中国の配車サービス大手Didi Chuxingは、ヨーロッパ企業への初めての投資から1週間も経たないうちに、さらに勢力を拡大すべく、中東でUberと競合関係にあるユニコーン企業Careemへの出資を発表した。なお具体的な出資額は明らかになっていない。
そう、Didiはまた新たな市場でUberのライバルへの出資を決めたのだ。
今月に入ってから同社は、ヨーロッパ・アフリカでUberと競合関係にあるTaxifyへ投資しており、その他にもアメリカではLyft、インドではOla、南米では99、東南アジアではGrabの株主を務めている。さらに昨年中国事業を買い取ったときの契約にもとづき、DidiはUberの株式も保有している。
世界中のいかなる配車サービスにも投資しようという彼らの戦略には納得がいく。将来的に投資先とパートナーシップを結んだり、買収したりしやすくなるだけでなく、Didi(Uberに続きテック企業としては世界第2位の評価額を誇る)は影響力を世界中に広げることでUberにプレッシャーをかけられるのだ。また、これまで中国で4億人ものユーザーを相手にする中で構築してきた専門性やシステムを活用し、Didiは世界中の投資先企業に資金面以外の手助けをすることもできる。
つまり「敵の敵は味方」ということだ。
「私たちが次の段階へと成長しようとする中、Didi Chuxingが最先端のAIテクノロジーや業界の洞察、ノウハウと共に私たちのことをサポートしてくれることになる」とCareem CEOのMudassir Sheikhaは声明の中で語った。「これまでにも長い付き合いのあったDidiとの関係深化によって、Careemはイノベーションと持続可能性を意識しながら、より効率的に成長のチャンスを掴めるようになるだろう」
5年前にドバイで設立された当時のCareemは、Uberの競合としては取るに足らないような存在だったが、そこから強固なビジネスを構築し、今年の6月には自動車大手のダイムラーらから12億ドルの評価額で5億ドルを調達した(2016年12月に同ラウンドの一部の調達を終えたときの評価額は10億ドルだった)。これまでの累計調達額は5億7000万ドル弱におよび、先述の企業以外にも楽天やSaudi Telecom Comapny(STC)などが株主に名を連ねている。
Careemは現在中東・北アフリカ地域の13か国80都市で営業しており、登録ユーザー数は1200万人、ドライバー数は25万人強にのぼると言われている。さらに同社はDidiファミリーの兄のような役割まで担っており、7月にはエジプトのSwvlへ出資した(出資額は不明)。
このSwvlへの投資を受けて、Didiは「世界中に広がるコラボレーションの輪が」今では1000都市に広がり、世界の人口の60%をカバーしていると話していた。昨年中国でUberを撤退に追いやったことを考えると、Didiが次にどんな野望を抱いているかは容易に想像できる。
ここでもし、Didiと並んで世界中の配車サービス企業の株式を取得しているソフトバンクがUberに出資するとなると、話は少しややこしくなってくる。先日の報道を受け、昨日ソフトバンクCEOの孫正義氏はUberの株式取得に興味を持っていると認めたが、同時にLyftへの出資も検討していると語った。
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(翻訳:Atsushi Yukutake)