クラウド契約サービス「Holmes」がMF KESSAIなどと連携ーー契約書に関わる“すべて”を楽に

契約書の作成から管理までを一括サポートするクラウドサービス「Holmes(ホームズ)」。同サービスを提供するリグシーは6月7日、電子署名サービスの「ドキュサイン」、およびマネーフォワードグループの「MF KESSAI」とのサービス連携を発表した。同サービスはこれにより、単なる“契約書のクラウド作成サービス”からの脱却を目指すという。

Holmesは、クラウド上で企業間の契約書の作成、締結、管理までを一括して行えるSaaSサービスだ。サービス上には弁護士が作成した様々なタイプのテンプレートが用意されているほか、それらの文言を自由に編集することでオリジナルの契約書を作成することが可能だ。

Holmesは契約書を軸にしたコラボレーションツールとしても機能する。契約書の修正やチェックの過程で社員同士がコメントなどを書き込めるほか、各部署間にまたがる承認フローなどもすべてサービス上で完結できる。2017年8月リリースのHolmesは、これまでに約150社の有料ユーザーを獲得。100人以上の従業員を抱える企業がその大半だという。

今回、リグシーがサービス連携を発表したドキュサインは、2003年設立の米国企業。同社が提供する電子署名サービスは約180ヶ国の37万社以上で導入されており、2018年4月にはNASDAQ証券取引所への上場も果たしている。

実は、これまでのHolmesにも独自の電子署名機能は搭載されていた。しかし、「これまでのHolmesでは、相手先に契約締結を依頼する際に自動で送られるメールが日本語にしか対応していないことが、グローバル契約において障害となっていた。また、Holmesのような新しいサービスを導入する際に必要な稟議が通り易くなるなど、ドキュサインの知名度が生かされる可能性もある」とリグシー代表取締役の笹原健太氏は話す。

今後、ユーザーはHolmes上でドキュサインの電子署名サービス選択することができ、英語やフランス語など多言語化された締結依頼メールが送られる。通常は年間契約が必要なドキュサインを、1通あたり600円という従量課金で利用できることもメリットだ。

そしてもう1つ、Holmesがこれまでの“契約書のクラウド作成サービス”からの進化を象徴する連携がある。マネーフォワードグループのMF KESSAIとの連携だ。

これまでもTechCrunch Japanに度々登場してきたMF KESSAIは、企業の与信審査から請求書発行、代金回収などの請求業務を代行するサービスだ。これまで、ユーザーがMF KESSAIを利用する場合、代金の支払日や請求先などのデータを手入力する必要があった。しかし、今回の連携によりHolmesで作成した契約書のデータを自動的にMF KESSAIに取り込むことが可能になる。

笹原氏はこの連携について、「営業にとって、契約書はゴール。でも、経理にとってはスタートになるもの。契約書は業務間をつなぐハブのような存在だ。契約書を作るのも楽だし、その後の関連業務もすべて楽になるというような世界観を今後つくって行きたい」と話す。

MF KESSAIとの連携もその世界観を構成する1つで、契約書を締結した後にやってくる請求業務をサービス連携によって楽にするという考え方だ。笹原氏によれば、リグシーは今後も他社との連携によって、AIによる契約書の自動作成・自動チェックサービスや、企業に溜まった紙の契約書をPDF化して保管するサービスなどを2018年夏頃をめどに提供していく予定だという。

リグシーは2017年3月の創業。同年10月には500 Startups Japanなどから数千万円規模の資金調達を実施している。

オンラインで契約書の作成から締結まで可能、クラウド契約サービスの「Holmes」が資金調達

法務系クラウドサービス「Holmes」を提供するリグシーは10月24日、500 Startups Japanを引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。調達金額は非公開だが、数千万円規模だという。

Holmesは、クラウド上で企業間の契約書の作成、締結、管理までを一括して行えるSaaSサービスだ。サービス上には弁護士が作成した様々なタイプのテンプレートが用意されているほかそれらの文言を自由に編集することでオリジナルの契約書を作成することが可能だ。

土地や建物の売り買い、担保の譲渡などの取引関係や、労務関係のものまで200種以上のテンプレートが利用できる。

作成した契約書はサービス上から直接Eメールを通して契約相手に送ることができる。受け取った企業がメールに記載されたリンクから契約書の内容を確認し、承認することで契約が締結される。

通常、紙ベースの契約書で締結を完了させようとすると、承認フローを含めて1〜2週間程度の時間がかかってしまうこともある。その一方、締結までのフローをすべてオンラインで完結できるHolmesを使えば、その時間を大幅に短縮することができる。

Holmesは2017年8月にサービスを正式ローンチ。リグシー代表取締役の笠原健太氏は、いざローンチしてみると意外な顧客層からの反響が大きかったと話す。

「当初は、コストや時間的な面から契約書の作成を避けてきた中小企業やスタートアップをターゲットとして想定していました。しかし、ローンチしてみると、意外にも大企業からの問い合わせが多かったのです」(笠原氏)

大企業ともなれば、様々な企業と契約を交わす機会も多い。しかし、その数が多ければ多いほど管理が煩雑になってしまう。その点、オンラインで契約書を締結でき、その後の管理もサービス上で行えるHolmesは大企業にもウケたようだ。

現在Holemsは、月額無料で契約書ごとに都度購入する「Freeプラン」、月額980円で契約書を作成し放題の「Standardプラン」、契約フローや権限の管理までを行いたい大企業向けの「Enterpriseプラン」を用意している(料金は個別見積もり)。

自身も弁護士である笠原氏に聞けば、契約書の作成を弁護士に依頼すると1通3〜5万円ほどの費用がかかるというから、この料金設定は十分に魅力的だと言えるだろう。

創業は「裁判をなくしたい」との想いから

今回の取材はリグシーのオフィスも兼ねる法律事務所で行った。そこはオフィスビルが立ち並ぶ赤坂見附の中心地にあって、巨大な円卓で取材をするなんていうスタートアップではちょっとないような、立派で豪華なオフィスだった。普僕は普段マンションの1室で取材をすることも多いものだから、最初、場所を間違えたと思い一度エレベーターを降りたくらいだ。

普通なら現在の成功に甘んじてしまいそうなものだけれど、その笠原氏がなぜスタートアップを立ち上げようと思ったのだろうか?

「もともと弁護士として自分の法律事務所を立ち上げたのは、『この世から紛争裁判をなくしたい』という想いからでした。裁判は費用もかかるし、それまで取引相手だった相手方との関係も崩れてしまう」と笠原氏は語る。

「紛争裁判が起こる一番の理由は、面倒くさいだとか作成の仕方が分からないなどの理由で契約書を作成しないことです。だから、今度は『契約書を作らない理由をなくしたい』という想いでリグシーを創業しました」(笠原氏)

それまではスタートアップ業界とはかけ離れた業界で暮らし、もちろんSaaSサービスの開発ノウハウもなかった笠原氏は、当初は外部企業と協力しながらHolmesをつくり上げ、2017年3月にリグシーを創業。現在は自社の開発メンバーも含む11名でリグシーを運営している。