衣服の素材イノベーション企業Allbirdsが新規上場、次代を制する企業を見極める鍵は「持続可能性」

Allbirds(オールバーズ)は米国時間11月3日、NASDAQに新規上場し、それにふさわしいティッカーを選んだ。「BIRD」だ。

天然ウールを使用した控えめなデザインの(そして大変履き心地の良い)靴から始まったAllbirdsだが、現在は単なるアパレル企業ではない。今や衣服の製造方法に革新をもたらす素材イノベーション企業となっている。素材をオープンソース化して他者に提供することで業界に変化をもたらし、それによって持続可能性を実践する業界の旗手だ。

ファッション業界では、毎年21億トンもの二酸化炭素を大気中に排出している。これは、現在米国で使用されているすべての自動車から排出される量の2倍に相当する。現在、私たちが身体に身につけているもののほとんどは合成樹脂でできている。その合成樹脂は、化石燃料である石油から作られる。

この状況は変える必要がある。そしてそれは変わるだろう。

Allbirdsは、単に顧客に服を着せるだけではない。人々が自分の子どもたちも自分がしてきたような生活を楽しめるようにする可能性に貢献できるように、しかもそれを製品の快適さ、スタイル、性能を通じて、気持ちよく行えるようにすることで、人々が賛同するだけでなく、人々に愛されるブランドを作ろうとしている。

このようなビジョンやイノベーションは、Allbirdsだけのものではない。例えばTesla(テスラ)の仕事は、単にドライバーをある場所から別の場所に移動させるだけではなく、Impossible Meats(インポッシブル・ミート)の仕事は、空腹の客に食事を提供するだけではない。これらの企業の仕事は、我々の住む地球が数十年後も確実に生き残るだけでなく繁栄できるようにすることであり、同時に消費者がライフスタイルの質を落とさずに、積極的にそれに参加できる選択肢を提供することでもあるのだ。

持続可能性に取り組む企業が次世代をリードする

「サステイナブル(持続可能)」になることの重要性は認識されているものの、「サステイナビリティ(持続可能性)」を実現するためには何年もの時間が必要になる。このような一般的な見方は、レースが始まってから単に追いつくことが、どれほど難しいかを過小評価している。逆に起業家にとっては、社会に世代を超えて影響を与える「目的ネイティブ」な企業を構築する大きなチャンスとなる。従業員や投資家にとっても同様だ。

持続可能性というテーマは、消費財に限らず、あらゆるビジネスに当てはまる。ある日突然、町外れにある小さなサステイナブル・テクノロジーの会社に、巨額の資金提供が行われたというニュース(大手ベンチャーキャピタルはすべて、少なくとも1社の代替食肉会社を投資先に入れている)や、大企業のESG(環境・社会・企業統治)責任についてのニュースを見つけることは珍しくない。

The Economistによると、2021年に投資家が「エネルギー移行(エネルギーや輸送から産業、農業まで、あらゆるものを脱炭素化すること)」に注ぎ込む金額は5000億ドル(約57兆円)を超え、2010年の2倍になるという。地球の脱炭素化に必要な投資額は30兆ドル(約3400兆円)以上と推定されており、人々は炭素排出量のネットゼロを目指すレースに参加する企業に投資できる貴重な機会を得ている。気候変動は投資家にとって、今世紀最大の追い風だ。

EV(企業事業価値) / NTM(今後12カ月)の収益が、約16倍というテスラのような企業の現在の評価は、収益の7倍から10倍の間で取引されている他の自動車メーカーや、フォワード収益の約10倍で取引されているBeyond Meat(ビヨンド・ミート)と比較すると、非常に高額であるという認識がある。

このようなビジネスに投資するには、単に「持続可能」という変化だけでなく、長期的に劇的な変化があり、そこでは持続可能な活動をすべての意思決定の中心に据えることができる企業が長期的な勝者となると信じる必要がある。

今、会社を設立するのであれば、それは「目的ネイティブ」でなければならない。こうした企業にとって、現在の採用率と成長率は、この優位性のおかげで、同業他社よりも長く継続することが可能であり、おそらく実際にそうなるだろう。サステイナブル・ファーストの企業は、次世代の勝者となる可能性が最も高いのだ。

Allbirdsは次のNike(ナイキ)のような企業となり、数十年にわたって最大25%という成長率を記録できるだろうか?私にはわからないが、他のどのアーリーステージの挑戦者よりも、その可能性が高いことは確かだ。持続可能性がCO2を噛み砕く前に、世界が自分自身を食べてしまわないことを祈ろう。

TDM Growth Partners(TDMグロース・パートナーズ)は、Allbirdsに出資している。

編集部注:本稿を執筆したEd Cowanは、国際的投資会社TDM Growth Partnersの投資チームメンバー。

画像クレジット:Spencer Platt / Getty Images

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(文:Ed Cowan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Allbirdsが2021年末にフェイクレザーの靴を発売、植物ベースの代替皮革企業に投資

持続可能性を重視する靴メーカーAllbirds(オールバーズ)は、Natural Fiber Welding(ナチュラル・ファイバー・ウェルディング)という新しい会社に200万ドル(約2億1200万円)の小規模投資を行い、そのサプライチェーンをさらにグリーンな方向へ前進させた。

米国時間2月25日発表されたNatural Fiber Weldingへの投資は、2021年12月までに、完全植物由来の代替皮革という選択肢となってAllbirdsの製品に反映される予定だ。こうしたオプションが追加されることは、アパレル製造の一側面での環境インパクトを重視すると常に言明している同社としては、自然な流れだろう。

この頃のAllbirdsは、もうただの靴メーカーではない。Natural Fiber Weldingの製品には、同社独自の処理技術で作られた頑丈な綿繊維と植物由来の代替皮革が意図的に使われている。

これらの素材がソックス、靴、Tシャツ、下着、セーター、ジャケット、マスクなどのAllbirds製品に使われることになった。Natural Fiber Weldingはそのウェブサイトで、Porsche(ポルシェ)との提携を宣伝している。つまり、イリノイを拠点とするこのスタートアップの新素材Peoria(ペオリア)に熱を入れているのは、Allbirdsだけではないということだ。

PitchBookのデータによれば、Allbirdsからの投資以外にもNatural Fiber Weldingは1500万ドル(約16億円)の資金を調達している。その他の投資者にはCentral Illinois Angels、Prairie Crest Capital、Ralph Lauren Corp.、そして完全植物由来の製品に特化した投資会社Capital Vがある。

2020年、植物由来の素材に飛びついたアパレル企業は、決してAllbirdsだけではない。何かと話題のPangaia(パンガイア)は同年12月、Kintra(キントラ)というバイオ由来の代替ポリエステルのメーカに200万ドルを投資した。

現在、持続可能ファッションの世界で最も大きなスタートアップは、Bolt Threads(ボルト・スレッズ)という会社だ。同社は、Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)、Adidas(アディダス)、Balenciaga(バレンシアガ) のオーナーであるファッションハウスなどと(もっと他にもあるが)契約を結んでいる

関連記事:Bolt Threadsがバレンシアガやグッチ、アディダスなどと新素材マッシュルーム代替皮革で提携

それ以外で、植物由来の繊維や素材で多額の資金を調達したスタートアップには、MycoWorks(マイクロワークス)などの企業がある。同社は2020年にJohn Legend(ジョン・レジェンド)氏、Natalie Portman(ナタリー・ポートマン)氏、さらにもっと伝統的な投資企業である台北のWTT Investment Ltd.、DCVC Bio、Valor Equity Partners、Humboldt Fund、Gruss & Co.、Novo Holdings、8VC、SOSV、AgFunder、Wireframe Ventures、Tony Fadell(トニー・ファデル)氏から4500万ドル(約47億8000万円)を調達した。

Allbirdsは、Natural Fiber Weldingの製品で人工皮革の環境への影響を大幅に減らせることを誇っている。Natural Fiber Weldingによれば、その素材では、石油から作られる合成皮革と比較して、関連する二酸化炭素排出量は40分の1、製造時の排出量な17分の1だという。

また同社では、植物由来皮革には天然ゴムが使われると話している。天然ゴム業界には人権を侵害してきた歴史があるが、是正の努力もなされているところだ

「ファッション業界は、あまりにも長い間、いかがわしい合成皮革や持続可能性のない皮革に依存してきました。環境よりもスピードとコストを優先させていたのです」とAllbirdsの共同創設者であり共同CEOのJoey Zwillinger(ジョーイ・ズウィリンガー)氏は声明の中で述べている。「Natural Fiber Welding(NFW)は、大規模に、持続可能な形で、皮革の解毒剤を作っています。しかもそれを、炭素排出量を98パーセント削減して業界の流れを変える可能性のある方法で行っています。NFWとの提携と、彼らの技術が生んだ植物由来皮革の導入で、私たちの旅は、ファッション業界から石油を一掃するというエキサイティングな段階に入ります」。

TechCrunchではAllbirdsに詳しいコメントを求めているが、現時点ではまだ返事がない。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Allbirdsファッション持続可能性投資

画像クレジット:Allbirds

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)