パーセベランスが火星着陸に成功、最初の火星表面画像を送信

火星探査車Perseverance(パーセベランス)は、スカイクレーンのロケットが作動する直前に着地地点を特定するという手に汗握る降下の後、無事に着陸を果たした。すると早速、パーセベランスは今回のミッションで探検することになっているジェゼロクレーターの最初の映像を送ってきた。

緊張を隠せないものの成功を信じる担当チームは、数時間前からパーセベランスが最終アプローチに入る様子を見守り、古代の三角州に位置し今回の探査対象となっているジェゼロクレーターのど真ん中へのコースを辿っていることを確認した。

火星の大気に突入した際に着陸船の周囲が高熱の空気に包まれるため、何度か通信が途絶えることはあったがこれは想定内のことであり、それを除けば、惑星間の距離による遅延はあるものの、着陸船からは安定的に最新情報が地球に送られてきていた。

時間どおりに着陸船が火星の大気圏に突入。10Gもの力がかかる減速操作に着陸船が耐えたとわかったときパラシュートが開き、地上を向いたレーダーで着陸地点が確認され、スカイクレーンのロケット推進降下が作動し、そしてついに探査車が無事に着地した。そのたびごとに担当チームとミッション本部の画面に映る人たちは、周囲に聞こえるほどの溜息を漏らし、「やった!」と小さく叫び、興奮した仕草を見せた。

画像クレジット:NASA

歓喜に溢れたが、新型コロナ予防対策に従って、(いつもならそうしていたのに)抱き合うことはせず、担当チームは着陸を祝った。そしてすぐに、探査車からの最初の映像というプレゼントが届けられた。

最初の映像は、着陸数秒後に、ナビゲーション用に備えられた魚眼レンズの「ハザードカメラ」(危険探知カメラ)による低解像度のものだった。文字どおり騒ぎ(砂埃)が落ち着くや、高性能なデバイスとカメラが起動し、カラー映像が送られてくることになっている。おそらく1〜2時間後だろう。

ミッションと、その驚きの着陸方法の詳細については、米国時間2月18日のパーセベランス・ミッションをまとめた記事をお読みいただきたい。これから数日間は、ハラハラどきどきの着陸時のような、興奮するほどのことは起こらないと思うが、パーセベランスはすぐにでもジェゼロクレーターの中を動き始める。そこでは、火星に生命が存在した証拠を探し、将来、人が火星を訪れた際に使用を予定している技術のテストが行われる。

「まだ宇宙飛行士を送り込む準備は整っていませんが、ロボットならいけます」とジェット推進研究所(JPL)の所長Michael Watkins(マイケル・ワトキンス)氏は放送の中で話していた。「まずは、私たちの目と腕をロボットとして送り込みます。それができるだけでも夢のようなことです。さらに各探査車や、科学とエンジニアリングから学んだことを活かして、次にはもっといいものを作り、もっともっと発見をします。こうしたミッションを実施するごとに、私たちは目覚ましい発見をしています。そしてどの発見も、1つ前よりずっとエキサイティングなものなのです」。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

みんなが楽しみにしているエキサイティングなものに、火星ヘリコプター型ロボットIngenuity(インジェニュイティー)がある。これもすぐにでも飛び始めてほしいところだ。

「現時点から初飛行までの間には、いくつもの大切な段階を踏まなければなりません。明日、ヘリコプターを起動し、探査車がその健康状態を確認できるようにします。次の重要な段階は、インジェニュイティーを地上に降ろすことです。これにより、インジェニュイティーは、初めて自力での運用を開始する瞬間を迎えます」と、インジェニュイティーのプロジェクトマネージャーでありエンジニアリング責任者のMiMi Aung(ミミ・アン)は話す。「火星での凍てつく最初の夜を生き抜くことも、重要な段階です。その後、何項目かの点検を行ってから、本当に重要な初飛行に移ります。そして初飛行が成功すれば、火星の30日以内に、飛行実験のために特別に計画している残り4回の飛行を行います」。

このヘリコプターの実験は間違いなく革新的なものだが、これは単にNASAが初めて行ったという記録作りが目的ではない。火星ヘリコプターのインジェニュイティーは、将来の探査のための、着実な技術的基礎を築くものとして期待されているのだ。

「将来は、探査車と宇宙飛行士が長旅に出る前にヘリコプターをはるか前方に飛ばして、詳細な偵察情報が得られるようになります」とアン氏。「また、飛べるということは、探査車や宇宙飛行士では到達できない場所に行けるということです。それも大変に重要です。急斜面や、地面の裂け目の中など、科学的な関心が高いあらゆる場所に行けるようになる。これまでの常識が変わります」。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星Ingenuity惑星探査車

画像クレジット:NASA

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:金井哲夫)

NASAがアルテミス計画に向けて月面探査車のコンセプトを募集中

NASAは、将来の月面探査車をどのようなものにするかについて業界からの意見を求めている。その対象は、必ずしもこれまで宇宙事業に参入している企業とは限らない。自動車メーカーやIT企業なども含まれる。これは再び人間を、それも史上初の女性、そして米国人の男性を月面に送り込もうというAltemis(アルテミス)計画の一環だ。

画像クレジット:NASA

この問いかけには、2つの正式なRFI(Requests for Information、情報提供要請)が含まれている。1つは自動探査用に設計されたロボローバー(惑星探査車)についてのアイデア。もう1つは人間が乗るのに適したLTV(月面用車両)の開発につながる可能性のあるコンセプトとアイデアだ。後者は、加圧防護スーツを着たままの宇宙飛行士が乗車して、月面を走り回ることを想定したもの。必然的に屋根のないオープンなデザインの車体が求められる。

こうした車両に対するNASAの目標は、宇宙飛行士が着陸地点の付近以外の場所も探検できるようにすること。ちなみに、今後は月の南極近辺に着陸することになる。そこから、アクセス可能な地域を拡大して、実験やデータ収集ができるようにするわけだ。ロボット型の車両の目的も同様のものだが、さらに人間では行くのが難しいような場所にも到達できるのが理想だ。

RFIの説明によれば、NASAは、あらゆるタイプの車両の生産に関連する業界のプレーヤーからの専門知識を求めているという。たとえば、全地形対応車、電動車、あるいはその他の地上の乗り物だ。そこには、自動運転車の会社、革新的なモビリティ技術を持つスタートアップなども含まれる。

NASAは、さらなる情報を求めている企業のために、仮想の産業フォーラムを開催して質問に答える予定を組んでいる。質問の締め切りは、LTVローバーのRFIについては2月26日、ロボローバーのRFIについては、もう少し猶予がある3月6日に設定されている。

NASAでは、2018年にも商用のロボット月着陸船について、同様のRFIを発行した。それは、2019年2月に月面への商用輸送サービスの契約プログラムを発表するのに先立つものだった。それを考えると、今回のRFIも、最終的に将来のNASAの月面探査ミッションで使われる探査車に関する、何らかの商用パートナープログラムにつながる可能性がある。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)