筆者は子どもの頃、スケートビデオをたくさん見て育った。いつの間にか、完璧なトリックと同じくらい、失敗もそれらの重要な要素になっていた。スケートボード文化が「ジャッカス(jackass)」を世に送り出したのには理由がある。私自身はアグレッシブに月並みなスケーターだったが、世界最高クラスのスケーターたちが無様に顔面から転び、(実際に怪我をしない限り)身を粉にして15回目のトリックに挑戦する姿には、何かほっとするものがあった。
これまでBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)の完璧に振り付けされた映像を何十、何百と見てきたが、撮影の合間に起こるであろう、ツルッと足を滑らせての転倒を見ることはほとんどなかった。米国時間8月17日、同社は、人型ロボット「Atlas(アトラス)」をカメラの前で格好良く見せるために何が行われているのか、カーテンを開けて少しだけ明らかにした。
同社の社内テストシステムの中・下部には、多くの擦り傷、引っかき傷や汚れが見られる。これには理由がある。
Boston Dynamicsはブログ記事でこう書いている。「撮影中、Atlasは半分くらいの確率で正しく跳躍します。一方他のランでは、Atlasはバリアを越えるものの、バランスを崩して後ろに倒れてしまいます。そこからエンジニアはログを見て、その場で調整できる機会を見つけようとします」。
同社は、ロボットにミニパルクールコースを走らせることに挑戦し、記事に付随したビデオで「パルクールは私たちが重要だと考えるいくつかの課題を浮き彫りにするため、チームにとって情報を組織化する有益なアクティビティです」と述べている。パルクールはロボットにとって、短期的な問題解決と長期的な問題解決の両方に挑戦するものだ。ロボットは、一連の個別の動きを実行するだけでなく、より広い意味で、それらをつなぎ合わせてA地点からB地点までどのように移動するかを決定しなければならない。
Boston Dynamicsによるとこの種のビデオは、Atlasが一度にコースを完走できるようにするまでに数カ月かかり得るという。「この最新の試みはほぼ完璧だったが、正確には完璧ではなく、ツメが甘かった」と同社は書いている。「ロボットたちがバク転を終えたあと、大リーグのピッチャーが試合終了間際に三振を取った時のように、ロボットの1台が拳を突き上げガッツポーズするはずでした。Atlasチームはこの動きを『Cha-Ching』と呼んでいます」。
Boston Dynamicsのコンピュータには確実に存在しないであろうハッシュタグ「Atlas最大の失敗ビデオ集」に加えて、足を踏み外すと、人間と同じようにロボットも厄介な怪我になりかねない。時にはロボットのChumbawumba(チャンバワンバ)のように「but I get up again」と立ち上がることもある。そうでない場合もある。このビデオはその両方をチェックできるだけでなく、こうしたビデオを作るためにどのような手間暇がかかっているのか、インサイトを得られるという点で見る価値がある。
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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Boston Dynamics、二足歩行、ロボット、Atlas
画像クレジット:Boston Dynamics
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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)