京葉銀行がAI inside開発のAI OCRサービス「DX Suite」を導入、住宅ローン事前審査業務からDX化

AI insideは3月12日、千葉県内を主な営業地域とする京葉銀行にAI-OCRサービス「DX Suite」を提供することを明らかにした。同社と特約店契約を結んでいるエヌ・ティ・ティ・データ・ビジネスブレインズ経由での導入となる。

京葉銀行では、2018年7月からロボットによる作業の自動化、いわゆるRPA(Robotic Process Automation)を導入したが、申込書などの手書き書類をデータ化する業務に時間を要するという問題があったという。この問題を解決するためDX Suiteを導入を決めたそうだ。まずは、手書きの申込書である住宅ローン事前審査の業務において、年間約5300時間の業務時間削減を目指す。

DX Suiteは、漢字第一、第二水準にひらがな、カタカナを加えた約6300文字を平均99.91%の認識率で読み取れるのが特徴。この認識率の高さを支えているのが、同社が研究開発を進めてきた「推論アルゴリズム」「学習アルゴリズム」「データ生成アルゴリズム」という3つのアルゴリズムだ。現在、約400社の法人ユーザーが実際に利用しており、金融機関やクレジットカード会社、通信会社、印刷会社など幅広い業種で導入されている。

同社は昨年12月25日に東証マザーズ市場に上場。当日は売り買いのバランスがとれずに値付かなったが、翌26日には公開価格3600円のところ終値は1万4900円と高騰するなど、スタートアップのIPOとしては久しぶりに大幅な値動きを見せた。新型コロナウイルスの影響で日経平均株価の値下がりが続いている中、2020年3月12日10時15分現在の株価は2万円前後で推移している。

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文字認識(光学式文字読み取り)のAIを開発しているAI insideは12月25日、東証マザーズ市場に上場した。主幹事証券会社は野村証券で、発行済み354万株、公募30万株、売り出し20万株、オーバーアロットメント7万5000株。オーバーアロットメントとは、当初の募集・売出予定株数を超える需要があった場合に実施される株式の販売方法。主幹事証券会社が対象会社の株主から一時的に株式を借り、売出予定株数を超える株式を、募集・売出しと同じ条件で追加販売すること。

同社株の公開価格3600円。売り買いのバランスが取れずに上場日の12月25日には値が付かなかったが、12月26日の10時37分ごろに公開価格より9000円高い1万2600円を付けた。12月26日10時50分時点の最高値は10時49分に付けた1万4600円で、時価総額は492億7700万円。現在、株価は1万4300円前後で推移している。スタートアップのIPOとしては久しぶりの大幅な値上がりだ。なお上場によって調達した資金は、サーバー購入費、サーバー維持関連費のほか、人材採用などに使われる予定だ。

AI insideは、2015年8月設立のスタートアップ。手書き文字認識率99.91%のAI-OCRのサービス「DX Suite」を提供しており、アクティブな法人ユーザーは400社。金融機関やクレジットカード会社、通信会社、印刷会社など幅広い業種で導入されている。

同社の主な既存株主の比率は、AI insideの代表取締役社長でCEOの渡久地択氏が56.77%、アクサ生命保険が7.10%、東京大学エッジキャピタル(UTEC4号投資事業有限責任組合)が6.27%、レオパレス21が5.68%、AI inside取締役会長の中沖勝明氏が4.20%、日本郵政キャピタルが4.17%。

直近の業績は、2019年3月を決算期とする2018年度(2017年4月〜2018年3月)は、売上高2億7900万円、営業損失3億1100万円、経常損失3億1100万円 、当期純損失は3億4000万円。2019年度(2018年4月〜2019年3月)は、売上高4億4500万円、営業損失1億8100万円、経常損失1億8200万円 、当期純損失は1億8300万円。2020年度(2019年4月〜2020年3月)の予想は、売上高13億3500万円、営業利益2億1100万円、経常利益1億9300万円、当時純利益1億7500万円。

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AIを活用したOCRツールによって書類のデータ化の効率をあげるAI inside。同社は8月3日、東京大学エッジキャピタル、日本郵政キャピタル、三菱UFJキャピタルを引受先とした第三者割当増資により総額約5.3億円を調達したことを明らかにした。

今回調達した資金を基に組織体制を強化し、コアとなるテクノロジーの研究開発を進めるほか、OCRサービス以外のAIを活用したプロダクトも含め事業拡大を目指していくという。

金融法人など約120社が使うAI OCRサービス

AI insideは設立当初から文字認識のAIの開発に着手し、手書き帳票のAI OCRサービスを展開してきた。2017年リリースの「DX Suite」では、高精度かつセキュアに書類のデータ化を遂行する3つのアプリケーションを提供。これによって企業がこれまで手作業で行なっていた紙業務の大幅な効率化を支援している。

7月末時点で銀行や保険会社などの金融法人を中心に、大日本印刷やパソナ、レオパレス21など121社がアクティブユーザーとしてDX Suiteを活用。AI inside代表取締役社長CEOの渡久地択氏の話では、この半年ほどでユーザー企業数が約6倍に増えたそうだ。

利用シーンの一例をあげると金融機関での住宅ローンや口座振替依頼書のほか、注文書を含む申込書系の書類のデータ化など。従来3人でやっていた業務にDX Suiteを取り入れることで2人体制でカバーできるようになった、といったものが典型的な効果だが、一部導入企業では受発注業務を完全にオートメーションしている例もある。

渡久地氏によるとDX Suiteの特徴は軸となる文字認識AIの精度と、実際に業務に組み込む際の使い勝手の良さにあるという。

同社の文字認識AIでは漢字第一、第二水準にひらがな、カタカナを加えた約6300文字を平均99.91%の認識率で読み取る。この認識率の高さを支えているのが、同社が研究開発を進めてきた「推論アルゴリズム」「学習アルゴリズム」「データ生成アルゴリズム」という3つのアルゴリズムだ。

推論アルゴリズムにおいては通常の文字認識技術と言われるようなゾーンだけでなく、一般物体認識や音声認識で使われるアルゴリズムを応用。たとえば「自動運転でどこに人がいるのかを見分ける技術」を用いて「帳票のどこに文字が書いているか」を認識したり、長文を読み取る際に音声認識のアルゴリズムを活用したりしているのだという。

渡久地氏がポイントにあげるのが「教師データ自体をAIが作り出すデータ生成アルゴリズム」だ。普通にやっていては手書きの学習データを集めるのが大変だが、AI insideでは手書き風の画像をAIが生成する仕組みを構築。これによって膨大な教師データを用意することができ、高い文字認識率の実現にも繋がった。

これらの技術によって単に手書き文字を読めるというだけでなく、本来は読み取る必要がない文字や点線を対象外にするなど、ちょっとした機転が利くのもDX Suiteのウリだ。

業務フローに取り入れやすい仕組みを構築

また渡久地氏が「業務フローに取り入れることができなければ、実際に使ってもらえない」と話すように、DX Suiteでは認識率以外の点にもこだわっている。

OCRサービスでは誰でも使えるように、クリックだけでOCRの設定からワークフローの設定までが完結。読み取ったデータのチェックもボタンひとつでサクサク進む。

業務で使うことを考えると欠かせないセキュリティについても、すでに3つの技術特許を取得(同社では文字認識技術など現在6つの特許を取得済み)。大手金融機関が導入を検討する際にはここがひとつのポイントになるそうだ。

合わせて複数種類の帳票がある場合に、ごちゃ混ぜの状態でスキャンしても機械的に仕分けてくれるツールや、アクセス権限を管理できるツールも開発。これらを従量課金制で月額10万円から利用できるクラウド版、金融法人の導入が多いセキュリティ面に強みを持つハイブリッド版、オンプレミス版という複数の方式で提供している。

OCRツールを軸にAIで企業の課題解決を

AI insideは2015年8月の設立。代表の渡久地氏は過去にグルメサイトの売却経験や事業譲渡の経験を持つ起業家。AIにはかつてから関心を持っていたそうで、10年以上に渡って継続的に研究開発に取り組んできたという。

「生産年齢人口が今後減っていく中で、AIを活用することによって生産性を向上できる領域、特に社会に大きなインパクトをもたらす領域について検討した結果、文字認識という所に行き当たった。OCRツール自体はずっと前からあるものだが、精度や業務フローとの兼ね合いがネックになり、なかなか導入が進んでこなかった領域。規模問わず困っている企業も多く、効率化できれば嬉しい部分でもある」(渡久地氏)

AI insideにとってVCから本格的に資金調達をするのは今回が初めてとなるが、これまでもアクサ生命保険や第一生命保険、大日本印刷、レオパレス21などと資本業務提携を締結。大日本印刷とはBPO分野へのAIの導入、レオパレス21とはAI活用の賃料査定システムの開発など、OCRツールを皮切りにその他の分野でもAIを用いた取り組みを強化してきた。

今後も当面はDX Suiteを事業の軸に据え、非定型の書類への対応(現在一部のみ対応している)などさらなる機能改善を進める方針。事業の横展開についても「あまり脇道にはそれず、OCRに対してフィードバックが得られるような分野や、OCRによって取得したデータの活用がスムーズにいくような分野などが中心になる」(渡久地氏)という。