マイナビが台湾の求職プラットフォーム「CakeResume」に約9600万円出資

CakeResumeは、LinkedInのようなテック業界の求職プラットフォームを作っているスタートアップだ。2016年に創業された台北を拠点とする同社は米国時間8月10日、日本の大手人材広告企業のマイナビから90万ドル(約9600万円)のシード資金を調達したと発表した。CakeResumeはこのラウンドの資金で、日本やインドなど台湾以外の国に事業を拡大する予定だ。

創業者でCEOのTrantor Liu(トラント・リウ)氏は、CakeResumeを始める前はCodementorのフルスタックのウェブ開発者だった。同氏は、CakeResumeの目標はアジア最大のテック人材プールになることだと述べる。このプラットフォームのデータベースには、現在およそ50万件の経歴書が登録されていて、そのうち75%は台湾で職を探している人のものだ。このプラットフォームを採用に利用している企業は、AppierなどのスタートアップからAmazon Web Services、TSMC、 Nvidia、Teslaなどの大手まで、3000社以上にのぼる。

台湾以外の25%は、インド、インドネシア、米国などの人材だ。CakeResumeは戦略的投資家であるマイナビのサポートを受けて日本に拡大する計画で、さらに東南アジアと南アジアのリクルーターとの提携も求めている。リウ氏によれば、CakeResumeはインドでは特にコンバージョン率が高く、インドで10万件以上の経歴書をプールすることを目指している。

CakeResumeへの投資の決定についてマイナビの担当者は発表の中で「ITエンジニアの世界的な不足はますます顕著で、我々はアジアのIT人材に関するサービスに力を入れている。そのような中で、CakeResumeのサービスはプロダクトデザインがきわめてすぐれており、台湾ですでに多くの人材に利用されている」と述べた。また、このプラットフォームが「近い将来にアジア最大のIT人材プール」になることを期待しているとも述べている。

台湾でのCakeResumeの最大のライバルはLinkedInと求職サイトの104.com.twだ。ほかにAngelList、Indeed、Glassdoorなどのサイトとも競っている。

CakeResumeはITのプロフェッショナルが自分のスキルを詳しく示せるようにすることで差別化している。テック企業の多くが、これまで他の業界で利用されてきた1ページの経歴書よりも詳しい情報を知りたがっているからだ。ケーキを作るかのように、求職者が情報のレイヤーを重ねてレジュメ(経歴書)を作れるようにしていることから、CakeResumeという社名がつけられた。例えばCakeResumeのテンプレートを使うと、エンジニアはGitHubからプロジェクトを埋め込むことができる。デザイナーは作品へのリンクだけではなくデータを追加することができる。

「我々は入力後に書式の整ったPDFの経歴書をダウンロードできるフォームを提供することにとどまらず、もっとクリエイティブなものを提供したい。簡単にプロジェクトのイメージを埋め込み、説明を書き込むことができるので、人事担当者はその人が何に貢献できるかを簡単に把握できる」とリウ氏は語る。

CakeResumeと競合他社のもうひとつの違いは、プロフィールを作成する人のほとんどが、プロフェッショナルのネットワーキングを求めているのではなく、積極的に新しい仕事を探していることだ。しかもテック業界に特化されているので、リクルーターにとっては関心を持った候補者から反応がある割合が高いとリウ氏は言う。

リウ氏は「我々は最近、あるクライアントから話を聞いた。それによると、我々のプラットフォームで人材に連絡を取ったところ、およそ50%から反応があった。これに対しLinkedInでは10%未満だったそうだ」と補足した。

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大する前は、求職者の多くは転居に前向きであったが、COOのWei-Cheng Hsieh(ウェイ・チェン・シエ)氏によるとCakeResumeは現在、リモートの仕事を見つけたい人材の支援に力を入れているという。FacebookGoogle(未訳記事)などテック企業の多くが少なくとも2021年夏までは在宅勤務を延長することにしている。

求人情報の多くが今も勤務地を指定しているが、CakeResumeの予測では今後も企業が新型コロナウイルス感染拡大に対応していく中でこの状況は変わるだろうと、リウ氏は語る。CakeResumeは今後もネットワーキングではなく求職者と仕事のマッチングに集中していくが、一方で世界中で働く人がお互いに、また企業とつながるためのソーシャル機能のテストもしている。

画像クレジット:CakeResume

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(翻訳:Kaori Koyama)

XTech子会社が優秀な“時短ママ”と成長企業つなぐ転職サービス「withwork」を開始

XTalentのメンバー。左から2人目が代表取締役の上原達也氏、3人目が執行役員の松栄友希氏

XTechの子会社であるXTalentは10月7日、事業の第一弾として優秀な”時短ママ”向けの転職サービス「withwork」を正式ローンチした。

スタートアップスタジオのXTechはこれまで子会社を通じて複数の新規事業を創出してきた。たとえば先日1.2億円の資金調達を実施している食材のB2Bマーケットプレイス「クロスマート」もその1つ。新しく子会社を立ち上げるだけでなく、エキサイトの事例のように他社を買収して再編するケースもある。

その中で「子育て世帯の新しいキャリアのあり方」を実現することを目指し、今年7月に設立したのがXTalentだ。有料職業紹介免許を10月1日に取得し、本日より正式にサービスを開始した。

withworkは子育てによって時間的な制約がある優秀な時短ママと、柔軟な働き方を提供できる成長企業を繋げる人材サービス。時短制度の詳細(利用可能期間など)や給与体系、すでに在籍するママの勤務状況のような「求人票には書かれていない企業情報」をXTalentが調査した上でマッチングを行う。

限られたスキマ時間を使って転職活動を進められるように、来社ナシの電話面談やLINEを使った転職アドバイス、経歴書の作成代行などを行い、従来の人材紹介会社が十分にできていなかったサポートを実施する。

「スタートアップのような成長企業こそ、ママが活躍しやすい環境があると思っています。 一方で、転職サイトやエージェントの求人票にそういった情報もありません。 育児と仕事の両立に忙しい時短ママに寄り添って、効率的に転職活動を行えるよう支援し、テクノロジーによる効率化も駆使して社会インパクトの大きいサービスを目指していきます」(XTalent代表取締役の上原達也氏)

これは上原氏自身も言っていたことだけれど、現時点では何かテクノロジーを使った真新しい仕組みがあるわけではなく、とてもシンプルな転職サービスだ。このあたりはそもそも「ママの転職というマーケット自体が成立しきっていない」ため、まずはマーケットを作るためにユーザーや企業への啓蒙に力をいれていく方針とのこと。

ただ中長期的にはLINEを活用したチャットボットと人力を組み合わせたサポート、職務経歴書の自動作成、時短ママならではの要素(たとえば通勤時間や保育園の預かり時間)を加味した求人マッチングのアルゴリズム開発なども考えていくという。

XTalentの中心メンバーである上原氏と執行役員の松栄友希氏は共に2人の子どもを育てる現役のお父さんとお母さん。上原氏はITベンチャーのSpeeeを経てJapanTaxiに入社し、相乗りタクシーや法人向けサービスに携わった後、今年7月にXTechにジョインした。松栄氏は前職のリブセンスでエンジニア向け転職サービス「転職ドラフト」の立ち上げを担当した経験を持つ(XTech代表取締役CEOでXTalentの取締役も務める⻄條晋一氏も2児の父だ)。

子育てとスタートアップで働くことのどちらも経験しているチームだからこそ「ユーザーのペインと課題解決による可能性を確信しており、粘り強くこのテーマに取り組んでいけると考えています」(上原氏)

日本でも子育てをしながら働く女性が増えると共に「待機児童」や「マミートラック(産休などから職場復帰した女性が、昇進や昇格から遠ざかり第一線で活躍しづらくなってしまうこと)」などの社会問題が注目を集めることが増えてきている。

withworkのテーマの1つは「時短ママを成⻑企業のエース人材に変えること」。こうした社会背景の中で「時間よりもパフォーマンスを高く評価する」という風潮を高めること、時短ママにスポットライトを当てる社会の新しい価値基準を発信し続け、社会常識の当たり前の基準を変化させることがサービス立ち上げの背景にある。

まずは転職支援を提供することから着手し、就業規則コンサルティングや自治体と連携した保活支援サービスなど、子育て世帯のキャリア支援に向けた事業展開も検討していくという。

「社会人人生は一貫して、スタートアップで働いてきました。その中で見えてきた、課題感と新しい働き方ができるという可能性への期待感があると肌感覚で実感しています。この業界を愛しているからこそ、自分自身もパパだからこそ、子育てしながら活躍できる世界観を実現していきたいと思います」(上原氏)

「いちママとして、働くママの心情に寄り添ったサービス展開をしていきます。また私自身が時短でこの事業に参画していることから、時短でも高いパフォーマンスを出せることを体現していきたいと考えています」(松栄氏)

ブレグジット後のヨーロッパで人材サービス市場に挑むスタートアップYborder

yborder

ブレグジットが、善かれ悪かれイギリスメディアの”お気に入り”のトピックとなった今、イギリス国内に拠点を置く企業が、国外へ脱出するか否かについて、大いに興味が寄せられていると考えている人もいるだろう。それはもちろんのことなのだが、それ以上に見定めるのが難しいのは、人材がどこへ移動する、または移動しようとしているかということだ。特に”ミレニアル”世代の人材は、流動性が高くノマド気質なため、その判断はより一層難しくなる。人材動向は、次のアツい市場はどこであるかや、向こう数年間でどの国や都市の力が弱まるのかという重要な情報を掴むための早期警告システムとしての機能を担うことができる可能性があるという意味で、企業の動向よりもずっと興味深い。

しかし、テック系の人材が国をまたいで移動する際に浮上してくる問題がある。それは、言語だ。ドイツの求人の63%は英語に翻訳されておらず、フランスの求人の81%はもちろん(Mai, oui!)フランス語で書かれている。そのため、この市場で求められているのはテック系の人材が移住するための手段なのだ。

パリに拠点を置くスタートアップのYborderが、この問題を解決しようとしている。他にも多数存在するリクルートメントプラットフォームのように、Yborderはヨーロッパ中のヘッドハンターのネットワークを通じて、プラットフォーム上で人材を認証し、彼らの希望勤務地を可視化することで、人材を探し求めている企業のサポートを行っている。

というのも、エンジニアのスキルを学ぶ学生の数を国策で増やしたところで、全てが解決するわけではないのだ。

Yborderが本日発表したデータを見ると、転職希望者の勤務地の検討状況に、ブレグジットがどのような影響を与えているかについての示唆を得ることができる。

今年の7月の時点では、Yborderプラットフォームの利用者の20%がイギリスを希望勤務地として選択していた。しかし9月には、この数字が8%にまで減少した

その後10月には14%に落ち着いたが、11月(本日発表されたデータ)には12%まで微減した。

Yborder共同ファウンダーのMaya Noëlは「ブレグジット以降、グローバルで見たときのイギリスの魅力は低下しました。ブレグジット以前、イギリスを希望勤務地として選択する人の割合は20~25%で安定していましたが、今後は12~14%付近にとどまると予想しています」と語る。

つまり、テック系の人材にとってのイギリスの魅力は、ブレグジット以降ほぼ半減したのだ。

とは言っても、イギリス人気は他の欧州諸国に比べれば依然高く、アメリカの方が若干勝っているものの、ほぼアメリカと同じレベルだ。平均すると、テック系の転職候補者の6%がドイツへ、3%がフランスへ積極的に移住したいと考えている(なお、アメリカへ積極的に移住したいと考える人の割合は14.5%だった)。

興味深いことに、候補者の約25%がカナダへ移住したいと考えている一方、アメリカに移住したいと考えている人の割合は20%だった。「今後恐らくアメリカに住みたいと考える人の数が減り、カナダに住みたいと考える人の数が増えてくるでしょう。しかし、まだそれを判断するには早く、もう少し様子を見なければいけません」とNoëlは話す。

巷では明らかに人材獲得競争が巻き起こっている。一般的に、優秀なエンジニアは普通のエンジニアの3~10倍生産性が高く、2桁パーセント(場合によっては20~30%)の投資節約効果をテック企業にもたらすと言われている。

ヘッドハンターがYborderプラットフォーム上で候補者を認証すると、彼らは求人情報を閲覧したり、企業からオファーを受け取ったりできるようになる。

さらにYborderは、プラットフォームとSmartRecruitersなどのATS(採用管理システム)をAPI経由で連携させている。そのため、既に何らかのATSを利用している企業は、Yborderにログインしなくても、ATSのポータルを介して自動でアラートメールを作成することができるのだ。

Yborderのサービスの背景には、ヘッドハンターや企業が、より多くの人材にひとつの窓口からアクセスできるようにするという考えがある。

6人のメンバーから構成されるYborderのサービスは、現在ヨーロッパ中から360人の月間アクティブユーザーと220人のヘッドハンターに利用されており、これまで6000件のアラートが送付されているほか、ユーザーがサービスの利用を開始してから雇用されるまでの平均期間は3週間を記録している。

もちろん同じ業界で活躍する競合企業は存在し、サイズで言えば、VetteryTalent.iohired.comの方がYborderよりもずっと大きい。しかしYborderは、各国のリクルートメント専門家のネットワークや、広範囲に渡る採用実績、そして候補者に対する厳しい選定基準で差別化を図っている。

ビジネスモデルとしては、一般的な手数料モデルをとっており、候補者がYborderを通じて採用されると給与の12%が同社に入ってくるようになっている。Yborderはヨーロッパ中に約1500万人のディベロッパーがいると推定しており、この分野の求人数は10~15%の割合で増加しているという。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter