米国で17年ぶりにCD売上げが増加し前年比21%増を記録、アナログレコード売上げも61%増で1986年以来の売上高に

米国で17年ぶりにCD売上げが増加し前年比21%増を記録、アナログレコード売上げも61%増で1986年以来の売上高に到達

Rick Madonik via Getty Images

近年の音楽市場はすっかりストリーミングが主流になり、もしかするともう何年もCDを購入していないという人が多数を占めているのかもしれない状況ですが、全米レコード協会(RIAA)のまとめによると、2021年のCDの売上げが5億8400万ドル(約690億円)になり、前年に比べ21%も増加したことがわかりました。米国でCD売上げが増加するのは2004年以降で初めて、17年ぶりとのことです。

元気が良いのはCDだけではなく、アナログレコード売上げはなんと2021年に61%増の10億ドル(約1182億円)を記録、こちらも1986年以来の売上高に達し、物理媒体全体での音楽の売上げは16億6000万ドル(約1961億円)にのぼっています。

音楽市場全体としては、やはり時代の変遷を反映して音楽ストリーミングが最も強く、ラジオ形式のストリーミングを含めた総売上高は23.8%増の124億ドル(約1兆4652億円)と桁違い。録音音楽市場全体の83%を稼ぎ出しています。

では音楽市場のなかでいったい何の売上げが減少したのかといえば、それはダウンロード販売です。デジタルダウンロードでの音楽の売上げは前年比12%減で5億8700万ドル(約694億円)になりました。このあたりは、Apple MusicやAmazon Music Unlimitedといったストリーミング勢がハイレゾ音質での配信を始め、ダウンロード販売の利点のひとつだったハイレゾ音源の商品価値が相対的に低下したことが影響している可能性も考えられます。

なお、単純に額を比べるだけならCDの売上げは5億8400万ドルであり、ダウンロードとの差は300万ドルほどとなっています。

CDやレコードといった物理媒体の売上げ増加は、アーティストサイドには良い傾向です。音楽ストリーミングは再生回数あたりの単価が低く、これまでにも幾度か問題となっていますが、CDなど物理メディアなら特典やジャケットなど付加価値を付ければより高価格で販売でき、その分実入りも良くなります。またファンは物理媒体を購入して手にすることで所有欲が満たされ、作品に愛着を感じる可能性も高まるため、ストリーミングよりはアーティストが固定ファンを獲得するのに役立ちそうです。

(Source:RIAA(PDF)Engadget日本版より転載)

音楽ストリーミングが2020年の米レコード業界収益の83%を占める、CDは衰退しアナログ盤好調

音楽ストリーミングが2020年の米レコード業界収益の83%を占める、CDは衰退しアナログ盤好調

stockcam via Getty Images

音楽市場はここ数年でほぼ物理メディアからストリーミングへと移行した感があります。米RIAAが発表した2020年末のレコーディングされた音楽による収益は、新型コロナ禍もあり自宅で音楽を聴く人が増えたのか、前年比9.2%増の122億ドルになりました。そのうちSpotifyやApple Musicといった定額音楽ストリーミングからの収益が14.6%増の70億ドルとなっており、CDなどの物理メディアによる販売やダウンロード販売などもあるなかで2018年以来連続でトップを走っています。

年間のサブスクリプション加入者数は2019年の6040万人から2020年は7550万人となり加入者の増加も過去最大の上げ幅を記録しました。また新たに包括的ライセンス契約を行ったFacebookやPerotonも収益増を後押ししたとみられます。

ストリーミングとは対照的に、物理メディアでは例年、CDの衰退が伝えられるようになっていますが、2020年の収益も23%減の4億8300万ドルになりました。一方でアナログレコードが約29%の伸びを示して6億2600万ドルに達し、CDよりも収益の多いメディアになっています。またアナログレコードの好調のおかげで、物理メディア合計の収益は0.5%の減少で踏みとどまりました。

音楽ストリーミングの収益増は音楽業界全体にとっては良いことのはずですが、その反面、お金の行き先が不透明です。物理メディアやダウンロード販売の場合は売り上げに対し一定の割合の収入がアーティストに分配されますが、ストリーミングの場合はいわゆる大物アーティストには収益が発生しやすく、再生回数の少ないアーティストにはなかなか分配が行き渡りません。

物理メディア時代も構造そのものは大きく変わらなかったものの、プロモーションなども収益が見込める大物に集中するようになっており、音楽ファンも自ら積極的に新譜情報を仕入れるようにしなければ、ストリーミングだけでは常に似通った音楽ばかりがレコメンドされるため、偏りが顕著になっているとも考えられます。偏りの改善のためには、もっと公平なビジネスモデルを模索し転換していく必要があるかもしれません。

(Source:RIAA(PDF)Engadget日本版より転載)

関連記事
Spotifyが要望の多かった高品質サブスクプラン「Spotify HiFi」を提供へ
アリババが12年続いた音楽ストリーミングアプリXiamiを閉鎖
Spotifyがアーティストやレーベル自身が曲のプロモーションを行える機能を追加
全米レコード協会がYouTubeダウンローダーに目を付けた
CDは売れなくても今やストリーミングが音楽の全売上の85%を占める
Twitchは第2四半期に総視聴時間50億時間を突破し記録更新、先行きには不安材料も
ストリーミングが過去最高を記録、2019年全音楽売上の80%を占める
Amazonが広告付き音楽ストリーミングサービスを米、英、独で無料提供
米国の音楽ストリーミングサービス有料購読者数が6000万人の大台に
ストリーミングだけでプラチナ・アルバムになる新時代、カニエ・ウェストのThe Life of Pabloがその先頭を切った

カテゴリー:ネットサービス
タグ:音楽(用語)音楽ストリーミング(用語)全米レコード協会 / RIAA(組織)