Amazonが処方薬オンライン注文・配達サービスのAmazon Pharmacyを米国でスタート

処方薬配達サービスのPillpack(ピルパック)を7億5300万ドル(約785億円)で買収して2年と少し経つが、Amazon(アマゾン)はとうとうAmazon Pharmacyを立ち上げた。モバイルからの処方薬オンライン注文を受け付けて発送するサービスだ。

しっかりとしたプロフィールの薬局を使い、顧客はアマゾンのサービスを通じて保険情報の追加や処方箋の管理、支払い方法の選択などができる。同社は幅広いヘルスケアサービスにしようと取り組んでいる最中でもあり、アイテムを販売するだけでなく、ユーザーにアマゾンのポータルで「セルフサービスヘルプ」を提供する。ユーザーはまた電話で薬剤師にアドバイスを求めることもできる。「フレンドリーで知識豊富な薬剤師が365日24時間いつでも薬についての質問に答えます」と説明にある。

アマゾンは2019年に店頭処方薬サービスを開始した。間違いなくこれは、アマゾンにとって最も広範なヘルスケア事業参入に向けた取り組みだ。かなり大きな、そして新しい収入源に道を開くかもしれない。特に現在も続く新型コロナウイルスのパンデミックにより、消費者はリモートケアや、買い物にオンラインチャンネルを使う方向に向かうことを余儀なくされている。

実際これは薬、ウェルネスのためのワンストップショップとして、アマゾンが今後も拡大を続けるという以上のものだ。多くの消費者にとって、薬局での買い物とグローサリーの買い物は密接に関わっている(もちろん数十年にわたって多くの独立した薬局は食品を売る店のようになり、一方で食品店もまた薬局コーナーを設けるようになった)。

アマゾンはグローサリーと食品分野で、かなり積極的かつ野心的に事業を展開してきた。Amazon Fresh、Whole Foods、アマゾン独自のブランドアイテム、Amazonグローサリー店舗などを含む自前のブランドや買収したブランドの展開は医薬品戦略を反映している。食品やグローサリーの店舗で薬・ウェルネス事業を展開することは、アマゾンでの買い物体験をより完璧なものにする。そうして消費者のあらゆる買い物ニーズはアマゾンだけで満たされるようになる。

Amazon Pharmacyはさしあたって米国でのみの展開のようだが、グローバルでもチャンスはある。オンライン薬局サービスは2025年までに世界で売上高1310億ドル(約14兆円)に達すると予想されている。一方、処方薬のマーケット規模は2020年に9040億ドル(約94兆円)となり、2025年までに1兆3000億ドル(約135兆円)近くまで成長すると推定されている。

「より多くの人が毎日の雑用を家から完結させようしている時代にあって、薬局は重要であり、アマゾンのオンラインストアに追加される必要があります」と同社の北米消費者担当の上級副社長Doug Herrington(ダグ・ヘリントン)氏は声明文で述べた。「PillPackは6年以上、慢性的な病気を抱える人に優れた薬局サービスを提供してきました。そしていま、当社は薬局サービスをAmazon.comに拡大します。多くの顧客が時間やお金を節約し、暮らしをシンプルにし、そして健康でいられるようサポートします」。

ベーシックなAmazon Pharmacyサービスに加え、アマゾンはPrime会員向けに特別な機能を提供する。アマゾンのプレミアムな会員制サービスを利用している人はアマゾンからの注文で無料の2日以内配達を無制限で利用できる、と同社は声明文で説明した。

Prime会員はまた、Amazon Pharmacyで保険を使わずに支払うときに割引を受けられる。そしてAmazon Pharmacyに参加している全米5万店の薬局でも同様の割引を受けられる。Amazon Primeでの処方薬購入では、会員は保険なしで支払うときにジェネリック薬で最大80%、ブランドから出ている医薬品で最大40%の割引を受けられる。

Prime会員は精算時に処方薬の割引を受けられ、アマゾンの会員は誰でもブランドのものからジェネリックのものまで、必要な分量の医薬品をオンライン購入できる。

アマゾンはまた、顧客が最も安いオプションを選べるよう医療保険を使った場合、保険なしの場合、Prime処方薬割引プランの場合の価格を比較できる。加えてアマゾンは、24時間サービスを利用できるようスタッフを待機させていて、客は薬についていつでも質問できる。

「当社は手頃な薬を入手できることの重要性を理解しています。そしてPrime会員が新たなAmazon Prime処方薬割引サービスにかなりの価値を見出すと確信しています」とAmazon Prime担当副社長のJamil Ghani(ジャミル・ガニ)氏は声明文で述べた。「Primeにとっての最終目標は、会員の日々の暮らしをよりスムースで便利にすることであり、信じられないほどの節約、シームレスな買い物体験、迅速かつ無料の配達をAmazon Pharmacyに拡大することに興奮しています」。

アマゾンでの薬局サービス立ち上げは、上場企業のGoodRx、RxSaverのような企業、配達サービスExactCare Pharmacyといった他の割引処方薬サービスにとって逆風となる。

GoodRxが差異化を図ろうと遠隔診療サービスの提供を開始し、バリューチェーンを上げようとしているのは、アマゾンとの競争が理由の1つだろう。アマゾンが従業員以外へのバーチャルケア提供へと踏み込むかどうかは興味深いところだ。2019年に同社はシアトルの従業員向けに、対面、遠隔どちらででも提供されるAmazon Careを導入した。

当時、同社はこの試験事業を従業員向けに限定した。しかし同社のアプローチが知れ渡っているということ、最初のアプリ開発にともなうプロダクト開発の量、ユーザーエクスペリエンス、ブランドからするに、同社がこの先、米国マーケットを拡大の機会ととらえていることを示しているといえそうだ。

2020年8月にアマゾンはフィットネストラッカーのHaloを立ち上げた。これはパーソナルヘルス・ウェルネスのモニターとアドバイスのサービスを含む64.99ドル(約6800円)の手首につけるトラッカーだ。健康をモニターするためのアプリもついていくる。

TechCrunchが指摘したように、このサービスは普通の健康トラッキングガジェットとアプリのコンボという以上のものだ。体脂肪率などさまざまな健康に関する指標を総合的に把握できる。体脂肪率はスマホのカメラとAmazon Haloアプリを使って自宅で測定できる。アプリの深層ニュートラルネットワークベースのアップロード写真処理を通じて、周囲のものから体の画像を切り離すことができ、体脂肪率が簡単に測定できるいわゆる体脂肪「ホットスポット」を分析する能力を持つ。そしてアプリはユーザーの体の3Dモデルを生成する。Haloユーザーは体脂肪の増減で実際に体型がどうなるのかを見るためにスライダーを使って体脂肪率を調整できる。

まとめると、Whole Foodsで買い物し、Haloを使い、そしてAmazon Pharmacyで処方箋を入手するというAmazon Primeユーザーは、自身の健康について最も完全な知見をアマゾンに提供することになる。

アマゾンがAmazon Careサービスを消費者に提供するようになった場合、一連のヘルスケアで同社が触れない唯一の部分は、高額医療となるだろう。しかしアマゾンの野心からして、アマゾンのロゴが付いた急病診療所や病院が突然登場するということはあり得なくはない。

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(翻訳:Mizoguchi

アマゾンがインドでオンライン薬局サービス「Amazon Pharmacy」を開始

Amazon(アマゾン)はインド南部カルターナカ州の州都ベンガルールでオンライン薬局を立ち上げた。同社は、主要海外マーケットの1つであるインドでさまざまな部門に触手を伸ばしている。

同社は米国時間8月14日、Amazon Pharmacy(アマゾン・ファーマシー)という新たなサービスで市販薬と処方薬の注文受付をベンガルールで開始した、と発表した(インドでは抗生物質や一部の医薬品は処方箋なしに薬局で購入できる)。

Amazon Pharmacyはまた伝統的な生薬、そして血糖値測定器や吸入器、ハンドホールドマッサージ機などのヘルスデバイスも販売する。

「顧客が在宅して安全を確保しながら必要不可欠なものを手に入れることができるようにするという、今の時代に特に合ったものだ」とアマゾンの広報担当は声明文で述べている。

オンライン医薬品販売に関してインド政府は現在明確な規制を整備しておらず、これまでにインドのオペレーションに65億ドル(約6900億円)超を投資しているアマゾンにとって大きな機会だ。同社はインドでWalmart傘下のFlipkartと競合している。

アマゾンにとって、医薬品販売は新しいものではない。近年ヘルス専門家を雇い、2018年にはオンライン薬局スタートアップのPillPackを10億ドル(約1065億円)近くで買収した

1mg、Netmeds(ネットメッズ)、Medlife(メッドライフ)、PharmEasy(ファームイージー)といった多くのスタートアップが現在インドで薬をオンライン販売し、国内ほとんどの地域に配達している。例えば、これまでに1億7000万ドル(約180億円)超を調達した1mgは1000都市に注文品を配達している。

eコマースプレイヤーとしてこれらスタートアップはマーケットシェアを増やすために魅力的な割引を顧客に提供している。この点に関しては、Amazonは全オーダーを最大20%割り引くと話す。

ここ数カ月でアマゾンはインドでいくつかの新分野に進出した。5月にベンガルールの一部でフードデリバリーサービスを立ち上げ、その1カ月後に西ベンガル州でアルコールの販売・配達の許可を取得した。

2020年7月に同社は自動車保険の販売を開始(未訳記事)し、将来は健康やフライト、タクシーをカバーする保険サービスへと拡充させる計画だと述べた。

アマゾンが新たな分野に進出するにつれ、Flipkartも7月下旬にベンガルールで超ローカールデリバリーを試験展開するなど新規分野を開拓している。Flipkart はインドの2都市でアルコールを配達するために大手Diageoが支援するスタートアップと提携した、とロイターは政府文書を引用して報じている。

そしてアマゾンとFlipkartは今、新たな挑戦者に直面している。インドで最も富裕なMukesh Ambani(ムケシュ・アンバニ)氏が所有するインド最大の小売チェーンであるReliance Retail(リライアンス・リテイル)が2019年末にeコマースベンチャーのJioMart(ジオマート)のテストを開始した

JioMartはいまや、インド中の200を超える町村で展開されていて、2020年7月は1日あたり40万点もの商品を販売したとのことだ。この数字は、グローサリーデリバリースタートアップBigBasket(ビッグバスケット)とGrofers(グロファーズ)のピーク数字を超えている。

地元のメディアは、アマゾンがReliance Retailへの数十億規模の出資を狙っている(観たく記事)と報じた。アンバニ氏の他のベンチャーである通信大手のJio Platforms(ジオ・プラットフォームズ)はFacebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)、そのほか11の著名投資家からここ数カ月で200億ドル(約2兆1300億円)を調達した。同氏は7月にJio Platformsの資金調達は終了し、数四半期内にグローバルパートナーや投資家をReliance Retailに受け入れることを楽しみにしている、と述べている。

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