問題があると見做される商品のみを扱う「リスクの高い顧客」に特化した本人認証プラットフォーム「A.ID」

リスクの高い顧客向けに特化したアイデンティティとコンプライアンスのプラットフォームを提供するA.IDは、RobinHood(ロビンフッド)、Square(スクエア)、Snap(スナップ)の元従業員を含むエンジェル投資家から50万ドル(約5500万円)の資金を調達したプレシード投資ラウンドを終了した。

このスタートアップ企業は、従来のフィンテック企業や銀行が対応できない市場、すなわち、問題があると見做される商品のみを扱っている「リスクの高い」顧客の増加に対応しているという。例えば、合法的な大麻産業は毎年67%、暗号資産は46%以上の成長を遂げている。その一方で、銀行口座を持たない人や持てない人の数は日々増加しているが、既存の金融機関はこれらの爆発的な市場に応えられていないように思われる。

A.IDは、金融とコンシューマーテック製品の両方で起業した経験を持ち、これが3度目の起業となるEkaterina Romanovskaya(エカテリーナ・ロマノフスカヤ)氏と、欧州でコンプライアンス・プロダクトを立ち上げた経験を持つ(Justinas Kaminskasジャスティナス・カミンスカス)氏によって設立されたB2B2Cプラットフォームだ。

ロマノフスカヤ氏は次のように述べている。「私たちの最終目標は、信頼を築くことです。エンドユーザーは企業を信頼して個人の機密データを託し、企業はユーザーが違法な行為をしないことを信頼します。私たちはこのような信頼が不可欠であると固く信じており、あらゆる場所で強く待ち望まれていると考えています」。

A.IDによれば、同社のソリューションを利用するクライアントは、顧客の身元確認とオンボーディング、標準的および強化されたデューデリジェンスの実行、ウォッチリストに対する個人や企業のスクリーニング、支払いの監視、コンプライアンスケースの作成と解決、疑わしい活動の規制当局への報告などを行うことができるという。同社のクライアントは、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を介して統合することもできるし、ウェブアプリケーションとして利用したり、SDKを使用したりすることも可能だ。

現在までに、新興産業向けのデジタルバンクであるArival(アライヴァル)や、クリエイター向けのソーシャルネットワークであるClos(クロス)などがユーザー認証に採用している。

「私は2017年に米国に永住しました。しかし、VCから適切な注目を集めるのに苦労しました。私は女性の創業者であること、移民の創業者であること、技術的な専門知識を持たない創業者であることなど、ベンチャー投資家に不人気ないくつかのカテゴリーに同時に当てはまりました。私が自力で起業した会社は、新型コロナウイルスの影響を受けて倒産するまで有機的に成長しました。私は2020年のロックダウン時を利用してデータサイエンスを勉強し、コードを学び、データエンジニアになりました。そして2020年9月にA.IDを設立しました」と、ロマノフスカヤ氏はTechCrunchに語った。

ロマノフスカヤ氏は、Twitter(ツイッター)でクレムリンを批判する風刺的な政治アカウントを共同設立し、ピーク時には200万人のフォロワーを獲得したことで、ロシアではTwitter有名人となった。2016年には、女性向けにパニックボタンを内蔵したファッショナブルなスマートリング「Nimb(ニム)」で知られる企業を共同設立している。

A.IDの本社は米国カリフォルニア州ロサンゼルスにある。欧州支社はリトアニアにオフィスを構え、EUで事業を行っている。

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画像クレジット:A-id.co

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)