アマゾンの倉庫労働者が組合結成へ向け郵便投票を開始

全米労働関係委員会(NLRB)は米国時間2月5日、2月8日に開始予定の組合投票を遅らせようとするAmazon(アマゾン)の試みを却下した。会場での投票実施の要求などを含め、オンライン大企業Amazonの動きは多くの人の目に引き伸ばし作戦のように映った。会場での投票実施は、まだ新型コロナウイルスが米国そしてグローバルで大きな脅威である中で明らかに健康リスクをともなう。

「Amazonの労働者は、組合の声を勝ち取るための取り組みにおいて再び勝利を手にしました」と小売・卸売・デパート労組の組合会長であるStuart Appelbaum(スチュアート・アップルバウム)氏はNLRBの決定に関する声明で述べた。「パンデミックの最中に会場での投票を主張することで、労働者の健康と安全に対するAmazonの露骨な無視がまたも示されました。本日の決定は、Amazonが自社の従業員を尊重していたのははるか昔のことだと証明し、また今回の決定により労組は脅迫や妨害なしに投票を行うことができます」。

しかしながらAmazonは、多くの人に投票に参加してもらうという同社の目標に沿わないものであるため、NLRBの決定に失望した。同社の広報担当Heather Knox (ヘザー・クノックス)氏がTechCrunchへの声明で述べた。

「郵送で行う投票の従業員参加率は、実際に会場で行うものより20〜30%低いことをNLRBは認識しています」とノックス氏は話した。「Amazonは新型コロナ専門家によって認証された安全な会場投票プロセスを提案しました。専門家らは我々の同僚にすでに組まれたシフトの途中、あるいは業務に向かう途中に投票するよう勧めました。我々は引き続き、当社従業員の大多数の声を反映するような公正な選挙のための方策を求めます」。

現在、郵送投票プロセスは計画通り進んでいて、最終的に6000人ほどが働くアラバマの倉庫が、1937年からAFL-CIO(米国労働総同盟と産業別組合会議)の会員であるRWDSU(Retail, Wholesale and Department Store Union、小売・卸売・百貨店などに従事する労働者のための労働組合)に加わるかかどうかを決める。この動きはアマゾンの肉体労働者にとって分水嶺となる。そしてAmazonが全米110カ所ほどで展開しているフルフィルメントセンターで似たような組合立ち上げを誘発するかもしれない。

投票は、伝統的にそうした労組の動きを排除してきたテック部門におけるブルーカラー労働者、ホワイトカラー労働者両方にとって急激な変化が起こっている最中でのものだ。注目を集めた最近の例としては、ピッツバーグで働くGoogle(グーグル)の契約者のグループがあり、2021年に入って従業員800人超が加入したAlphabet Workers Unionの立ち上げがある。2020年2月、Kickstarter(キックスターター)は労組立ち上げの投票を行い、その翌月にデベロッパープラットフォームのGlitch(グリッチ)でも同様の動きがあった。

労働者と雇用側の間の仲介者のような役割を担う組合は、団体交渉を通じて賃金や労働条件、福利厚生の改善のために従業員を代表して主張する。組合に加入するには組合費が発生するが、組合員は非組合員よりも高収入を得る傾向がある。米国労働統計局によると、フルタイム賃金と給与制の労働者において、2020年の組合員の週給の中央値は1144ドル(約12万円)だったのに対し、非組合員の週給は958ドル(約10万円)だった。

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往々にしてこうした組合は、水面下で何カ月もあるいは何年も計画した結果だ。米国における労働の歴史に関する基礎的な知識を持っている人にとってはおそらく驚くことではないだろう。Amazonの労組立ち上げは米国の労働とテックにとって歴史的な動きとなるかもしれない。同社が動きを阻止することを模索してきた結果となる可能性がある。

投票を遅らせようとする試みに加え、Amazonはアラバマ州ベッセマーの労働者に労働組合結成に賛成しないよう説得に全力を注いできた。AmazonのDo It Without Duesウェブサイトは組合費を払うのではなく現状維持を労働者に勧めている。

「もし組合費を払っているなら、それは互いに助け合いまた社交的になりづらくなるという制限的な意味合いになります」とサイトにはある。「なので、実行者になり、フレンドリーのままでいながら組合費を払わずに物事を済ませましょう」。

一方、労働者はAmazonの反組合戦略が行き過ぎだと不満を述べてきた。とある労働者は、トイレの個室に反組合のメッセージが書かれるなどの攻撃を受けてきた、とワシントンポスト紙に語った

Amazonは2020年3月にベッセマー倉庫を開所し、フルタイム5000人超の雇用を生み出してきたと話す。時間給は15ドル30セント(約1610円)からで、ヘルスケアや眼科・歯科保険、401Kマッチング(事業者折半拠出金)の50%が含まれる、とクノックス氏は話した。労働環境は「安全」で、「イノベーティブ」と同氏はつけ加えた。「当社はチームをサポートすべく懸命に取り組んでいて、ベッセマーの同僚の90%超がAmazonは良い働き場所だと友達に勧める、と話しています」。

しかしAmazonにおける労働の歴史にはムラがある。同社は労働者、特にアラバマのフルフィルメントセンターで現在雇用されている6000人のようなロジスティックと出荷作業を行う労働者の扱いに対して、度々非難を浴びてきた。そうした問題の多くが2020年に明るみに出た。米国で新型コロナパンデミックが起こった当初、アマゾンの従業員が「エッセンシャルワーカー」とみなされたためだ。

2020年11月、元倉庫労働者のChristian Smalls(クリスチャン・スモールズ)氏が、パンデミック中に労働者に適切なPPE(個人保護具)を提供しなかったとしてAmazonを相手取って訴訟を起こした

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「Amazonは熱心な労働者を新型コロナから守っている、と主張したために不用意に契約を打ち切られて昨日のゴミのように投げ捨てられるまで、私は忠実な労働者で、すべてをAmazonに捧げてきました。私はただAmazonに基本的な保護具を労働者に提供し、職場を消毒してほしかっただけです」と当時、スモールズ氏は述べている。

同氏は、スタテン島フルフィルメントセンターでの職場ボイコットを企画した後の2020年3月に解雇された。Amazonの広報担当はTechCrunchに、スモールズ氏は「他人の健康と安全をリスクにさらし、雇用条件に違反した」として解雇された、と語った。

2020年4月には、同社によると「繰り返し内部規則に違反した」として従業員のEmily Cunningham(エミリー・カニンハム)氏とMaren Costa(マレン・コスタ)氏が解雇された。2人は同社の倉庫で働く従業員の扱いを声高に批判していた。こうした批判はパンデミック期間に耳にするようになったものだ。

そして9月、Amazonが情報アナリストの雇用を検討していると報じられた。求人情報には「労働組織の脅威などかなり機密扱いとなる微妙な問題について」上層部や弁護士に知らせる人を求めている、とある。

同社はすぐにその求人を取り下げ、「役割の正確な描写ではありませんでした。エラーであり、訂正されました」と同社の広報担当Maria Boschetti(マリア・ボスチェッティ)氏はTechCrunchへの声明で述べた。

Amazonは業務について改訂された具体的記述は明らかにしなかったが、その業務の役割は天気や大規模なコミュニティ集会、交通を麻痺させるようなあるいは建物やそうした建物内で働く人の安全とセキュリティに影響をおよぼすような他のイベントといった外部要因を専門とするアナリストのチームをサポートすることだと述べた。

しかしながら同じ日に、ストライキや抗議活動の恐れがないかを見張るためにAmazonが何年もの間労働者を監視していたとViceが報じている。その後、同社はソーシャルメディア監視ツールの使用を停止すると述べた。

「我々はドライバーのフィードバックを集めるさまざまな手法を持っており、特にドライバーから直接話を聞くことでドライバーの労働環境の改善に毎日取り組むチームを抱えています」とボスチェッティ氏は声明で述べた。「通知を受けて当社は、配達チーム内に閉鎖的なグループからの情報を統合していた1つのグループを確認しました。そのグループはドライバーをサポートしようとしていた一方で、そのアプローチが当社の基準に合うものではなく、ドライバーがフィードバックする他の方法があるためにそのグループはもはや情報収集していません」。

組合を結成することで、Amazonの労働者は安全基準や報酬、休憩、その他の問題などを含む労働条件について集団で交渉する権利を手に入れることを望んでいる。どのように交渉を進めるかによるが、労組結成では労働者が、「正当な理由」の従業員vs随意契約従業員となる可能性がある。

「Amazonは社会のあらゆる組織、そしてすべての労働者を支持しようと取り組んでいる社会契約にとって脅威となっています」と労組結成者のサイトにある。「Amazonのような企業は数十年にもわたり、著しく組合の密度を侵食し、労働条件を害し、そして多くの労働者の生活の質を下げ、労働者の権利に対してますます大胆で攻撃的になりました。しかもまだその動きは終わっていません。RWDSUは常に反労働者、反組合の企業に立ち向かってきました。我々の組合はAmazonがこうした行い、多くの危険な労働慣行の責任を問われるまで手を引きません」。

郵便投票は3月29日に終わり、NLRBは翌日からバーチャルプラットフォームで集計を開始する。集計には両者から4人が参加できる。

TechCrunchはAmazonにコメントを求めていて、返事があればアップデートする。

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(文:Brian Heater、Megan Rose Dickey、翻訳:Nariko Mizoguchi

Human Capital:Alpha Globalが全世界のAlphabet社員の労働組合を結成

Human Capital(ヒューマン・キャピタル)では、ここ1週間に起きたテック業界における多様性、平等、インクルージョンなどの労働関連ニュースをお送りする。

Alphabetの全世界の社員が労働組合、Alpha Globalを結成

Alpha Global(アルファ・グローバル)は先週、全世界のAlphabet(アルファベット)社員が集う労働組合を結成したことを発表した。米国内のAlphabet Workers Unionのメンバーも含まれる。The Vergeが報じた。Alpha Globalは労働組合の国際組織であるUNI Global Union(ユニ・グローバル・ユニオン)の関連団体として、共通の労働者戦略を策定し同志たる労働者の支援などを行う。

「Alphabetだけでも私たちの民主主義と社会のために幅広い可能性をもっています」とAlpha Globalが声明で語った。「だからこそ私たちは団結してAlphabet事業所の全労働者の基本的人権を要求するのです。組合の結成と参加および集団交渉の権利もその一部です」。

画像クレジット:Apple

Apple Watchがブラック・ユニティ・コレクションを発売

黒人歴史月間を祝福して、Apple(アップル)はApple WatchのBlack Unity Collectionを発売した

この時計には何か違和感を覚えるが、それが何なのか私にはよくわからない。たぶん黒人カルチャーのコモディティ化がそうなのだろう。

チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブがJustice Acceleratorファンドを設立

The Chan Zuckerberg Initiative(チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ)は新たな刑事司法改革団体を作った、とRecodeが先週報じている

今後5年間にわたって3億5000万ドル(約367億2000万円)を新ファンドに投じる予定の同団体は、犯罪司法擁護に焦点を当てる。イニシアチブの犯罪司法責任者のAna Zamora(アナ・サモラ)氏がファンドを指揮する。

全国労働関係委員会に新たな法務顧問代理が就任

バイデン大統領は、全国労働関係委員会の法務顧問代理にPeter Sung Ohr(ピーター・ソン・オーア)氏を指名した。ViceのLauren Kaori Gurley(ローレン・カオリ・ガーリー)氏の記事によると、オーア氏の指名はギグワーカーや労働者の権利全般にとって大いに期待できるという。

ServiceNowが人種公平性ファンドを設立

エンタープライズソフトウェア会社のServiceNow(サービスナウ)は、1億ドル(約105億円)を用意して、「より持続可能な財産形成を推進するために、全米10カ所の黒人コミュニティの住宅保有、起業、および地域活性化のための資金援助」を行うことを目的とする人種公平性ファンドを設立したとプレスリリースで発表した

その仕組みは次のとおりだ。

ServiceNow Racial Equity Fund(サービスナウ・人種公平性ファンド)は小規模なコミュニティ融資を購入することで、地元銀行の融資能力を拡大する。資産、投資の利用を増やすことで、黒人コミュニティにおける持ち家や起業を促進し、雇用創出とより広い経済成長をもたらす。この種の投資はServiceNowにとって初めてであり、当初はボストン、シカゴ、ダラス、ヒューストン、ニューヨーク、オーランド、サンディエゴ、サンフランシスコ・ベイエリア、シアトルおよびワシントンD.C.への投資に焦点を当てる。いずれもServiceNowの事業が運営され、コミュニティにおける存在感のある都市だ。

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(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

グーグルとアルファベットの従業員が労働組合結成を模索中

Google(グーグル)とAlphabet(アルファベット)の従業員200人以上のグループが、組合を結成する取り組みを発表した。Communication Workers of America Union’s Campaign to Organize Digital Employees(CODE-CWA、アメリカ通信労働組合のデジタル従業員組織キャンペーン)のサポートを受けて、Alphabet Workers Union(Alphabet労働組合)は従業員と契約労働者の両方に門戸を開くことを模索している。

これまでに227人が労組支援に署名し、組合費として年俸の1%を払うことを約束した。署名した労働者の多くがサンフランシスコ・ベイエリアのオフィスに勤務していて、1人はケンブリッジの勤務だ。

しかし明確にしておくと、Alphabet労働組合は従来の労組と比べ少々変わっている。現在の加入者はAlphabetの従業員13万2121人のうちわずか227人。Alphabet労組が意図するところは必ずしもAlphabet傘下企業と駆け引きができるようになることではなく、共通の目的に向かって一致して取り組むことだ。

「これは歴史的なことです。主要テック企業におけるテックワーカーによる、テックワーカーのための初の労組です」とグーグルでソフトウェアエンジニアとして働くDylan Baker(ディラン・ベイカー)氏は声明で述べた。「我々は代表を選び、民主的に決定を下し、費用を払い、そして会社に自分たちの意見を反映させたいと望むグーグルの全労働者が労組に加入できるようにするためにスキルを持つ幹事を雇います」。

Alphabet労組は、Kickstarter(キックスターター)やGlitch(グリッチ)のようなテック企業での2020年初めの労組結成に続くものだ。加えて、ピッツバーグのグーグルと契約しているHCL Technologies(HCLテクノロジーズ)の労働者とベイエリアのテック企業カフェテリアワーカーも2020年に労組を結成した。

「労働者の産業があります。労働者の新世代、特にテックとゲームの業界においては若い人が急激に増えています」とCODE-CWA組合幹事のWes McEnany(ウェス・マクアナニー)氏は、なぜテック企業に労組が増えているのかについてTechCrunchにこう述べていた。「一部の人は、本当に悪いことをしている企業で働いてかなり儲けています。彼らは、もういい加減にしろ、というような社会的地位にいると思います」。

グーグルは過去数年、多くの労働問題を抱えた。グーグルでのストライキ実行、ストライキ組織者に対する報復措置の報道、Timnit Gebru(ティムニット・ゲブル)博士の最近の退職などがあり、グーグルの労働者が取り組みを公式なものにすることに決めたというのは驚きではなない。

プレスリリースの中で労働者たちは、Alphabet傘下企業で働く労働者の半数以上が契約業者であり、それゆえに彼らは多くの福利厚生が受けられていない点も指摘した。加えて、ハラスメントで訴えられた幹部にかなりの額の退職金が支払われた件や、軍のドローン技術など政府との契約の一部も問題視している。

一方、全米労働関係委員会(NLRB)はちょうど先月、グーグルが労働者を調査し、広範に干渉し、そして全国労働関係法によって保障されている権利の行使を抑制することで全国労働関係法に違反したとしてグーグルを提訴した。

NLRBはまた、「従業員が労組を結成、加入、サポートしたり、他の保護された言動に従事する」ことをグーグルが思い止まらせていたとも主張している。

そうした主張は労働者が組合を結成したい理由だ。ただ、彼らは現在、労働条件について集団で話し合う法律上の権利を持っていない。

従来のプロセスでは、次のステップはAlphabetからの承認を模索することになるだろうが、これは難しい。Kickstarterの労働者が2019年にKickstarterに承認を要求したとき、労働者の大半が労組をサポートしていたにもかかわらず同社経営陣は却下した。承認するどころか経営陣はNLRBと正式な選挙を行うよう強制した。これを受けてKickstarterの労働者は職場をボイコットしたが、Kickstarter労組は発足してから承認されるまでにおおよそ10カ月かかった。

TechCrunchへの最初の声明に続いて出した2つめの声明文の中で、グーグルの人事担当ディレクターKara Silverstein(カラ・シルバーステイン)氏は次のように述べた。

「我々は、協力的でやりがいのある職場づくりに常に懸命に取り組んできました。従業員はもちろん当社が支持する労働の権利を有します。しかしこれまでそうしてきたように、今後も全従業員に会社が直接関わります」。

Alphabet労組は正式に承認されればCWA Local 1400に属する。

「この労組結成は、グーグルワーカーによる何年にもわたる果敢な取り組みの結果です」とグーグルでプログラムマネジャーとして働くNicki Anselmo(ニッキ・アンセルモ)氏は声明で述べた。「『実名』ポリシーとの戦いからProject Maven反対、セクハラをした幹部に支払われた言語道断の退職金への抗議に至るまで、我々が集団で行動したときのAlphabetの対応を目の当たりにしてきました。ニュースで騒がれた後でもAlphabet従業員が敬意を払われるよう、新しい労組は共有する価値観を確かなものにする持続可能な組織です」。

労働者たちはまた、労組結成を決めた理由を詳細につづった論説をニューヨークタイムズ紙に出している。

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(翻訳:Mizoguchi

2020年の注目すべき労働問題を振り返る

今週はあまりたくさんのことが起きなかったので、この機会を借りて2020年の注目すべき労働関連の話題を振り返ってみたい。

ギグ・ワーカー vs Uber、Lyft、Instacartなど

カリフォルニア州の住民立法案 Proposition 22は、Uber、Lytf、DoorDashらのギグカンパニーの支持を受けて通過し、ギグワーカーは個人事業主として分類されることになった。これは賛成側にとって2億ドル以上の価値をもたらす重要な法案だった。しかし戦いは終わっていない。詳しくはこちらで読める(未訳記事)。

Amazonのつまづきの数々

Amazon(アマゾン)は年間を通じてさまざまな労働争議に直面し、その多くは同社の倉庫従業員監視(VICE記事)に関わるものだった。

一例を挙げると、元Amazonの倉庫係であるCharistian Smalls(チャリスタン・スモールズ)氏は2020年3月、ニューヨーク州スタテン島の同社配送センターでストライキを起こした後に解雇された。その結果ニューヨーク州司法長官は、Amazonがスモールズ氏を解雇したことで連邦労働安全法およびニューヨーク州の公益通報者保護法に違反したという疑いで捜査している。

スモールズ氏の解雇は、他の倉庫労働者たちを奮い立たせ、後にAmazon倉庫内の変革を要求する国際組織を編成するきっかけとなった。主催者らは労働者への報復がAmazon Workers Internationalを組織化する原動力の1つだったと語った。一方、Amazon経営陣は、スモールズ氏を疑う発言を繰り返し、同氏を抗議行動の首謀者だと指摘した。

かつてAmazon広報担当者は本誌に対し、同社はスモールズ氏を抗議の組織化を理由に解雇したのではないと伝えた。Amazonは「他者の健康と安全を脅かし雇用条件に違反した」ために同氏を解雇したと語っている。

2020年11月、スモールズ氏はAmazonを相手取って訴訟を起こし、同社が従業員にPPE(個人用保護具)を支給しなかったと主張した。

テック・ワーカーによる組合結成

Kickstarter(キックスターター)とGlitch(グリッチ)は、テック企業として労働組合を結成した初期の会社だ。Kickstarter社員たちは2020年2月に組合結成を投票で決めた。1カ月後、Glitchも投票によって組合を結成した。

2020年9月時点で少なくとも10社のテック企業が組合結成を積極的に進めていると、OPEIU(事務専門職従業員国際労働組合)の北東部組合組織責任者であるGrace Reckers(グレース・レッカーズ)氏が本誌に語っている。

「労働者たちは自分たちが作っている製品が、どのように使われているかを決めることができません」と彼女はいう。「シリコンバレー企業のほとんどは、より良い世界を作り、私たちの生活を簡単・革新的にするというメッセージを発信していますが、同時に、すばやく動いて物事を破壊するという哲学の下で行動しています」。

【情報開示】筆者のパートナーはGlitchに勤務し、組合の交渉委員会に所属している。

Pinterestが厳重な監視下に置かれる

Pinterest(ピンタレスト)の元従業員であるIfeoma Ozoma(イフェオマ・オゾマ)氏とAerica Shimuzu Banks(エアリカ・シムズ・バンクス)氏の2人は、同社における人種および性差別を声高に非難(未訳記事)した。その直後、Pinterestの前COOであるFrancoise Brugher(フランソワーズ・ブルーガー)氏が同社を性差別で訴訟(未訳記事)し、Pinterestは2250万ドル(約23億2000万円)で訴訟を和解した。

しかしオゾマ氏とバンクス氏は、自分たちの扱いについてブルーガー氏と比較して二重基準であると私に説明した。ブルーガー氏が2000万ドル(約20億1000万円)を受け取ったのに対して、オゾマ氏とバンクス氏が受け取った退職手当は報酬の1年分以下だった。

「これは、黒人女性が先陣を切って不平等を暴き、そこへ白人女性がやってきてすべての恩恵を受ける、という昔ながらの米国の伝統に沿うものです」とバンクス氏は私に語った。

ゲブル博士のGoogle辞職が波紋を呼ぶ

カリフォルニア州サンフランシスコ、2020年9月7日。GoogleのAI科学研究員であるTimnit Gebru(ティムニット・ゲブル)氏が2018年9月7日にMoscone Centerで行われたTechCrunch Disrupt SF 2018第3日の壇上で講演(画像クレジット:Kimberly White/Getty Images for TechCrunch)

Google(グーグル)のAI研究者のトップであるTimnit Gebru(ティムニット・ゲブル)博士は、会社のDEI(多様性・公平・受容)ヘの取り組みと彼女の研究論文を巡る承認手続きに失望したことを訴えるメールを直属の部下に送ったことでGoogleを解雇されたと語った。ゲブル氏がそのメールを送ったのは、言語モデルに関するAI倫理の論文に彼女と同僚の名前を載せることをGoogleが許可しなかったことを受けたものだった。以前ゲブル氏は上司にメールを送り、もし会社が彼女の具体的条件を認めなければ会社を去るつもりだと書いていた。その後Googleは同氏の辞意を受け入れたことを伝え、彼女の業務メールへのアクセスを切断した。

2020年12月にGoogleのCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は、ゲブル氏の退社に至った経緯を再調査すると発言した。ピチャイ氏は、会社は「多大な才能をもつ著名な黒人女性指導者がGoogleを去った事実の責任を受け入れる」必要があると社内メモに書いた。さらに同氏は、このことがGoogle社内の過小評価されているコミュニティに「波及効果」をおよぼしていることについても言及した。

Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏が取締役の席を黒人に譲る

Reddit(レディット)の共同ファウンダーであるAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏は、同社取締役を辞任し、後任を黒人にするよう会社に求めた。Redditはオハニアン氏の提案を受け入れ、Y CombinatorのCEOであるMichael Seibel(マイケル・サイベル)氏を指名した。

コワーキングスペース「The Wing」でトラブル発生

ワシントンDC。女性専用コワーキングスペース The WingのファウンダーであるAudrey Gelman(オードリー・ゲルマン)氏。The Wingはニューヨーク市でスタートし、ワシントンDCはニューヨーク以外で初めての事業所(画像クレジット:Evelyn Hockstein/For The Washington Post via Getty Images)

The Wing(ウィング)は、人種その他の差別を巡る疑惑を受けて炎上した。CEOのAudrey Gelman(オードリー・ゲルマン)氏は辞任し、対応を怠ったことを後日謝罪した。

元従業員に送ったメモの中でゲルマン氏は、The Wing在任中に有色人種女性に対する差別と戦わなかったことを謝罪した。同氏はさらに、成功と規模拡大を急いだ自身のやり方が「会社の描いた価値に見合った健全で持続可能なカルチャーや、自分たちの価値を認められ尊重されていると社員が感じられる職場の慣行を犠牲にしていた」ことを認めた。

つまり、The Wingは「サービス業界における歴史的な迫害と人種差別の根源を絶つことをせず、より優しく穏やかなバージョンに見せていただけでした」とゲルマン氏は述べている。

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画像クレジット:JOHANNES EISELE/AFP via Getty Images / Getty Images

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