SpaceXの有人宇宙船Crew Dragonがメキシコ湾に着水し船上回収成功

SpaceXと NASAはこれまでで最大の共同ミッションを遂行中だ。Crew Dragon Demo-2による有人宇宙飛行を完了する準備を整えている。Crew Dragonは、一般人の宇宙飛行を可能にするよう設計された宇宙船だ。今回のミッションはCrew Dragonが商用宇宙飛行に適格であると認定するもので、SpaceXとNASAの協力の成果の集大成となる。

NASAの2名の宇宙飛行士は数時間にわたって高度を下げ、フロリダ半島東側、アラバマ州ペンサコラ沖に着水する。

Behnken(ベンケン)氏、Hurley(ハーリー)氏の両宇宙飛行士は米国東部時間8月1日午後7時30分(日本時間8月1日午後9時30分)にすでに国際宇宙ステーション(ISS)を離脱しており、以後の飛行はCrew Dragonのシステムが自動操縦となる。SpaceXは、Crew Dragonの打ち上げと帰還飛行を完全に自動化するようデザインされているのだ。前回の無人無人宇宙飛行ではこれに成功している。

Demo-2ミッションは ベンケン氏とハーリー氏をメキシコ湾のペンサコラ沖に米国東部標準時8月2日午後2時48分(日本時間8月3日午前43時48分)着水させること完了する。ここにはSpaceXの回収チームが待ち受け、回収船に収容する。Crew Dragonは 5月30日にEndeavourの飛行を成功させているが、今回は宇宙飛行の歴史上最初の商用宇宙飛行の成功となる。

Dragonカプセルは大気圏を降下し、まず小型のパラシュートを使って姿勢を安定させ、さらにメインパラシュートを展開して時速24km程度に減速する。ISSを離脱してから着水までに非常に長い時間が必要な理由は、ISSをスタートしたきは時速2万8000km程度で飛行しており、非常に大きな減速の必要があるためだ。

NASAとSpaceXは回収の模様をペンサコラ沖とカリフォルニア州ホーソーンのミッションコントロールの双方からライブで中継している。新しい情報が確認でき次第、記事をアップデートする。

【Japan編集部追記】ペンサコラ沖の洋上回収に成功。両宇宙飛行士に異常はなく、カプセルは回収船のU型クレーンによって船上引き上げられハッチが開かれるのを待っている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ボーイングの商用有人宇宙船Starlinerの初テストは8月に延期

一般人を対象とした商用宇宙旅行計画の進展は我々と宇宙の関係を一変させる可能性があるが、その一番乗りの栄誉はSpaceXが今年中に手にするかもしれない。最大のライバルであるボーイングがStarlinerシステムのテスト飛行を延期したからだ。無人飛行テストの第1回目はこの5月に予定されていたが、8月に延期されたことを米国時間4月2日、ボーイングが確認した。

Starlinerのテスト飛行延期の情報が浮上したのは先月だった。この時点ではボーイングは「Starlinerが利用する打ち上げ施設の日程が立て込んでいる」ことを確認するにとどまった。実際、Starlinerの打ち上げに適する「ウィンドウ」は5月には2日しかない。Starlinerを割り込ませれば国家安全保障上重要なAEHF5軍事通信衛星の打ち上げに支障をきたすおそれがあった。

宇宙事業でのスケジュールの遅れはいやというほど繰り返されてきた。世界の宇宙事業各社が独自の宇宙基地や発射施設を保有ないし建設しようとしているのはこれが理由だ。衛星発射の回数が増えれば発射施設の能力も拡大される必要があるというのは当然だろう。しかし独自基地の建設には莫大なりソースを必要とする。多くの事業者にとって、(米国東部にあるロケットセンター)ケープ・カナベラルの発射施設を利用する以外選択肢がない。

ただし、ボーイングが本当に5月に打ち上げを実施するつもりだったら、打ち上げロケットとStarlinerカプセルは現在よりはるか前にケープ・カナベラルに到着していければならなかったとNASAの宇宙飛行部門が指摘している。テストに必要な機材がケープ・カナベラルに来ていなかったということは打ち上げ延期が決定されたのがかなり以前であることを示唆する。ボーイングとロッキード・マーティンの共同宇宙事業であるUnited Launch Allianceは、すでにテスト発射準備を中止していた。つまり昨日の延期発表は誰もが知っていたことを再確認したにすぎない。

8月の無人テスト飛行が成功すれば、11月には有人テストが可能になるだろう。しかしStarliner計画はすでに何年も遅れており、今回もまた遅れが加算されることとなった。しかもボーイングに比べればはるかに若いライバルがすでに無人宇宙飛行テストに成功していることはさらなる屈辱だ。

SpaceXは有人飛行を7月に予定しているのでボーイングは悔しいかもしれない。しかし実情は、こうした事業は慎重さの上にも慎重さを重ねる必要があり、必要なだけの時間をかけるべきだ。この点、ボーイングの決断は正しい。なるほど一番乗りを逃がせば、会社の評価にとって追い風にはならないかもしれない。しかしそれは今後明らかになるStarlinerの能力、信頼性によって十分取り返せる。

別のプレスリリースでNASAとボーイングはStarlinerには研究、メンテナンスのためのミッションが追加されることを発表した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook