資生堂は11月29日、太陽光線による皮膚の老化現象「光老化」などの影響で肌がくすみやすくなるメカニズムの一端を解明したことを発表した。光老化は、太陽光に含まれる紫外線によって生じる「シミ・シワ」などの肌の老化現象を指し、肌老化の主要な原因とされる。
これにより、遺伝子「TIPARP」が光老化によりメチル化(遺伝子情報が読み出せなくなる現象)され、肌のくすみを抑制する情報が正常に伝達されなくなることが明らかになった。また、深海に棲息する微生物由来の抽出物がTIPARP遺伝子の発現を促進し、DNAのメチル化を防ぐこともわかった。
TIPARPは抗酸化因子のひとつで、黄ぐすみやメラニンの生成を防ぐ作用があるなど、肌の明るさに関連している。だが、一度メラニン化した遺伝子は元に戻らず、それ以外の遺伝子も使われていないとメラニン化してしまう。そこでTIPARPの発現を高めれば、常に使われている状態を保つことができ、「くすみにくい肌」を維持できる。
資生堂では、肌の光老化に関して広範囲な遺伝子の研究を行ってきた。2006年には、「DNAマイクロアレイ法」という手法を用いて、非露光部・露光部・シミ部位の肌の3万個の遺伝子情報を独自に取得し、それぞれの部位の遺伝子発現の違いを明らかにしている。その後も研究を進めて蓄積された知見と、公共のビッグデータを融合させた膨大なデータを解析することで、「より本質的かつ正確に」光老化の肌への影響を調査し、今回の結果に至った。
さらに、TIPARP遺伝子の発現を促す薬剤の探索も行い、深海に生息する微生物由来の抽出液が有効であることも突き止めた。この抽出液を配合した基剤を使うことで、肌の黄ぐすみを減少させることができた。
この研究により資生堂は「これまでに浴びてきた紫外線量に関わらず、くすみをケアする新たなアプローチを見出すことに成功」したと話す。TIPARPの発現を高めることで、後天的に衰えた肌のくすみ改善機能を正常な状態に近づけることができるとのことだ。