約11万円で犬の幹細胞バンクを提供するペット系スタートアップGallant

ロサンゼルス拠点のスタートアップであるGallant(ギャラント)が、1100万ドル(約12億円)の資金を得て、犬の再生医療に扉を開く。同社はDogVacayの創業者兼CEOであるAaron Hirschhorn(アーロン・ハーシュホーン)氏が創業した。自分のペットが病気で衰弱する中、再生医療と幹細胞療法の存在を知ったのがきっかけだった。

ハーシュホーン氏は声明で「私自身、10年以上にわたる慢性の腰痛に苦んだ経験がある。再生医療で体調を整えるまで、大好きな活動をすることができなかった。同じ頃、家の犬のロッキーが関節炎に苦しみ歩けなかった。ペットの治療回復にはもっと良い方法が必要だと思った。それがGallantを始めるきっかけだ。再生医療の力により、ペットをより幸せで健康に保つことを使命としている」と述べた。

ハーシュホーン氏とともに経営に参画するのは、Mincus BiosciencesとSciStemという2つのライフサイエンス企業で豊富な経験を積んだシリアルアントレプレナーのLinda Black(リンダ・ブラック)氏。2社は再生医療の開発に注力している。臍帯血バンクであるCalifornia CryobankのCEOであるRichard Jennings(リチャード・ジェニングス)氏と、Trupanionの創業者兼CEOであるDarryl Rawlings(ダリル・ローリングス)氏が同社の取締役会に加わった。

ハーシュホーン氏はペットビジネスをよく知っている。同氏はDogVacayがRoverと合併する前に、同社を1億ドル(約110億円)以上の売上規模に成長させた。

その経験が投資家からの投資を呼び込んだ。Maveron、Bold Capital Partners、Bling Capital、Science Inc.などの投資家が現金で1100万ドル(約12億円)を投資した。Gallantはこの資金調達によりCook-Regentecの獣医ビジネスを買収した。同ビジネスは動物薬の知的財産、幹細胞バンク事業、生殖組織由来の細胞治療製品のパイプラインなどを保有する。

犬の幹細胞をその生涯にわたり約1000ドル(約11万円)で幹細胞バンクに預けることの利点は何だろうか?Gallantによると、買収した事業の獣医師が、すでに何百もの猫や犬を動物自身の幹細胞で治療している。これまで変形性関節症、アトピー性皮膚炎、断裂靭帯、慢性ドライアイなどの病気の犬を治療した。各治療法は初期の臨床試験で効果的であることが実証されており、幹細胞療法は科学的研究の最先端にある。

Gallantでペットの飼い主は、定期的な避妊または去勢手術の際にペットの幹細胞採取を選択できる。ハーシュホーン氏によれば、毎日約100万匹の犬と猫が処置を受けているため、潜在的な顧客が不足することはない。獣医が手術で得た組織を、Gallantが収集して動物の幹細胞を格納する特別な容器に入れる。

手術中に採取した幹細胞を収集することにより、若く健康な幹細胞を確保できるという。Gallantのテクノロジーによる幹細胞療法は安くない。細胞の採取に395ドル(約4万3000円)、ペットの生涯にわたる保管にさらに595ドル(約6万5000円)かかる。希望すれば年間95ドル(約1万円)で遺伝物質の保管も可能だ。なお、Gallantによればサービス立ち上げを記念して期間限定で細胞採取料金を​​免除するとのこと。ぺットの遺伝物質に基づく治療は300ドル(約3万3000円)だ。

Gallantの最高科学責任者であるブラック博士は声明で「犬の衰弱性関節炎の臨床試験で、細胞療法がいかに犬の命に影響を与えることができるか目の当たりにした。これからも犬のクオリティオブライフを劇的に改善する治療法の開発に全力を尽くす」と述べた。

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(翻訳:Mizoguchi)

英国のバイオテックスタートアップMogrifyが革新的な細胞療法を市場投入へ

再生医療などの分野で、革新的な細胞療法開発の体系化を進めている英国ケンブリッジに拠点を置くバイオテック系スタートアップであるMogrify(モグリファイ)が、1600万ドル(約17億4000万円)という最初のシリーズA投資を決めた。

Ahren Innovation Capital(アーレン・イノベーション・キャピタル)、Parkwalk (パークウォーク)、24Haymarket(トゥエンティーフォー・ヘイマーケット)による今回の投資に先立ち、2月には400万ドル(約4億3500万円)のシード投資を受けており、今日までの合計で2000万ドル(約21億7400万円)の資金を調達している。

Mogrifyのアプローチを簡単に説明すると、大量のゲノムデータを分析し、成熟細胞を、幹細胞の状態にリセットすることなく、ある細胞種から別の細胞種に転換させるのに必要な特定のエネルギーの変化を識別するというものだ。多種多様な治療使用事例に応用できる可能性が非常に大きい。

私たちがMogrifyで行おうとしているのは、そのプロセスを体系化して、これが元の細胞、これが目標とする細胞、これがそれぞれのネットワークの違い。そしてこれが、成熟細胞を別の成熟細胞に幹細胞ステージに戻すことなく転換させなければならない治療介入点である可能性が最も高い場所だとわかるようにすることです」とCEOで投資者のDarrin Disley(ダリン・ディズリー)博士は話す。

博士によると、今のところ15回試して15個の細胞転換に成功しているという。Mogrifyの事業は3つの大きな柱で構成されている。細胞療法のための内部プログラム開発(現在開発中の細胞療法には、増殖軟骨移植の強化、眼損傷の非侵襲性治療法、そして血液疾患の治療が含まれる)。また、免疫療法に使用する細胞の普遍的な供給源の開発も行っている。ディズリー博士によると、それは疾患を食うものとして働くそうだ。

もうひとつの柱は、投機的な知的財産の開発だ。「私たちは特定の細胞の転換を核とし、治療範囲をごく短時間で特定できる立場にいます。テクノロジーの体系的な性質のため、それら細胞の周囲には知的財産が急速に発生し、知的財産の領域が築かれていきます」と彼は言う。提携関係は3番目の柱だ。同社は開発や標的細胞療法の市場投入を他社と共同で行っている。ディズリー博士は、すでにいくつかの提携が決まっているが、まだ社名は公表できないと話している。

Mogrifyはゲノミクスにおけるこの10年間分の研究結果を基礎にしているが、特にFantom 5と呼ばれる国際的な研究活動で得られたデータセットに依存している。その創設者は、優先的にデータセットが利用できることになっている。

「私たちは、その膨大なFantomデータセットからスタートしました。これが基盤です。背景と言ってもいいでしょう。それは米国の2つの都市、シカゴとニューヨークに例えられます。元になる細胞があり、目標となる細胞がある。そして、それぞれのネットワークの背景データ(すべての建物、すべての超高層ビル)をすべて手にしているとします。この2つを比較すれば、その遺伝子発現の差異を識別できます。従って、どの要素がそれらの遺伝子の大きな配列を調整しているのかを特定できます。そうして2つの差異の特定が開始できるのです」とディズリー氏は説明している。

「そして私たちは、その膨大なデータセットにDNAタンパクとタンパク質間相互作用を追加しました。それにより、すべてのデータを重ねて見ることができます。さらにその上に、新しい次世代シークエンスデータとエピジェネティクスのデータを重ねました。そうして、膨大なデータセットが出来上がりました。それは、あらゆる細胞種のネットワークマップを手に入れたことと同じです。これを使えば、細胞の状態を転換させるのに、何回どのような介入が必要かがわかります。しかもシステマチックに。ひとつだけが提示されるのではありません。ランキングが示されます。数百件になることもあります。重複することもあります。なので、例えばひとつの気に入ったものを試してみて、思ったようにいかなかったときは、最初に戻って別のものを選んで試すことができます。もしその要素に知的財産権の問題が関連しているときは、そのネットワークは忘れて別のルートを使用します。そして、ひとたび標的の細胞に辿り着けたなら、そしてそれが調整を必要としていたなら、実際にシークエンスを変更して、最初の状態に戻して再出発ができます。そしてまた、この最適化プロセスを実行します。すると、結果として特許が得られます。物質特許を構成する小さな分子のようなものですが、それが癒しになります。目的が達成できなくても、細胞の構成要素は得られるのです」。

概念から出発して、新しい細胞療法を発見し、市場に送り出すまでに要する時間は、ディズリー博士の話から察するに4年から7年程度のようだ。「GMPに準拠した製造工程の基礎となる細胞種を特定できれば、治療指標に従って調整が行えるようになり、細胞療法を開発し、5年以内には市場に送り出せます」と彼は話す。「小さな細胞が市場で本格的な治療に使われるようになるまで、10年、15年、20年もの時間を要した時代とは違います。患者を治療する際、ほかに治療法がない場合はフェーズ2に進み、安全性および有効性の研究を行います。彼らの疾病という点では、すでに実際の治療が始まっています。もし適切に行えれば、早めの認証が得られます。それがダメでも条件付きの認証が得られます。なのでフェーズ3(試験)に移行する必要すらありません」。

「私たちは人工知能は一切使っていません」と彼は、偏りのないアプローチで使用するのが最も望ましいと主張する巨大で極端なデータ領域の中の企業に投資した経験から強調した。「私が思うに、AIはまだその道を探っている段階です」と彼は続けた。

「本質的にそれは、わずかな量のデータから答えを導き出そうとするものですが、学習に使用したデータ以上の答は出せません。しかもAIの危険な部分は、あなたが認識して欲しいものを認識するように教育されるところにあります。AIは、自分が何を知っているかを知らないのです。このような膨大な細胞ネットワークのデータなどを生成し続けるなら、それと組み合わせることで、機械学習やAIの側面を取り入れてもいいでしょう。しかし、そのデータを持たないAIでは、Mogrifyは決して成り立ちません。データはどうしても必要です。そしてそのデータは非常に複雑であり無数の組み合わせが発生します。それらの遺伝子の規則という面だけでも2000種類の転写因子があります。しかもそれらはネットワーク上でタンパク質間相互作用のために関わり合いを持ちます。そこにはエピジェネティクスの面もあり、後に細胞の微生物叢の効果も加わります。したがって、細胞の表現型に影響を及ぼす可能性のある要素が無数に生み出されるのです。なので、AIを使う際には少々注意が必要です。システムの中で十分な信頼が得られるようになれば、最適化のためのツールとして活用できるでしょう」と語る。

シリーズA投資で得た資金は、Mogrifyの経営の強化と社員の増員に使われる予定だ。これには、業界からの上級管理職や専門家のスカウトも含まれる。また、治療法開発計画の予算にも回される。ディズリー博士によれば、その一環として、Jane Osbourn(ジェーン・オズボーン)博士を会長に迎え入れることが決まっているという。

「私たちは、大手製薬会社から細胞療法の経験を持つ人材を数多く招くつもりです。同時に、製造と配送の経験を持つ人たちも招きます。私たちは、単なる技術系企業では終わりません」と彼は言う。「すでに私たちは大変に大きな力を持っています。技術と早期の創薬のサイドではすでに35名が働いていますが、さらに30名を増員する予定です。しかし、製品を市場に送り出すために、大手製薬会社、細胞療法開発、製造での経験を持つ人間を今後も増やしていきます」。

シリーズAの資金の使い道として、提携先探しも大きな柱になっている。「私たちは、適切な戦略パートナーを探しています。提携関係の中で複数のプログラムが行えるような戦略パートナーと出会いたいと思っています」と彼は言い足した。「そして、細胞転換で特定の問題を抱えている領域との一連の戦略的な取引を重ねます。必要ならば、これらはターンキー契約にできます。それでも私たちは、最前線に立ち、道標となり、特許がありますが、その数は多くありません」。

現在は、今後2年から2年半までの間の十分な資金があるものの、シリーズAをオープンにしたまま、これから12カ月の間にラウンドを最大で1600万ドル(約17億4000万円)まで拡大させることも可能だ。

「興味を示してくれる投資家が大勢います」とディズリー博士は私たちに語った。「今回のラウンドでは、私たちは実際にオープンにはしませんでした。内部の投資者と以前一緒に仕事をしていたとく親しい人たち、そして列を作っていた投資家たちから資金を調達した際には、そうしていました。そのため私たちは、今後12カ月間で額を増やしたくなったときに増やせるようにオープンのままにしています。これがもしシリーズAなら、最大でさらに1600万ドルを調達できたでしょうが、私たちは先に進むことを決めました。できるだけ早く成長して、より大きなシリーズBを目指します」。

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(翻訳:金井哲夫)