Blue Originの有人月面探査船開発オールスターチームが重要なテストに成功

Blue OriginとパートナーであるLockheed Martin(ロッキード・マーティン)、Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)、DraperはNASAの有人月探査船を開発するメンバーに選定されている。Blue Originが主導するこの「オールスターチーム」は2024年までにHLS(Human Landing System )と呼ばれる月面に宇宙飛行士を送り届け地球に帰還させるシステムを開発中だ。

Blue Originはオールスターチームを代表して「宇宙空間および月面で利用されるすべての機器に要求される基準に関するテストに成功した」と発表した(Blue Originリリース)。

これは、数千のアイテムがNASAのチェックリストをクリアした極めて重要なマイルストーンだ。有人月面探査の実現に向けて大きな一歩を踏み出したことになる。NASAはナショナルチームが提案した多数の個別要素について設計、性能基準などを承認しているが、今後はシステム全体のレビューに入る。

ただしBlue Originとそのパートナーはゼロから設計を始めたわけではない。Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が創立した宇宙企業であるBlue Originにとって、この分野で長い経験を持つロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、Draperをパートナーにしたことの利点がここにあるわけだ。この月探査システムは既存システムの進化形であり、ロッキード・マーティンはNASAの再利用可能宇宙船開発であるアルテミス計画に参加しており、Orion計画においても宇宙飛行士を月に往復させるシステムの開発の一端を担っている。

HLSはBlue Originが開発する月着陸船、ロッキード・マーティンによる月面から上昇するためのシステム、ノースロップ・グラマンによる月面着陸の最終段階を制御する軌道遷移システムによって構成される。

関連記事:Blue Origin主導の開発チームが有人月着陸船の原寸大エンジニアリングモックをNASAに納入

カテゴリー:宇宙

タグ:Blue Origin NASA

画像クレジット:Blue Origin

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

NASAが月面の水源探査車VIPERの輸送に民間企業のAstroboticを指名

NASAは、月面探査車のVIPER(バイパー)ローバーを月面に送り届ける企業を選定した。このミッションは、月面のどこにどのようにして人が長期滞在するかを決める手がかりをもたらすものであり、Artemis(アルテミス)計画にとって決定的なステップとなる。現在2023年に予定されている月着陸ミッションでペイロードの輸送を担うのは、民間パートナーのAstrobotic(アストロボティック)であると米国時間6月11日に発表した。

VIPERとは「Volatiles Investigating Polar Exploration Rover」(揮発性物質調査極探査ローバー)の頭文字を取った名称だ。ゴルフカートほどのサイズのロボット車両で、月の南極を氷を求めて走り回る。また、もし存在するならば、地下水も捜索する。これは、2024年までに米国人男性を再び、そして米国人女性を初めて月面に送り込むArtemis計画までの大切な途中段階だ。有用な水源は、長期間持続可能な月面基地の建設にとって重要な役割を果たす。水は、月面の自給式燃料生産施設に必要な材料だからだ。

NASAがこのミッションにAstroboticを選んだのは、意外なことではない。NASAは以前からAstroboticを商業月輸送サービス(CLPS)プログラムの一員として契約していたからだ。同社は、CLPSの最初のミッションとして独自のPeregrine(ペレグリン)着陸船に載せたで科学調査用機材を、ULA(ユナイテッド・ローンチ・ライアンス)の Vulcan(バルカン)ロケットで2021年に月面に運び込む準備を進めている。今回の契約はそれとは別のミッションで、打ち上げウィンドウは2023年に設定されている。

Astroboticは、VIPERミッションにはPeregrineではなくGriffin(グリフィン)着陸船を使用する。GriffinはPeregrineよりもずっと大型の着陸船で、高さはおよそ2mあり、454kgを少し超えるペイロードを搭載できる。目標地点から100m以内に着陸することができ、直径15センチ程度の小さな障害物も検知して避けることが可能だ。

  1. astrobotic-griffin-with-viper-1

    画像クレジット:Astrobotic
  2. astrobotic-griffin-with-viper-2

    画像クレジット:Astrobotic
  3. astrobotic-griffin-with-viper-3

    画像クレジット:Astrobotic
  4. astrobotic-griffin-with-viper

    画像クレジット:Astrobotic

VIPERが完成すると、重量は454kgになるため、Griffinの積載量を最大限に使うことになる。このローバーには水を探すためのセンサーが3基装備されるが、それは2021年と2022年のテストのためのペイロード輸送ミッションで先に月面に送られる。また、月の地面を1mまで掘削できるドリルも搭載される。

Astroboticは、ローバーの打ち上げから着陸までのすべてを担うことになる。だが、Griffinに載せたVIPERを実際に月面に降ろすには、まずは打ち上げを委託する業者と契約しなければならない。どこにするかまだ同社は決めていないが、おそらくULAやSpaceXなど実績のある企業が選ばれることになるだろう。

画像クレジット:NASA Ames/Daniel Rutter

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

中国初の月への有人任務に備えて、4人のボランティアが密閉された実験室で200日間過ごす

中国トップの航空学大学の4人のボランティアが、同国最初の有人探査隊を月に送る準備を整えるため、200日間密閉された実験室内で外部との交流なしで暮らすことになった。人民日報(中国共産党発行の公式新聞の1つ)によれば、同グループはこの任務を、北京航空航天大学(略称:北航大学=Beihang University)内にある160平方メートルの研究室で日曜日に開始した。

中国は米国とロシアに続き、2013年12月に月面への軟着陸を成功させた。現在政府は、今後15〜20年以内に月面に宇宙飛行士を送り込むことを目標として 、有人任務を遂行することができる宇宙船の開発に取り組んでいる

最近承認された米陸軍予算には宇宙戦闘専任の新たな部隊の創設も含まれているが、米国と中国がすぐに宇宙競争を始めるという意味ではない。米空軍は、軍隊の現在の部隊からリソースを奪うと主張して、この提案を阻止しようとしている。

中国は月への熱望は他国との平和的協力の精神の下にあると主張しているが、NASAは安全保障上の懸念から、2011年以降中国側と協力することを議会によって禁止されている。しかし、以前NASA長官であったCharles Bolden元管理官は、有人ミッションを宇宙に送るプログラムのチャンスを米国が逃してしまうのを防ぐため、禁止は一時的なものに止まるべきだと述べた

北航大学の研究室であり、月の宮殿を意味する「月宮一號」(Yegong-1)は、生物生命維持支援システム(BLSS=bioregenerative life support system)の信頼性と、それがそれぞれの乗務員にどのようにどのように影響するかをテストするために5月10日に開始された1年に渡る実験の一部である。

「この種のものとしては世界最長のこの実験は、中長期に渡る宇宙飛行士の安全と生命を保証するために必要なテクノロジーの開発を助けるものです」と同大学は英語サイト上で述べている。なおすべてのボランティアは北航の大学院生たちだ。

月宮一號には、生活空間用と植物栽培用の2つのモジュールがある。言うまでもないが、人間の排泄物はバイオ発酵プロセスで処理される。現在のボランティアは、60日間の任務を終えた別のグループに続くものだ。そして現在のグループが去った後、ボランティアたちの第3陣がやって来て、さらに105日間を過ごす。これにより合計365日間の実験が完了する。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: STR/STRINGER/GETTY IMAGES