障害物回避ロボットのRealtime Roboticsに三菱電やオムロンが12億円超を投資

ロボットテクノロジーの開発で最も困難な課題のひとつは、ダイナミックな環境で動作するロボットが人間や他の障害物に衝突するのを防止することだ。ロボットは予期せぬ障害物を検知し、それらを避けて移動する経路を発見しなければならない。

ボストンに本拠を置くスタートアップ、Realtime Roboticsはこの問題の解決に当てるためにシリーズAのラウンドで1170万ドル【約12億7200万円)の資金を調達したことを発表した。

SPARX Asset Managementがラウンドをリードし、三菱電機、現代自動車(ヒュンダイ)、オムロン・ベンチャーズなどの企業が戦略的投資を実施した。トヨタ自動車グループのToyota AI Venturesをはじめ、Scrum Ventures、Duke Angel Networkなどが既存投資家だ。米国時間10月15日には、今年に入ってから実施された数回の総投資額が1290万ドル(約14億円)と発表された。

Realtime RoboticsのCEOであるピーター・ハワード氏はTechchCrunchに対し、同社のソリューションは高度なロボティクス・テクノロジーを利用しているとして次のように述べた。

我々のソリューションは2016年にデューク大学でロボティックモーションプランニングと呼ばれるプロジェクトで開発されたテクノロジーをベースとしている。これは6ないし7自由度を持つロボットが障害物を避けながら空間を移動する方法を発見するテクノロジーだ。

それ自身としても難しい課題だが、人間の作業者や他のロボットなどが付近で動きまわるダイナミックな環境では解くのがことに困難となる。これは障害物いつどこに割り込んでくるか予測できず、従ってロボットがどのように行動すべきか事前に決定できないからだ。Realtime Roboticsはこれに対してRapidPlanとRapidSenseという2つのテクノロジーによる解決を図っている。同社ではこのダイナミックな衝突防止テクノロジーにより「複数のロボットを同一の作業区域内で協調動作させることが可能となる。これには高価なセーフティーシステムや時間のかかる複雑な事前のプログラミングを必要としない」という。このソリューションには同社独自のハードウェアとソフトウェアが用いられてロボットを安全に動作させる。

開発はまだ初期段階にあり、13社の顧客と共同でコンセプトの有効性を実証する作業が進められている。最終的には現在の顧客がOEMとして同社のプロダクトを製造販売できるようになることが最終目標だ。ハワードCEO氏によれば、有力ロボティクス企業と同時に自動運転車を開発している自動車メーカーとも協力しているという。自動運転の実現には有効な衝突回避テクノロジーが欠かせない。実際、トヨタが最初期からの投資家であり、今回のラウンドには韓国の現代自動車も加わっている。

「衝突回避テクノロジーは農業、食品製造、土木建設など他の産業分野でも有効だ。人間が自身の身体能力を使って仕事をしている分野ならどこでもわれわれのテクノロジーが利用できる。(この種のテクノロジーにとって市場への)参入の機はかなり熟している」とハワード氏はビジョンを述べた。

【Japan編集部追記】Realtime RoboticsはScrum Connect 2018に参加し、ハワードCEOが来日して講演、デモを行っている。TechCrunch Japanでも詳しいレポートを掲載している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ドローン用衝突回避システムのIris Automationが150万ドルを調達

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産業用ドローンが本当の意味で自律飛行するのに必要な、障害物を”感知・回避”するテクノロジーを開発しているIris Automation Inc.は、この度150万ドルを調達したと発表した。

障害物を発見し、それを避けながら高速で動く機体を正確に操縦するというのは、人間のパイロットにとっても至難の業だ。しかしIrisが開発中のテクノロジーは、ドローンに取り付けられたカメラからの情報をリアルタイムで分析し、機体の動きを変えられるようになっている。「私たちは人間のパイロットのような視認・意思決定プロセスをソフトウェアで再現しようとしています」とIris Automation CEO兼共同ファウンダーのAlexander Harmsenは話す。

Y Combinatorの卒業生であるIris Automation以外にも、人工視覚システムを使ってドローンや(将来的には)他のロボットや車を自律化させるような技術を開発している企業は存在する。Irisが現在開発中のドローン用のシステムの競合としては、SRIからスピンアウトしたArea 17(別名a17)、Intel RealSense Technology、ParrtのSLAMdunkシステムそしてDJIのGuidanceシステムなどが挙げられる。

Harmsenによれば、衝突回避システムを自社で開発するだけの専門性をもっていないようなドローンメーカーをIrisは顧客として想定している。同社でR&Dディレクターを務めるAlejandro Galindoは、フランスのINRIA Labsでコンピュタービジョンの博士号を取得しており、初期からIrisで働く他の社員もメカトロニクスやファームウェア工学、センサーフュージョンなどの分野に明るい。

産業用ドローンに特別な衝突回避システムが必要だとIrisのチームが考えている理由は、消費者向けドローンと比較したときの使われ方にある。産業用ドローンは長距離を行き来し、地図には現れないような空中に飛び出したインフラをカメラで捉えなければならない。しかもそのようなインフラは、構造的な理由や天候の影響を受け、毎時間とはいわずとも日々変化する可能性がある。一方コンシューマーや”プロシューマー”向けのドローンであれば、普通はもっと短い距離を飛行し、空中写真や卒業式・結婚式の映像を撮影するのに使われるくらいだ。

Bee Partnersがリードインベスターとなった今回のラウンドには、Social CapitalGGV CapitalLiquid 2、Kevin Moore、Pau Bucheitらが参加していた。サンフランシスコに拠点を置くBee Partnerでプリンシパルを務めるGarret Goldbergは、Iris Automationを、一般に普及する前のエアバッグやシートベルトを製造していたメーカーに例える。

また彼は、長期的にはIrisのテクノロジーがドローン以外にも応用されるようになると話す。「車であろうがドローンや船であろうが、状況把握はとても重要なポイントです。万能なセンサーであるカメラとコンピュータビジョン、機械学習を組み合わせることで、システムも人間のように世界を見ることができるようになるでしょう」

Irisは今回の調達資金を使って、現在ベータ段階にあるソフトウェアベースの感知・回避テクノロジーを、商業化させたいと考えている。具体的な計画のひとつとして、同社で成長戦略・パートナーシップ部門のトップを務めるHassan W. Bhattiのもと、アーリーアダプター向けのプログラムが始まる予定だ。その後Irisは、アーリーアダプターに同社のシステムを、現実世界とシミュレーションの両方で出来る限りたくさん利用してもらおうとしている。

「システムのローンチ、スケールにあたっては、できるだけ長い時間システムを使ってドローンを飛ばし、フォールスポジティブやフォールスネガティブがないか調べ、規制機関や保険会社と話し合いながら、エンドクライアントと協力していくことが肝心だと考えています」とHarmsenは語る。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter