアーのElle Reeveにこう語った。「あなたについての情報は、あなたの家よりオンラインや携帯電話の方にたくさんある。我々は今、そんな状況にいる。あなたが何をブラウズしていたのか、あなたの友達、交友関係、写真などがあなたの携帯電話の中にある。

「こうしたこと、そして情報の重要性を考えてほしい。我々はそれを真剣にとらえている」とCookは語った。

Appleはこれまで長い間、プライバシーについて独特のアプローチをとってきた。Appleはあなたのデータを欲しがっていないーFacebook、Googleのような広告を扱う大企業と違って、Appleはあなたのデータをどうかしようなんてことはしていない。しかしデータを蓄積している会社は、ユーザーデータの誤使用や暴露で非難を浴びている。議会の助けを借りて、そうした企業を巻き戻し、パワーを人々に戻すにはもう手遅れなのだろうか。

「私は法規専門の人間ではない」と断った上で「そうするには、ある程度の行政による規制は重要だと考えている」とした。しかし、それがどういったことなのかCookは具体的に示さなかった。

Cookはライバル企業の名前は出さなかったが、Appleはプロダクトデザインにおいて“可能な限り最小限の情報収集にする”アプローチをとっていると語った。これは目新しいものではないーAppleは何年もこうしたアプローチを続けている。

「我々は詳細なプロフィールを作ってはおらず、他企業がターゲット広告を送るためにその情報を買う、ということも許していない。そうしたビジネス手法は我々がとるものではない」とCookは語る。

結果としてAppleは競合他社に遅れをとっているのだろうかーたとえばAlexaに対抗するSiriとか。Cookは「ノー」と言う。彼らのサービスをより良いものにするためにユーザーが自分たちのデータを諦めなければならないのは、“かなりの攻撃”だと語る。

大部分において、Appleはユーザーデータを端末上で処理するので、Appleはそのデータを見ることはない。

プライバシーは“人権”だー中国においても

デバイスメーカーとして、Appleはこれ以上大きくなり得ないほどグローバルだー中国においてもそうだ。デバイス製造ライバルのGoogleや、他のテック大企業Facebookは中国で足場をほとんど築いていない。しかしそれは、Appleのプライバシー理念と中国の監視体制における衝突があるからだ。

人権としてのプライバシーを中国での事業にも適用するのかと尋ねたら、Cookは「当然適用する」と答えた。

「我々にとって暗号化というのは世界どの国でも同じだ」とCookは言う。「たとえば、我々は米国のために暗号化をデザインしたり、国によって違う適用の仕方をするということはしない。どこでやろうとも同じだ。なので、中国でメッセージを送るには、暗号化される。私がコンテンツを作るということはできない。もちろん、米国においてもできない」。

今年初めAppleは、中国で新しく導入された曖昧かつ混乱や衝突も起こすようなサイバーセキュリティルールに従うために、中国人ユーザーのためのiCloud暗号キーを中国本土に移した。これは懸念を巻き起こした。というのも、この動きは中国政府が、中国拠点のAppleのクラウドパートナーに中国人顧客のデータを引き渡すよう要請することができることを意味するからだーFBIが米国においてAppleにデータ引き渡しを強制したように。Appleは事業を続けるために協力しなければならなかったーそして中国はAppleのグローバル全体の年間売上の20%近くを占めている。

Cookは、中国人ユーザーのデータを中国に保存することが、中国政府当局にとってデータへのアクセスが容易になるというのは“容認しない”と語り、暗号キー移管の正当性を主張した。

「我々は世界中いろんな国にサーバーを設置している」とCookは話す。「その方が、一つの国に置くよりもデータへのアクセスが難しくなる。大事なのは、暗号化プロセスがいかに働くかと、誰がその鍵を持つのかということだ。我々のほとんどのケースにおいては、あなたと受取手がその鍵を持つ」。

Alex Jonesを追放するという決断は“自主的”に行なった

Alex Jonesは言論の自由の最後の砦だったと言う人もいる。またサンデイフック小学校銃乱射事件はでっち上げだったと考えているAlex Jonesを危険な陰謀論者だと呼ぶ人もいる。

今年、FacebookはAlex Jonesを追放し、その後にTwitterが、そしてYouTubeも続いたーまた MailChimpSpotifyそして PayPalといったテック大企業も続いた。Appleは沈黙を続けた。JonesのポッドキャストはまだiTunesにあり、彼のアプリはAppストアにあった。その沈黙はJonesのコンテンツを排除するまで続いた。

「我々は政治的な立場はとらない」とCookは語る。「どちらかに偏ることはしない」。Appleのさまざまなプラットフォーム全般で、「ユーザーは、かなり保守的なものから、かなりリベラルなものまで全てを見る」。そしてCookは「それが、私がそうであるべき、と考えるものだ」と加えた。

Cookは、決断を誘発した何かがあったとは言わなかったが、他のテック企業とJonesのことで会話をしたことは“決して”ないと話した。

「会話してもよかったのでは」とReeveが尋ねると、Cookは「しかし、なぜ」と切り返した。「だって、大きな事でしょう」と言うReevにCookは「Appleが“自主的に”決断するということが大事なのだ」と答えた。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

ユーザーデータは誰がどのように収集しているのか

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【編集部注】執筆者のJose Nazario博士は、Fastlyにてセキュリティリサーチ部門のディレクターを務めており、”Secure Architectures with OpenBSD”や”Defense and Detection Strategies against Internet Worms”の著者でもある。

巨大なテック企業から街角の商店を含め、全ての企業はデジタル企業だ。パートナーやサプライヤーといった関係者から成り立つ大きなエコシステムの存在によって、企業はサービスを提供することができている。そして、日々生活がデジタル化していくのを目の当たりにしている顧客もそこにいる。

デジタルサービスがちゃんと機能するため、もしくは無料であり続けるために、ユーザーデータの収集が必要であると多くの消費者が理解している。例えば、地図サービスで位置情報が把握できなければ、サービスの訴求力が弱まってしまう。つまり便利さとプライバシーはトレードオフの関係にあり、ほとんどの人はそれを問題視していない。そして、トレードオフに関する交渉は、消費者とオンラインサイトまたはオンラインサービスとの間で発生している。

しかし、消費者と直接関わりを持つ企業に対してサービスを提供している企業はどうだろうか?舞台裏で動いているパートナーやサードパーティといった存在のことだ。そのうちの多くが、ISPやクラウドサービス企業、コンテンツデリバリネットワーク(CDN)で、インターネットのトラフィックの45%がこのような企業を介している。オリンピックの映像を途切れることなく高速配信し、ECサイトで何十億件もの決済を処理しているのも彼らなのだ。そして彼らのようなサードパーティも、ユーザーのネット上での行動をトラックし、データとして販売している可能性があるということに多くの消費者は気づいていない。

連邦通信委員会(FCC)は、同意なしにユーザーデータを販売しているISPの取り締まりを行っており、最近CDNにもその目を向けはじめた。しかし、ユーザーデータの悪用を止めるためには、規制が作られるのを待っていれば良いということではない。全てのサードパーティは、自分たちがどのようなデータを集めているかをはっきりと公に開示する道徳的責任を負っている。そして、このような情報は契約がむすばれる前に、消費者や法人顧客に対して提供されるべきだ。さらに各企業は、このような消費者中心の個人情報の取扱方法に従うよう、関係するサードパーティに対して強く求めるべきである。

ユーザーデータは少ないほど良い

ユーザーデータの収集は、むしろ善意に基いてはじめられるケースもある。例えばオンラインサービスでは、ユーザーがモバイル端末とデスクトップ端末のどちらを利用してサイトにアクセスしているかというのを知ることで、ユーザーエクスペリエンスを向上させることができる。しかし、オンラインサービスが性別などの人口統計情報を集め出し、消費者にとっては少しパーソナライズされ過ぎているとも映るようなコンテンツを表示するようになると、ユーザーデータの収集・保管に悪意を感じるようになる。

今こそ、全てのサードパーティに対してユーザーデータ保護の水準を高く保ち、データ利用の目的を開示するよう求めるべきだ。

プロバイダは、保管するユーザーデータの量が減ることで、時間と共にその利点を感じられるようになるだろう。もしもプロバイダがユーザーデータを保管しなければ、政府からデータ提出要請を受けても、提出できるデータがないことになる。さらに、サイバーアタックやデータ漏洩から守らなければならないデータの量も減少する。ISP・CDNに関しては特に、ユーザーデータ無しでも何ら問題なく業務を行うことができるのだ。

透明性を向上させユーザーにデータコントロールを返上せよ

Pew Researchの調査によれば、90%以上の大人が、自分たちのデータを企業がオンラインでどのように収集し共有するかに関してコントロールを失ってしまったと感じている。ユーザーデータのアクセス権やデータ保管の期間、また広告をパーソナライズするため、どのようにデータが結合・再構成されるかなどについて、近いうちに企業はユーザーへ情報を開示するよう義務付けられることになるだろう。テック企業最大手のGoogleが、ユーザーデータ収集周りの透明性向上に向けた動きを先導しており、同社のサービスでは、ユーザーがどの情報が共有されても良く、どの情報は共有して欲しくないかというのを簡単に選べるようになっている。

企業が失うものとは?

企業がどのようなデータを収集・販売することができ、どのくらいの期間データを保管できるかについては、まだ法整備が進んでいない。現存する規制も州によってまちまちで、内容もそこまで厳しくはない。しかし、企業がデータ収集を収益源とするのは賢明ではないだろう。オンライン広告ブロッカーが普及していく中、市場ではすでに自己補正の動きが見えはじめている。さらに、ISPのデータ収集量を削減しようとする動きを、FCCは止めないかもしれない。

サードパーティの中には、消費者と直接関わりを持つ企業が受け取った承諾の影に隠れていることに満足している企業がいる一方で、それではいけないとちゃんと感じている企業も存在する。この曖昧な承諾が現状なのかもしれないが、これもそう長くは続かないだろう。今こそ、全てのサードパーティに対してユーザーデータ保護の水準を高く保ち、データ利用の目的を開示するよう求めるべきだ。自分たちのサービスにとって必須ではないユーザーデータを収集・共有・販売したいという気持ちに打ち克った企業こそが、最終的に日の目を見るのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter