新経済サミット2013:シリコンバレーのエコシステムを日本に作るには何が必要か

新経済サミット2013

シリコンバレーではスタートアップが次から次へと立ち上がる。投資家が彼らに資金提供し、成長を加速させIPOやバイアウトを成し遂げる。成功した起業家は再度スタートアップするのであれ、投資家サイドにつくのであれ、またシリコンバレー内で活動を続ける。この様子を見て世界各国から人材が集まり、さらに質と量が増していく。このような好循環エコシステムがシリコンバレーにはある。

このエコシステムは日本では作ることができないのだろうか。また、できるならば何が必要なのだろうか。本日開催された新経済サミット2013のセッションの1つではシリコンバレーで活躍するベンチャーキャピタル(以下、VC)と起業家が共に登壇し、この疑問についてもディスカッションが行われた。

このセッションに登壇したのはEvernoteのPhil Libin氏、DomoのJosh James氏(AdobeにバイアウトしたOmniture創業者、2006年NASDAQ上場企業最年少CEO)、ApceraのDerek Collison氏(Google、VMware出身)、DCMの茶尾克仁氏、500 StartupsのGeorge Kellerman氏で、モデレータはライフネット生命の岩瀬大輔氏が務めた。

このトピックで彼らが口を揃えて言及したのは「日本人は悲観的」ということだ。EvernoteのPhil Libin氏はよく日本を訪れるそうだが、いつも日本人から「日本は何がダメなのか?」と聞かれるという。海外の人は日本をポジティブに捉えているが、当の日本人は日本がダメだとネガティブに思い込んでしまっている。近隣諸国の中国や韓国では自国をポジティブに考えている起業家が多く、日本とは正反対なんだそうだ。

今回の登壇者であるPhil Libin氏のEvernoteは売上の30%が日本からのもので、DomoのJosh James氏が以前立ち上げたOmnitureも同様に売上の20%を日本が占めていたという。また、Phil Libin氏によると100年以上存続している世界の企業3,000社のうち、2,500社は日本の会社だ。

世界のIT市場のマーケットシェアでも日本は多くの割合を占めているなど、悲観的になる要素は他国から比べると少ないように思えるかもしれない。ではシリコンバレーを楽観的に捉え、日本を悲観的に捉えさせてしまう要素は何なのだろうか。

DCMの茶尾克仁氏は日本で起業するインセンティブが少ないことは1つの要因だという。例えば、中国では起業すると税金がかなり免除される。スタートアップに参加する人達にとっては金銭的なインセンティブが欠けており、シリコンバレーではストックオプションが当たり前だが、日本では存在を知らない人も多い。このようなインセンティブの欠如は解決すべき問題だという。

また、日本の起業家は自信が欠如しているとApceraのDerek Collison氏はいう。日本人は会話の中で「私にはできないと思う」と発言する人が多いが、シリコンバレーでは自信を持って「それはできる」と出来もしないことですら言う人が多いの出そうだ。才能や技術力に関しては差は無いが、自信を持たないだけで差が出ているのだ。

最後に言及されたのはヒーロー的存在。アメリカではスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツといったヒーロ的存在の起業家が居たり、マーク・ザッカーバーグのように若くして成功した起業家をヒーローのように扱う。しかし日本ではIT起業家が若くしてIPOしても一瞬だけ盛り上がり、その後はすぐに落ち着く印象がある。これはサービスの規模や生活の中でそれに触れる時間なども関係しているのかもしれないが、アメリカのように社会的にIT起業家をヒーロー扱いするようなムード作りは大切だという。

IT起業家の社会的印象と言えば、日本ではまだ親や身内の反感を買うことも多々あるだろう。だが、このような出る杭を打たれるような雰囲気は変えなければシリコンバレーのようにはならない。このセッションの終わりに、500 StartupsのGeorge Kellerman氏は会場に居る起業家を立たせ、「彼らを祝福してください。彼らはリスクを取り、次の世代のビジネスを作っているのです。」と拍手を求めた。次に全員を立たせると「日本だと出る杭は打たれますよね? でも、皆で立てば杭は出ません。皆で日本を変えましょう!」と締めくくった。


新経済サミット2013:起業家に告ぐ「失敗を恐れるな、実行せよ」

新経済サミット2013

本日、東京で開催された新経済サミット2013には数多くのシリコンバレーで活躍するIT起業家が登壇した。この記事ではAirbnbUberoDeskFabといった今急成長しているサービスのCEOが参加したセッションをレポートする。

日本ではまだサービスを提供していないスタートアップもあるが、名前を聞いたことはあるであろうAirbnb、Uber、oDesk、Fabの4社。現在は多くのユーザーを獲得し、成長し続けている。ユーザー数1,000万人、会社設立後4年で評価額10億ドル、7秒に1つは商品が売れるなど、彼らのサービスは2、3年で大きく成長してきた。

このような数字を見ると「彼らは元々才能がある」、「アイデアが良かったから成功した」と思い、自分にはマネできないと感じる方も居るだろう。しかし、彼らの話を聞くと、今でこそここまで大きなサービスに成長したが何度も失敗し、そして何度もチャンレジしたからこそ、今成功している。

例をあげてみよう。Fabの創業者Jason Goldberg氏は何度もスタートアップを立ち上げているが、VCから調達した資金を含め4,000万ドルを失ったこともある。Fabを立ち上げる2011年2月直前までは前年から男性同性愛者向けのサービスを2回リリースし、失敗に終っている。

oDeskのGary Swart氏も7年前にスタートアップを立ち上げた際に義理の父から資金を提供してもらったのだが、返済できずに終ってしまった。UberのTravis Kalanick氏はP2Pのサーチエンジンを開発していたが、著作権など法律に触れ数千億ドルの訴訟を起こされたし、Airbnbに関しては立ち上げ期に上手くいかない時期が続いたが、シリアルを作り、それを売ることで日銭を稼いだこともあるし、サービスは4回リローンチしたそうだ。

彼らはこうした失敗で諦めるのではなく、ここから得られる教訓を基に次に進んでいる。セッションの中で彼らが強調したのは「失敗を恐れずに実行すること」だった。アイデアを思いついても実行に移さないのでは意味がない。それは得られるものが何も無いからだ。

FabのJason Goldberg氏によると良い起業家というのは失敗しても、次は違う視点から見れる。そして、失敗は実行を通さなければ経験できない、とAirbnbのBrian Chesky氏は語った。

さて、彼らはスタートアップし、失敗を経験しているが、失敗と判断する撤退の基準はどこに置いているのだろうか。

UberのTravis Kalanick氏は自分のサービスが世界を変えると信じれなくなり、疑問を持つようになった時が潮時だという。

これに対してFabのJason Goldberg氏は1年以内にサービスが大きくならないのであれば、辞めるべきだと語った。なぜならば、現代はサービスが良ければ自然に広がる環境にある。それにも関わらず、1年が経過しても規模が大きくならないのであれば、それは本当に解決すべき問題ではないのだという。

Airbnbは撤退は考えていなかったようだが、100人が愛せるプロダクトならば100万人でも変わらない。だから、100人が好きだと言ってくれることに集中した。その結果、気に入ってくれたユーザーが他のユーザーを呼び込む好循環が生まれ、成長できたそうだ。

要約すると、抽象的だが「自分とユーザーが心から愛せるプロダクト」でないと判断した時が潮時と言える。そして、逆に言えばこの条件を満たせるのならば、成長する可能性は大いにあると言えるだろう。