ほとんどの人はテレビを買ったあと設定をいちいち調整したりしない。
一方、最近のほとんどのテレビは、山ほどの余計な機能がデフォルトでオンになっている。壮大な名作映画をメロドラマのように変えてしまう「モーション・スムージング」や、ディテールを消して俳優の肌をサイボーグっぽくする「ノイズリダクション」などだ。これらは、店頭に置かれたテレビが人目を引きやすくする効果がある。デモビデオに出てくる蝶の羽がやたらスムーズに動くところを見てほしい。
映画製作者や番組クリエイターたちは概してこの手の処理が嫌いだ。何百時間もかけてフレーム単位で微調整したディテールを機械的にぶち壊してしまうからだ。しかし、ややこしい項目名(ブランディングのせいでメーカーごとに違うことも多い)に隠れた山ほどの設定を理解して、何十回もボタンを押すことを視聴者に強いるのは困難だ。
それが「フィルムメーカーモード」が作られた原動力だ。ワンボタンでいまいましい設定が全部オフになる。
これは、ドルビー、パナソニック、サムスン、ユニバーサル、ワーナー・ブラザースなど大企業40社からなるUHDアライアンスによる取組みで、マーティン・スコセッシ氏、パティ・ジェンキンス氏、ライアン・クーグラー氏、ライアン・ジョンソン氏、クリストファー・ノーラン氏などの著名な映画関係者の意見を取り入れたものだと言っている。
フィルムメーカーモードをオンにするとテレビ受像機は、
- モーション・スムージング効果をすべてオフにする
- ノイズリダクション、シャープニング、その他あらゆる事後処理効果をオフにする
- 自動的にメディアが意図したアスペクト比、フレームレートで表示する
- オーバースキャンをオフにする(ビデオが必要としている時を除く)
- ホワイトポイントを広く使用されているD65標準光源に設定する
The Digital Bitsによると、モードのオン/オフは2つの方法で行われる。リモコンのボタンを押す、あるいはビデオのメタデータで指定されていた時自動的に。スポーツ中継でモーション・スムージングをオンにしたい時は、ボタンを押せば元に戻る。
LG、パナソニック、Vizio(ヴィジオ)の3社はこの新モードを実装することを約束しており、このモードの噂が広まれば、他社も追随すると私は思っている。新しいテレビだけが対象のようで、旧機種にソフトウェアアップデートで適用されるという話は聞いていない。さいわい、ほとんどの設定はいつでも手動でオフにできる。
何時間もかけてテレビの設定をいじったり、ネットのAVフォーラムで情報を探したりしててお気に入りの設定を見つけた人は大変結構。そのままでいい。しかし、何年か後に友達の家で指輪物語を見ていて、TruDynamicNoiseMasterPlus 4.0などの余計な機能のせいでギムリの肌が異様になめらかなことに耐えられなくなったら、友達にフィルムメーカーモードを教えてあげるといいかもしれない。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )