小売業は今、急速に変わりつつある。D2Cがショッピングを変えた一方で、Quinceは小売業をさらに劇的に変えようとしている。
知られているかぎりではQuinceは、2019年に850万ドル(約9億円)のシード資金を調達しただけだが、男女のアパレルやアクセサリー、ジュエリー、家庭用品といったおよそ700品目の在庫を自前で持つことでサプライチェーンの概念を変えようとしている。
「Last Brand(最後のブランド)」を自称するQuinceは、1年のベータテストを経て「M2C」と呼ばれる新しいモデルをローンチしている。M2Cは「manufacturer to consumer(メーカーから消費者へ)」の略だ。
このモデルでは、必需品のデザインを持って工場に直接出向き、過剰なパターンやブランド品ではなく、需要に応じて毎週ダイナミックに調整する。発注量は、需要次第で各週に変わる。Quinceは、消費者からの注文が入ってくるようになるとメーカーと協力して、個々のSKUの生産量を過不足が生じないよう調節。その後、、工場が直接顧客へ発送する。これまでのように、小売業の流通センターやストアに一旦送って、それをさらに最終目的地へ送る、ということをしない。
品物があまり売れず在庫が残っても、それは発注した小売業の責任であるため、工場がこのモデルに従う必要はないかもしれない。しかしQuinceの共同創業者でCEOのSid Gupta(シド・グプタ)氏によると、この新しいモデルが登場した今が小売業にとって転換期だという。1つのSKUの発注量が10万になるような大きなブランドは、現在パンデミックで苦戦しており、SKUのポートフォリオを縮小している。
工場に残された道は、2つしかない。D2Cブランドに変わるか、それともAmazon(アマゾン)のようなマーケットプレイスで直販するかだ。
「D2Cの需要は非常に細分化されており、ほとんどのD2C企業が小規模だ。効率的な利益を得るのは難しい。しかしアマゾンのようなマーケットプレイスで販売しようとすると、同じような品目で何百何千もの売り手と競合することになる。また、実際に高品質な製品を作っている工場は、従業員に公正な賃金を払い、環境にも配慮しなければならないため、コストが3%か5%高くなるかもしれない」とグプタ氏はいう。
彼によると、アマゾンのユーザーにはそんな工場の努力は伝わらない。効果的な広告を出すことも、工場には難しい。
しかしQuinceのような環境なら、メーカー自身が新しいやり方に取り組むことができる。
一方、Quinceは工場と直接接触することによって、高級品のコストを大幅に下げることができる。たとえばカシミアのセーターなら他店のように150ドル(約1万5800円)以上でなく、50ドル(約5300円)で販売することができる。このようなQuinceの協力工場は現在、全世界に30ほどある。
グプタ氏によると、同社は持続可能性に真剣に取り組んでおり、たとえば素材は有機産品のみ、工程は環境に優しいかなど使用する素材や製造工程、労働者の給与などに基準を設けている。また、ヒットした品目については、工場やその従業員への利益還元も検討している。
2019年秋のシード資金でQuinceは、ベータテストを開始することができ、チームを16名に増員できた。その中には、共同創業者のBecky Mortimer(ベッキー・モーティマー)氏とSourabh Mahajan(スーラーブ・マハジャン)氏がいる。また、従業員の35%は女性、65%はマイノリティだ。
同社の投資家はFounders Fundと8VC、およびBasis Set Venturesだ。
関連記事:新型コロナパンデミックで米国におけるeコマースへのシフトが5年分加速
カテゴリー:ネットサービス
タグ:Quince、D2C、小売、ネットショッピング
画像クレジット:Quince
[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa)