スポーツや芸能、ビジネスといった分野の著名人に密着取材するドキュメンタリー番組「情熱大陸」。各界で活躍する人物の普段は見えない素顔が出てきたりするのが面白いわけだけれども、ドットライフが運営する「another life.」(アナザーライフ)は、一般人版「情熱大陸」と言えるかもしれない。24歳以上で何かに情熱を捧げる人を取り上げるインタビューサイトで、登場人物は情熱大陸で紹介されるような「成功者」だけではないのが特徴だ。
自分の半生を伝えるサイトといえば、日本では「STORYS.jp」や「ザ・インタビューズ」といったものがある。前者はいわば自分語り、後者は匿名の質問に答える形だ。アナザーライフはザ・インタビューズに似ているが、「実名・年齢・職業」というプロフィールを明記していることと、一問一答形式ではなくストーリー形式なのが違い。「特に自分と同じ年齢のインタビュー記事は、特別なモチベーションで見る人が多い」と、ドットライフCEOの新條隼人氏は語る。
サイトには、仲間のトラブルでバンドの解散、親友との絶縁、バイト先の解雇が重なり、自分の部屋から約3カ月間出られなくなる挫折を経験しつつも、音楽番組を見て自分の未練に気づき、「音楽を成就か成仏させなくては」と再度バンド活動を復活させたドラマーの話から、最近イスラエルに拠点を移したサムライインキュベートの榊原健太郎氏、野菜版オフィスグリコ的なサービス「OFFICE DE YASAI」を手がける川岸亮造氏ら弊誌でも紹介した人物のインタビューまで100本近く記事が掲載されている。
記事の本数については、3月に終了した「笑っていいとも」のテレフォンショッキングのように、インタビューされた人が面白いと思う人を紹介する形式で増え続け、年末までには700本に達するという。7月3日に放映するTBS系列のスポーツエンタメ番組「SASUKE」の出場者のインタビューを掲載することも決まっているそうだ。記事は新條氏を含むドットライフに所属する3人に加え、インターン5人が執筆している。
内輪メディアの壁を超えられるか
今年2月のオープン以降、記事全文を読むために必要な会員登録を行うユーザーは月130%ペースで増加。6月末には1万人を超える見込みだ。現時点では「知り合いが出てるから見てみよう」という人が多く、会員数は記事が増えるごとに、その人の友達が登録するかたちで増え続けている。
こうした経緯もあり、「知り合いしか読まないんじゃない?」と思わなくもないが、今後は読者が「興味を持てた」ボタンを押した記事を解析し、関心にあった記事を配信することで、「内輪」な記事以外の閲覧数も増やす狙いなのだとか。17日にリリースしたiPhoneアプリでは、こうした記事を毎日プッシュ通知する機能を備えている。
収益面は「まだまだ先」だが、いくつかの方法を検討している。例えば、クラウドファンディングやスキル販売サイトなど「個人を打ち出す」プラットフォームと提携し、これらのサービスにインタビュー記事からユーザーを送客するごとに収益を得たり、記事広告の出稿などだ。
ところでなぜ、アナザーライフで紹介する人物は「24歳以上」なのか。新條氏が言うには「日本人が夢を諦める平均年齢だから」(出典:キリンビールの日本人夢調査)。かく言う新條氏も24歳だ。「やりたいことが見つからないと言うと、僕らの年代は『ゆとり世代』と世代論で語られがちですが、昔からそうだったわけではありません。打ち込めるものがなくモヤモヤしているだけ。今の自分の見えている範囲ではやりたいことが見つからなくても、他の人の人生を知ることで価値観が明確になる。昨日までと違う人生を踏み出すキッカケを提供できれば」。