空飛ぶタクシー事業目指すJoby Aviationはトヨタ主導で650億円を調達

Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)は、シリーズC投資で5億9000万ドル(約650億円)を獲得し、そのうち3億9400万ドル(約433億円)が、この投資を主導したトヨタ自動車からのものであることを、米国時間1月15日に発表した。同社は、自社開発の電動垂直離着陸航空機(eVTOL)を使用した空飛ぶ電動タクシーの運用準備段階にある。そこでは、戦略パートナーであるトヨタの自動車製造の経験が一部生かされている。

今回の投資により、Joby Aviationが受けた投資総額は7億2000万ドル(約792億円)となった。投資に参加した企業には、 Intel Capital、JetBlue Technology Ventures、Toyota AI Venturesのほか、数多くが名を連ねる。この新たな投資に伴い、Jobyの取締役会い新しいメンバーが加わった。トヨタ自動車執行副社長の友山茂樹氏だ。

2009年に設立されたJoby Aviationは、米国カリフォルニア州サンタクルーズに本社を構える。創設者はJoeBen Bevirt(ジョーベン・ベバート)氏。彼はカメラとエレクトロニクスの一般消費者向けアクセサリーのメーカーであるJobyの創設者でもある。同社が独自開発した乗用eVTOLは、時速約320km、1回の充電で約240km飛行できる。電気駆動のマルチローターという構造のため、Joby Aviationによれば「従来の航空機に比べて離着陸時の騒音は100分の1で、飛行中はほぼ無音」とのこと。

そうした利点により、eVTOLは都市部の航空輸送ネットワーク開発における第1候補とされており、Jobyの他にも、中国のEHangやAirbusなど、数多くの企業が都市部での人や物の短距離輸送に使える同タイプの航空機の開発を進めている。

今回のラウンドでのトヨタによる巨額の投資には、同社が将来の航空輸送にかける思いの強さが表れている。この投資の詳細を記した広報資料で、トヨタの社長兼CEOの豊田章男氏は、同社がeVTOLと航空輸送全般に真剣に取り組んでいることを示唆している。

「航空輸送はトヨタの長年の目標であり、自動車産業で事業を続けつつ、今回の契約により私たちの空へ展望を固めることができました」と豊田氏は述べている。「私たちは、成長著しいeVTOL分野のイノベーターであるJoby Aviationとともに航空輸送への挑戦に乗り出し、未来の交通と生活に革命を引き起こす可能性を引き出します。この新しく胸躍る試みを通して、移動の自由と喜びを世界中の土地の、そしてこれからは空のお客様にお届けしたく存じます」。

Joby Aviationは、短距離飛行での従来型ヘリコプターと比較して相当な費用便益を実現できると信じている。最終的には、利用率を最大化し燃料を削減することで、「誰にでも利用できる」レベルにまでコストを下げたいと考えている。現在、Jobyは、その航空機の縮小スケール版でのテストを完了し、製品版試作機による本格飛行テストに入ったところだ。2018年末には、米国連邦航空局(FAA)による航空機の承認のための手続きを始めている。

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(翻訳:金井哲夫)

電動垂直離着陸機による地域航空サービスが意外にも実現される理由

今月初めにワシントンDCで開催されたUberのElevateサミットには、オンデマンド航空サービスの到来が近づいたことを讃えようと、研究者、業界のリーダー、エンジニアたちが集結した。デトロイトのAirspace Experience Technologies(ASX)の共同創設者にして最高製品責任者のAnita Sengupta博士にとってそれは、電動垂直離着陸機(eVTOL)を実用化する同社独特のアプローチが、ビジネスとして成り立つことを証明する実りあるイベントだった。

ASXのeVTOLは、ティルトウィング方式だ。この分野のイカしたコンセプト航空機によく見られるティルトローター方式とは明確に異なる。それそれの方式の名称から察しが付くだろうが、ティルトウィングは、翼全体が角度を変えるものだ。それに対して、ティルトローターは、翼構造は固定されたままでローターの角度だけが変化する。

Sengupta博士によると、ASXがティルトウィングを採用したのは、素早く市場に送り込めて、現行の規制や飛行機操縦免許の枠組みと互換性があるため有利だからだ。それだからこそ、ASXは貨物輸送サービスをいち早く顧客に提供できる。人の輸送は、規制当局と一般社会が問題ないと認めた時点で開始される。

ASX創設者の2人。Jon Rimanelli氏とAnita Sengupta博士(写真提供:ASX)

「採用する航空機の構造によって、例えば私たちが選択した固定翼機の場合、回転翼機には区分されません。私たちの飛行機は、多発固定翼機となります。おわかりのとおり、垂直離着陸機能のための特別な認可が追加されるだけです。もちろん、パイロットには特別な審査がありますが、ヘリコプターではなく、固定翼機のパイロットが操縦することになります」とSengupta博士は説明してくれた。

ASXの飛行機は、狭い場所では垂直に離陸でき、広い場所では、私たちが日常利用している昔ながらの飛行機と同じように、短距離を滑走して離陸することもできる。これは、従来式の操縦訓練と経験を積んだパイロットにとって操縦しやすい飛行機であるだけでなく、既存のインフラに比較的簡単に適応できることを意味する。米国全国にすでに点在しながら、あまり利用されていない地方空港を活用できるのだ。

「趣味で飛行機を操縦する人でなければ、全国くまなくゼネラルアビエーション空港(民間向け多目的空港)があることを知らないでしょう。そこは、私たちのような(Sengupta博士もパイロットだ)趣味で飛行機を飛ばしている人間がよく利用しているだけで、ほとんど使われていないのです」と彼女は言う。

「私たちの地元にあるデトロイトシティーエアポートなどは、1日に発着する飛行機が3機だけなんていうときもあります。そこは、行政の資金で建設され、行政の経費で運営しているのですが、活用されていません。それを、新しいUAM(Urban Air Mobility、都市型航空交通システム)のためのスペースとして使うのです。人にとっても貨物にとっても、それはとても良いことです。新しい交通システムのいちばんの障壁になるのが、インフラのコストですからね」

ASXは、実際に飛行機を飛ばすのも早かった。それが、商業化への独自路線を整える助けになっている。同社は、デモンストレーションとテスト用に6機の縮小モデルを製作した。実際の製品版の5分の1サイズのものが5機と、3分の1サイズのものが1機だ。これらの試験機を使えば、あらゆる飛行モードのデモンストレーションが、デトロイトシティーエアポートの管制塔から楽に目視でき、モニターできる。

「小さな会社で資金繰りが本当に厳しいときは、縮小モデルを使えば、改良を重ねたり、プロトタイピングしたり、飛ばし方を研究するといった仕事が数多く行えます」とSengupta博士は私に話してくれた。

「ソフトウェアの観点からすると、ある程度の完成を見るまで、つまり満足のいく設定ができるまで、フルサイズの実機を作る必要はありません。そのため、次の投資(昨年は1億円を少し超える資金を調達している)が得られたら、実際の大きさのものを作る予定です」。

Sengupta博士とASXの大きな目標は、地域電動航空機の経済性を変えることで、効率的な空の旅の時代を引き寄せる手助けになることだ。それは、ともにeVTOLによる物流市場の可能性を探る新たな覚書にサインしたグローバル運送サービス企業であるTPS Logisticsを含む、投資家も業界のパートナーたちも惹きつけることになる。

「現在、空港は大変に混み合っています。このままでは混雑は増す一方で、業務用の駐機場や滑走路を造設しなければならず、それには大変な費用がかかります。ゼネラルアビエーション空港を地域航空交通の要にできれば、民間空港にそれらを建設する必要がなくなり、さまざまな問題が一気に解決します」とSengupta博士は話す。

「例えば300マイル(約480km)の距離を飛行する場合、まずはハイブリッド方式を使うことになるでしょう。エネルギー密度がまだそこまで高くないからです。しかし、完全に燃料で飛ぶよりはましです。

そして理想を言えば(中略)水素燃料電池が、地域飛行に必要なエネルギーを供給してくれる本命です。そのため、まずは都市部でのごく短い距離で電動飛行機の使用事例を作り、それをもとに、地域航空用の完全な電動飛行機を開発するよう業界に圧力をかけるのです」

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(翻訳:金井哲夫)