バイオメトリック・データのセキュリティを強化するHYPRが300万ドルを調達

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もし自分のアカウントがハッキングされたとしたら、真っ先に頭に浮かぶのはパスワードをリセットすることだろう。セキュリティ設定を強化するかもしれない。そして、そのアカウントやアプリをその後も使い続ける。だが、もしハッカーに指紋や虹彩などのバイオメトリック・データを盗まれたとしたら?指紋や眼球を交換することはできない。

そこで活躍するのがニューヨークを拠点とするHYPR Corpだ。同社が開発するサイバーセキュリティ・システムを利用すればアルファベットと数字が並んだパスワードの代わりに、システムによって保護されたバイオメトリック・データを安全に利用できるようになる。

CEOのGeorge Avetisovによれば、HYPRのシステムではバイオメトリック・データをいくつかの場所に分散して保存し、かつそのデータを暗号化する。これにより、そもそもハッカーがそのデータを解読することは困難なだけでなく、データを盗むためには複数のデータベースを1つずつ攻略していく必要がある。

HYPRでは、ユーザーの指紋や顔の特徴などのバイオメトリック・データはユーザーのモバイル端末に少なくとも一時的に保存される。データはHYPRによって暗号化され、その後はそのバイオメトリック・データを直接利用する必要がなくなる。

銀行アプリで送金手続きを完了するためにユーザーの虹彩データが必要だとしよう。その場合、HYPRは銀行に対してその手続きの間でのみ有効なユーザーの身元証明用のトークンを発行する。そのため、銀行が顧客の虹彩を直接スキャンする必要はない。

「トークン化」と呼ばれるこのプロセスは、マイクロチップを搭載したクレジットカードでも利用されている。これが磁気テープ型よりもマイクロチップ型のクレジットカードの方が安全性が高いとされる理由だ。

HYPRはシードラウンドにて300万ドルを調達したことを発表した。早い段階からHYPRの顧客となった金融分野の企業だけでなく、今後はそれ以外の業界にも進出していく。

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HYPRの共同創業者の2人。CEOのGeorge Avetisovと、CTOのBojan Simic。

 

金融業界だけでなく、自動車業界や家電業界からの需用もあると語るのはCEOのAvetisovだ。

「パンをトーストで焼くためにパスワードを入力する必要があるとしたら、誰もそれを使いたがりません。また、ハッキングされる恐れのあるPINを使って家や車のドアを開けるのは得策ではありません」と彼は話す。「私たちの生活にIoTが浸透していく今、私たちはメーカーと共同して銀行のアプリと同じような安全性をすべてのデバイスに持たせたいと思っています」。

今回のシードラウンドにはRTP VenturesBoldstart VenturesMesh Venturesなどが参加している。

RTP VenturesのManaging DirectorであるKirill Sheynkmanは、かつてPlumtree SoftwareのCEOを務めたこともある人物だ。彼によれば、HYPRは今回調達した資金を利用してチームの強化を図るだけでなく、金融、生命保険、そしてIoT分野の企業との提携を模索していく予定だ。

「今の時代では、マーケティング、セールス、事業開発へのフォーカスを業界横断的に行っていく必要があると思っています」とSheynkmanは語る。

RTP VenturesがHYPRへの出資を決断した理由の1つとして、HYPRのプロダクトが今の時代に求められているものだからだとSheykmanは話す。サイバーセキュリティという分野でバイオメトリック・データが主流になりつつあるなか、HYPRはすでにこの分野で顧客を獲得しているだけでなく、しっかりとしたプロダクトをマーケットに送り出していると彼は主張している。

私たちのオフィスのドアに顔認証システムが導入されるのはまだまだ先だと思うが、iPhoneやGoogle Pixelには指紋認証システムがすでに導入されている。また、無数の銀行アプリにはユーザー認証に音声認識の技術が使われている(声紋認証システムとも言われる)。

Juniper Researchの推測によれば、バイオメトリック認証を利用するアプリのダウンロード数は2019年までに7億7000万回を超えるという。これは昨年の600万回という数字に比べ、約130倍だ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter