予約管理システム屋ではなくサービス版のAmazonへ、クービックが習い事の事業者向け新機能

近年、徐々にではあるけれど身の回りのサービスを手元のスマホから気軽に予約できるようになってきている。

わかりやすい例でいくとライドシェアアプリの「Uber」。もしくはタクシーの配車アプリでもいいけれど、アプリからわずか数タップで配車が完了。おまけに決済までアプリ上で完結するようになった。

他にも飲食店をはじめ様々なシーンでネット予約が広がりつつあるが、それはまだごく一部のこと。良いサービスを提供している事業者でも、いまだに電話予約にしか対応していないところも多い。

そんな予約にまつわる課題の解決策として、ビジネスオーナー向けにクラウド予約管理システム「Coubic(クービック)」を提供しているのがクービックだ。高度なウェブの知識がなくても、テンプレートを活用して自社サイトやブログにネット予約システムを導入できる上、会員管理機能や事前決済機能も搭載。現在の登録事業者数は6万を超えている。

そんなクービックは新たな機能として6月にエンドユーザー向けの会員アプリを、そして本日7月12日に習い事の事業者向けの「会員管理システム」をリリースした。

これらの機能も含めて同社が目指すのは、オーナーとユーザーが繋がる「サービスの流通プラットフォーム」だ。

登録事業者の35%を占める習い事領域の課題解決へ

クービックについてはTechCrunchでも過去に何度か紹介している。同社は2013年10月の創業。2017年5月には総額3億円の資金調達を実施した(累計の調達額は6億円を超える)。

もともとは創業者である倉岡寛氏がユーザーとして予約の体験に不満を感じ、プロダクトアウト的にリリースしたのが始まり。これまでは幅広い業種のオーナー向けに提供してきたが、約1年前の調達時あたりから、まずはどこかの業種に絞ってより深い機能を作り込むことを決めたそうだ。

結果的に的を絞ったのがスポーツスクールや塾など習い事の事業者だった。この層はCoubicの登録事業者の約35%を占めるだけでなく、受講料ベースの市場規模(お稽古・習い事市場)が約2兆円とマーケットも大きい。加えて巨人と言えるような大きな力を持つ競合がいないという事情もある。

「多くの事業者が抱えている課題として『集客』と『会員管理』の2つがある。習い事の事業者の場合は、特に予約の仕組みやレッスンの振替など特殊なオペレーションがあって、大きな負担となっていた。この問題を解決するべきだと考えた一方で、既存のCoubicでは対応できていない部分もあり、特化型のシステムをリリースすることを決めた」(倉岡氏)

塾や何らかのスクールに通ったことがある人はイメージしやすいかもしれないが、これらのサービスは「基本的に毎週月曜日の19時のクラス」のように、時間割が決まっているケースが多い。飲食店やサロンのようにその都度予約をするサービスとは少し仕組みが異なる。この場合に大変なのが体調不良などで予約の振替を行うときだ。

倉岡氏によると、予約の変更を電話で受付た後で「誰をどの曜日のどのクラスに振り替えるか」を模造紙などで整理し、膨大な時間を使いながら振替作業を行なっている事業者も少なくないそう。これはあくまで一例にすぎないが、このような業界特有の慣習やオペレーションを効率化することがクービックの会員管理システムの目的だ。

同サービスは細かい振替予約に対応する機能や、月謝や月会費の自動集金機能、先生や指導者ごとに操作権限を調整できる管理者権限機能などを搭載。急な中止連絡や急きょできた空き枠を案内するDM機能も備える。

合わせて6月にローンチしたユーザー向けのアプリと連動することで、生徒側のユーザーはモバイル端末から簡単に欠席や振替の手続きが完了。今までのように毎回電話で対応する手間もない。

このシステムはCoubicと自動連携していて、同サービスの「スタンダード」「プラチナ」「エンタープライズ」プランにて利用できるという。

あらゆるサービスが流通する「サービス版のAmazon」目指す

今回の会員管理システムは、従来のCoubicでは十分に解決できていなかったビジネスオーナーの課題を解決するものと言えるが、倉岡氏によると何も「事業者向けの予約管理システム屋さん」を目指しているわけではないそう。

究極的にはCoubicを使うオーナーが増えて行った結果として習い事やマッサージ、サロンなどさまざまなサービスが流通し、それらのサービスをユーザーがひとつのアプリから簡単に予約できるプラットフォームを作りたいのだという。

先月公開した会員アプリは同社にとって今後軸となるものだ

「予約管理も、決済管理もあくまでそのために必要となる個々のツールという位置付け。Amazonであらゆるものが買えるように、いろいろなローカルサービスがわかりやすい形で提示される『サービス版のAmazon』のようなプラットフォームを考えている」(倉岡氏)

クービックが2015年から運営しているサロンの当日予約サービス「Popcorn(ポップコーン)」もこの構想に繋がるもの。Popcornはあくまでサロンに特化したものだけど、オーナーとユーザーを直接繋ぐ場所として機能している。

「Popcornはオーナーとユーザーを一度に集めようとして少し苦戦した部分はあるが、Coubicの登録事業者数が拡大する中で、ようやくこの構想を目指すための基盤が整い始めてきた。現時点のアプリはすでに繋がりのあるオーナーとユーザー(リピーター)の関係性を密にするもの。次の段階ではそこにプラスして、新しい出会いや体験を探せるサービスにしていく」(倉岡氏)

2015年リリースの「Popcorn」

倉岡氏がひとつの参考としてあげるのが米国の「OpenTable」だ。最初は飲食店向けの予約管理システムとしてスタートして、徐々にユーザー向けに歩み寄り、今では様々な飲食店が見つかるメディアとしての機能が強くなってきている。

Coubicの場合も入り口はオーナー向けのツールとして始まっているが、今後少しずつユーザー向けの機能も強化していくことで、双方を繋ぐプラットフォームへの転換を進めていく。

MicrosoftがOffice 365にオンライン予約管理サービス「Bookings」を追加

bookings-1-1

Microsoftは本日、Office 365の一連のサービスにBookingsという名の新サービスを追加することを発表した。Bookingsはカスタマーがオンラインソフトウェアを使用して事業者との予約を取ることを可能にするサービスだ。ビジネスとカスタマーが電話でのやりとりなしで予約が取れる機能以外に、Bookingsは予約管理に関連する他のこともまとめて行うことができる。例えば、予約の確認メールやリマインダーの送信、予約の変更やキャンセルの管理、事業者の社員が使うカレンダーのアップデートなどだ。

オンライン予約は例えば、レストランの席予約、医者への受診予約、地元の美容院の予約など、いくつかの業界で普及している。それに加え、スモールビジネス向けの汎用的なソリューションを提供しているところもいくつかある。例えば、SquareのAppointmentsSchedulicityGrouponの店舗用ソフトウェアなどだ。

ただ、Microsoft Bookingsの目的はビジネスにOffice 365のプラットフォームと連動するソリューションを提供することだ。

ビジネスには個別のウェブページを提供し、これはデスクトップとモバイルの両方で動く。カスタマーはそこから、予約可能な日付と時間を選択して、連絡先を入力すると予約が取れる。あとは、システムが予約管理周りのプロセスを自動で処理する。

Bookings-2

カスタマーにはすぐに予約確認メールを送信し、予約時間の前にはリマインダーのメールを送る。また、予約の変更もカスタマーが自分で行うことができる。カスタマーはメールのリンクをクリックして予約サイトへと戻り、別の時間を選択するか、予約をキャンセルすることができる。

ビジネス側は、予約直前のキャンセルを防ぐために、予約時間のどれくらい前までにキャンセルの連絡をしなければならないかを設定できるとMicrosoftは言う。

一回予約サイトを設置すると、全ての情報がまとまったカレンダーに予約内容が同期される。ビジネスはそこでスケジュールの変更やキャンセルを行ったり、必要であれば予約の担当をスタッフに割り振けたりすることができる。新規予約をカレンダーに入力することも可能だ。カスタマーの口頭での予約や電話での予約にも対応できる。

特徴的な機能は「スプリット・ビュー」ができることだ。この機能では、隣り合わせでスケジュールを表示させることができ、どのスタッフがどこに予約が入っているかを把握することができる。

予約はそれぞれのスタッフのカレンダー、Office 365のOutliook、Outlook.com、さらにGoogle Calendarにも同期可能だ。

Bookings-tryptic-b

予約管理がBookingsの主な使い途だが、このシステムはビジネスがカスタマーリストを構築することにも活用できる。なぜならカスタマーが予約の際に個人情報を入力すると、自動でリストを生成するからだ。連絡先カードには、カスタマーの名前、住所、電話番号、メールアドレスといった個人情報とメモ書きも記載される。

Microsoftは、Bookingsのスタンドアローンアプリを数週間内にローンチし、ビジネスが予約やカスタマーの連絡先をいつでも管理できるようにする。

ビジネスが成長した時には、システムにスタッフを加えたり、予約ページを追加したりをすることを無料でできる。さらに、事業者のスタッフはOffice 365にサブスクライブしていなくても、サービスの一部を使用することができるとMicrosoftは伝える。事業者が1つ、Office 365 Business Premiumアカウントを持っていればいいということだ。

MicrosoftはOffice 365 Business Premiumプランにサブスクライブしていて、なおかつFirst Releaseプログラムに参加している人たちに最初にこのサービスを提供する。今後数カ月で、世界中のユーザーに展開する予定だ。利用可能になった際にはOffice365アプリランチャーから利用できるようになる。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website