宇宙ゴミ除去に取り組むアストロスケールが約33億円を調達、米国拠点の開設も発表

スペースデブリ(宇宙ごみ)除去サービスに取り組むアストロスケールホールディングスは4月11日、米国拠点の開設に加えて、約30百万米ドル(約33億円)の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回の調達はシリーズDラウンドの追加調達という位置付け。INCJ、東京大学協創プラットフォーム開発、三井住友トラスト・インベストメント、エースタート、平尾丈氏から出資を受け、同ラウンドの累計調達額は約132百万米ドル(約146億円)となる。

以前も紹介した通り、スペースデブリとは宇宙空間に漂っている役目を終えた衛星、ロケットの一部や金属片のこと。アストロスケールの昨年の発表によると宇宙空間には1cm以上のデブリだけでも約75万個が存在すると言われていて、これらが宇宙機の安全航行を脅かす存在として問題視されている。

同社では2013年の創業期より、増加し続けるデブリの低減・除去策として、宇宙機が故障や運用終了を迎えた際の除去(EOL サービス)や、既存デブリ除去(ADR サービス)などの技術開発に取り組んできた。現在はデブリ除去の技術実証ミッションである「ELSA-d(エルサディー)」の2020年初頭打上げに向けて設計・開発を進めている。

今回の資金調達は、デブリ問題に対する世界での認識の高まりや需要の顕在化に伴い、更なる開発・製造・運用能力の増強を目指したもの。新たに米国拠点をコロラド州デンバーに開設してグローバル展開を加速させる計画で、同拠点のマネジングディレクターには航空宇宙業界での経験が豊富なロナルド・ロペス氏が就任するという。

なおアストロスケール創業者兼CEOの岡田光信氏は、本件について以下のようにコメントしている。

「アストロスケールにとって、米国拠点の開設は、従業員や顧客にとっても多くの恩恵をもたらす、非常に重要なマイルストーンであると捉えています。米国はこれまで、宇宙交通管制(STM)や軌道上デブリの低減に積極的に取り組んできました。米国に拠点を構えることで、グローバル課題であるデブリ問題について、政策立案者や業界リーダーとの密なコミュニケーションが可能となり、持続的な解決策に向けて考察を深められると考えています」(岡田氏)

宇宙銛(もり)を配備せよ

気を付けろ、宇宙クジラたちよ。君たちに、その惑星を破壊しかねない巨大なヒレで、脅かされている星の住民たち(人類)が、新しい武器を手に入れて、こうしている間にもテストの真っ最中だ。まあここに示した、その武器の小規模版は、せいぜい軌道上の危険なデブリを除去すること位にしか役立たないが、やがては君たちの、ハイパーカーボンの皮やその中心を貫くだろう。

文字通り宇宙銛(もり)だ(クレジット:Airbus)

しかし、現在の技術で可能なことを超えて憶測することは無責任なので、まずは現時点でこの銛で可能なことを要約しておけば十分だろう。

この宇宙銛(もり)はRemoveDEBRIS(デブリ除去)プロジェクトの一部である。これは宇宙デブリの除去のための手法を考案しテストすることを目指すヨーロッパのプロジェクトであり、複数の団体が参加している。微細なものから壊滅的な可能性のあるものまで、様々な大きさの何千もの障害物(宇宙デブリ)が、私たちの軌道周辺に散らばっている。

宇宙ゴミには様々な大きさや形があるので、それに応じてそれらの厄介なアイテムを取り除く方法は複数存在している。おそらく小さな断片に関しては、レーザーを用いて軌道減衰させていけば十分だろう。だが、より大きなものに関してはより直接的な解が必要とされる。そして、一見すべてが航海起源のように見えるが、RemoveDEBRISは、網、帆、そして銛を備えているのだ。(大砲はないのかって?)

以下の動画では、その3つのアイテム(網、帆、銛)がどのように動作するのかを見ることができる:

この銛は、例えば故障していてその軌道から外れているフルサイズの衛星などの、より大きなターゲットを狙うためのものだ。単純なマスドライバーを使って、それらを地球に向かって押しやることもできるが、それらを捕らえて降下を制御することは、より細心の注意を必要とする技術である。

普通の銛なら、単にクィークェグやダグー(2人とも「白鯨」に登場する銛撃ち人)のような者たちによって投げられるだけだが、宇宙では少々事情が異なる。残念だが、EVA(宇宙船外活動)ミッションのために、銛撃ち人を召喚するのは現実的ではない。そのため、全体を自動化する必要がある。幸いなことに、プロジェクトはターゲットを識別し追跡できるコンピュータビジョンシステムもテストしている。それがあれば、あとは銛をターゲットに向けて発射して巻き取れば良い。これが今日衛星によって実証されたことだ。

Airbusが設計したこの小さな装置は、クジラに撃ち込む銛(トグリング・ハープーン)のような動作をする。撃ち出されるとターゲットに突き刺さって回転し、抜けにくくなる。明らかにこれは一度きりの使用を想定されたデバイスだが、特に大きくはなく、一度に複数の軌道上に迎撃用に展開することができる。一度ターゲットを巻き取ったあとは、帆を開くことによって(上記のビデオにも示されている)、再突入を早めることもできる。推進力をほとんど、またはまったく使用せずに、すべてを行うことができるため、運用は非常に簡単になる。

明らかに、これは宇宙クジラたちにとってはまだ脅威ではない。だがいつか私たちは、それらのモンスターたちを仕留めるのだ。

(注)宇宙クジラ(starwhale)という呼びかけは、STEAMのゲームであるSTARWHALの名前にインスパイアされたもの

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(翻訳:sako)