Agility Roboticsが倉庫で働く二足歩行ロボット「Digit」のビデオを公開

Agility Robotics(アジリティー・ロボティクス)が公開した新しいビデオでは、だんだん見慣れてきつつある光景が紹介されている。それは高度な自律型ロボットが、退屈な倉庫作業を行う様子だ。同社にとってこのビデオは、拡散させて世間の注目を集めようとしたものではない。むしろ、Boston Dynamics(ボストンダイナミクス)のような企業が、派手なパルクールのビデオと高度に振り付けられたダンスセッションの間に挟む、最も基本的なコンセプトの証明のようなものだ。

しかし最終的に、このロボットの開発者たちがターゲットにしているのは、まさに「退屈」「汚い」「危険」の三拍子が揃ったことで知られる作業である。荷物を運搬して往復する動作は、確かにその最初の項目にぴたりと当てはまる。倉庫で働く人たちが、自分たちの仕事をロボットに例えるのには理由があるのだ。

「自動化に関する議論は、少しずつ変化しています」と、AgilityのCEOであるDamion Shelton(ダミオン・シェルトン)氏は、TechCrunchに語った。「自動化は、今いる労働力を維持できるようにするための技術だと考えられています。自動化を導入することによるリスクや雇用の喪失については、多くの議論が交わされていますが、しかし雇用の喪失は自動化の導入を待たず、現実に今、起こっているのです」。

同社が2020年に発表した二足歩行ロボット「Digit(ディジット)」が最も注目を集めたのは、大手自動車会社のFord(フォード)との提携をCESで発表した後のことだ。フォードは現在、このロボットを2台所有しており、長期的にはこの技術を配送に活用することを計画している。

今回公開されたビデオは、Digitをより単純作業に使用するという短期的なソリューションを紹介しようとするものだ。

画像クレジット:Agility Robotics

「Digitのような機械の価値と目標は、その汎用性にあります」と、CTO(最高技術責任者)のJonathan Hurst(ジョナサン・ハースト)氏はいう。「これは人間と同じ環境や空間で働くロボットです。構造化された反復作業に向いています。例えば、『あそこに行けば箱があります。どれがどの箱かはデータベースシステムから指示するので、それをあそこに移動させなさい』というような命令を与えれば、1日に3〜4時間作業した後、また別の場所に移動して3〜4時間作業し、その後、トレーラーの荷降ろしを行うことができます」。

Berkshire Gray(バークシャー・グレイ)が提供しているような、完全に自動化された倉庫を一から構築するのに比べ、Digitの価値はよりプラグアンドプレイなソリューションであることだと、同社は考えている。もちろん、それでもプログラミングは必要だが、Agilityの担当者が現場に出向き、事前に場所をマッピングして、ロボットが反復的な作業を実行することを支援する。

「実際に導入して、お客様の役に立つ仕事ができるという意味において、このような環境では、例えば、A地点からB地点まで移動し、荷物を拾い上げて運ぶ、といった具合に、多くの作業が移行可能であることがわかりました」と、シェルトン氏は述べている。「屋内と屋外では、開発する技術の中核となる部分がまったく異なるというわけではありません。それは単に成熟度の問題です。屋内用の技術はすぐに達成することができたので、最初に導入する場所としては理に適っていると思います」。

画像クレジット:Agility Robotics

Agilityは、フォード以外のパートナーについては発表していないものの「大手物流企業」と協力していると述べている。AgilityはDigitの販売台数も明らかにしていないが、TechCrunchに語った話によると、Digit以前に販売していた数十台の「Cassie(キャシー)」よりも「大幅に多い」とのこと。もっとも、Cassieは実務用ではなく、主に研究目的として販売されていたものだ。現時点で、販売は主にCapEx(資本的支出)になるが、同社はRaaS(Robotics-as-a-Service、サービスとしてのロボット)など、他の機会も模索している。

Agilityの従業員は現在56名で、そのロボットの製造を主に行っているオレゴン州に拠点を置いている(同社はオレゴン州立大学でロボット部門が設立された頃、その一部としてスタートした)。

「2020年12月以降、当社は急速に成長しています」と、シェルトン氏はいう。「オレゴンオフィスに加えて、年内にはピッツバーグオフィスも拡張する予定です。かなりの急成長を遂げています。ロボットの生産量を増やしているので、そのためにかなりの人員を雇用しました。6月には改築した新施設に移ったばかりです」。

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画像クレジット:Agility Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

あまり見ることがないBoston Dynamics人型ロボAtlasのずっこけNGシーン、失敗が成功を生む

筆者は子どもの頃、スケートビデオをたくさん見て育った。いつの間にか、完璧なトリックと同じくらい、失敗もそれらの重要な要素になっていた。スケートボード文化が「ジャッカス(jackass)」を世に送り出したのには理由がある。私自身はアグレッシブに月並みなスケーターだったが、世界最高クラスのスケーターたちが無様に顔面から転び、(実際に怪我をしない限り)身を粉にして15回目のトリックに挑戦する姿には、何かほっとするものがあった。

これまでBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)の完璧に振り付けされた映像を何十、何百と見てきたが、撮影の合間に起こるであろう、ツルッと足を滑らせての転倒を見ることはほとんどなかった。米国時間8月17日、同社は、人型ロボット「Atlas(アトラス)」をカメラの前で格好良く見せるために何が行われているのか、カーテンを開けて少しだけ明らかにした。

同社の社内テストシステムの中・下部には、多くの擦り傷、引っかき傷や汚れが見られる。これには理由がある。

Boston Dynamicsはブログ記事でこう書いている。「撮影中、Atlasは半分くらいの確率で正しく跳躍します。一方他のランでは、Atlasはバリアを越えるものの、バランスを崩して後ろに倒れてしまいます。そこからエンジニアはログを見て、その場で調整できる機会を見つけようとします」。

同社は、ロボットにミニパルクールコースを走らせることに挑戦し、記事に付随したビデオで「パルクールは私たちが重要だと考えるいくつかの課題を浮き彫りにするため、チームにとって情報を組織化する有益なアクティビティです」と述べている。パルクールはロボットにとって、短期的な問題解決と長期的な問題解決の両方に挑戦するものだ。ロボットは、一連の個別の動きを実行するだけでなく、より広い意味で、それらをつなぎ合わせてA地点からB地点までどのように移動するかを決定しなければならない。

Boston Dynamicsによるとこの種のビデオは、Atlasが一度にコースを完走できるようにするまでに数カ月かかり得るという。「この最新の試みはほぼ完璧だったが、正確には完璧ではなく、ツメが甘かった」と同社は書いている。「ロボットたちがバク転を終えたあと、大リーグのピッチャーが試合終了間際に三振を取った時のように、ロボットの1台が拳を突き上げガッツポーズするはずでした。Atlasチームはこの動きを『Cha-Ching』と呼んでいます」。

Boston Dynamicsのコンピュータには確実に存在しないであろうハッシュタグ「Atlas最大の失敗ビデオ集」に加えて、足を踏み外すと、人間と同じようにロボットも厄介な怪我になりかねない。時にはロボットのChumbawumba(チャンバワンバ)のように「but I get up again」と立ち上がることもある。そうでない場合もある。このビデオはその両方をチェックできるだけでなく、こうしたビデオを作るためにどのような手間暇がかかっているのか、インサイトを得られるという点で見る価値がある。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Boston Dynamics二足歩行ロボットAtlas

画像クレジット:Boston Dynamics

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)