飲食店向け食品EC「八面六臂」が総額2.4億円の資金調達、物流システムを整備し事業拡大へ

飲食店向けの食品EC事業を手がける八面六臂は3月31日、SMBCベンチャーキャピタル、 SBIインベストメント、 池田泉州キャピタル、 三生キャピタル、 他個人投資家を引受先とする第三者割当増資により、総額2.4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。評価額、出資比率等は非公開。今回調達した資金を元に、同社がこれまで構築してきたフルフィルメントやロジスティクスの強化とともにWEBマーケティングの強化にも取り組んでいく。

同社はこれまで2013年10月にバリュークリエイト、ベクトル、ウインローダーの3社から総額1億5000万円、2014年7月にリクルートやYJキャピタル、DeNA、マネックス・ベンチャーズなどから総額4億5000万円の調達を実施している。非公開のものも含めて、今回の増資により累計調達額は約11億円となる。また今回の資金調達ラウンドにおいて、5月末までに総額5億円の調達を目指すとしている。

力を入れてきた物流システムの仕組みが整ってきた

八面六臂は2007年5月の設立。2011年4月より1都3県の飲食店に向けた食品EC事業を展開している。 中央卸売市場経由の仕入れだけでなく、 全国の産地市場や生産者からの独自仕入れを構築することで無駄なコストを削減。高品質な食品を低価格から購入できるのが特長だ。

以前TechCrunch Japanでは「鮮魚版Amazon」と紹介したように当初は水産物を対象としていたが、現在は青果や精肉、加工品など提供商品のラインナップを拡充。中小規模の飲食店を中心に、登録利用店舗数は3500店舗を超える。

そんな同社がここ数年力を入れてきたのがフルフィルメントやロジスティクスといった物流システムの強化だ。2016年の1月には八面六臂物流を設立し、それまで構築してきた物流機能を集約。同年4月にはヤマトグループのエキスプレスネットワークとも資本業務提携を実施し、配送管理システムの強化に取り組んでいる。

同社の代表取締役の松田雅也氏によると、倉庫内管理システムや配送管理システム、 顧客管理システムを社内開発することに加え、「決済の面でも他社が簡単には真似できない仕組みを作り上げてきた」という。

生鮮食品の仕入れとなると、中小規模の飲食店であっても取引額が高くなりやすく、店舗あたりで100万円を超えるようなことも珍しくない。そのような場合クレジットカードで決済することは難しく、申込書を書いて印鑑を押して提出するといった紙ベースのやりとりが基本だったという。

「それではECに向かないし、お客さんの使い勝手も悪い。そこで2016年の4月にBtoBの掛売りサービスを手がけるラクーンと提携して与信管理や債券の流動化の仕組みをつくり、より使いやすい決済の仕組みを構築してきた」(松田氏)

松田氏によると「前回の資金調達以降は苦しい時期もあり、試行錯誤を重ね続けた日々だった」というが、ここ数年で時間をかけて作り上げてきた物流システムがようやく形になり、伸びてきていることから今回資金調達を実施。今後は1都3県の飲食店に向けた食品EC事業のマーケットシェアを伸ばしつつ、アジアを中心とした海外展開も検討していくという。

鮮魚流通のAmazonを目指す八面六臂が1.5億円の資金調達を実施

鮮魚の流通はIT化が遅れている巨大な市場の1つだ。漁師から産地市場へ、そして納品業者、飲食店にというように鮮魚の流通には多くのプロセスが発生するが、このプロセス間では未だに電話やFAXなどの通信手段が多く用いられている。

八面六臂(ハチメンロッピ)はこの市場を効率化すべく、流通のITソリューションを提供している。そして本日、同社がバリュークリエイト、ベクトル、ウインローダーの3社から総額1億5,000万円の資金を調達した。

八面六臂は飲食店に対してiPadアプリを提供しており、このアプリには日々の鮮魚情報が入力されている。飲食店側はこのアプリを通じて、欲しい魚の種類、サイズ、産地、価格をチェックし、簡単に注文することができる。

このサービスが特徴的なのはマーケットプレイスではない点だ。漁師らが直接アプリに出荷できる商品を入力し、それを飲食店が買うというようなサービスではなく、商品は八面六臂が自身らで調達して販売しているのだという。だから、立ち位置としては納品業者ということになる。

年内には取引先の飲食店は300店舗程度になる予定で、現在は都内近郊を中心に展開しているが今後対応地域を拡大していく予定だという。

これまでの鮮魚流通は冒頭で述べた通り、手間が多いため人件費が高くついていた。松田氏によるとその約50%がムダなコストであり、IT化を進めることで大幅にコストを削減できるのだという。鮮魚流通は3兆円の市場規模があるそうで、八面六臂は2016年までにこの市場の0.1%のシェア(30億円)を取りにいくと語る。

現在のアプリは商品の受発注が主で、松田氏が実現したいものの10%程度しか完成されていない。今後は受発注以外にもどんな商品がいいのかなど、今後は飲食店により役立つ機能も開発を考えているという。

生鮮流通市場では八面六臂のようにBtoBではないが、Amaoznがシアトル地区で長年Amazon Freshという宅配サービスを実験しており、本格事業化されるのではないかという報道もあるなど、密かにこの業界が盛上がってきている。