「コマース革命」を掲げてEC事業を強化しているヤフーだが、今度は古本チェーン「BOOKOFF」と組んでインターネットの外の世界に踏み出したようだ。ヤフーとブックオフコーポレーションは4月24日、資本・業務提携を発表した。
資本面では、ブックオフコーポレーションが5月に実施する第三者割当増資をヤフーが引き受ける。ヤフーの取得株式数は310万株(議決権ベースで15.02%)で、取得価格は21億7620万円となる。あわせて77億円(すべての権利を行使した場合の金額)の新株予約権付社債も引き受ける。
事業面ではまず、BOOKOFF店舗の中古本をインターネットオークションサービス「ヤフオク!」上で販売する。ヤフオク!上では現在200万冊の中古本を取り扱うが、今回の提携を契機に2016年度までに1000万冊を目指す。また7月には、BOOKOFFの直営店舗をはじめとして「総合買取受付窓口」を設置。従来取り扱っていた中古本やCD、ゲームソフト、携帯電話などに加えて、アパレルや雑貨などに買い取り対象を拡大する(ただし、ブックオフコーポレーションが手がける一部の大型店舗ではすでにアパレルやブランド品を取り扱っている)。また買い取った商品はヤフオク!に出品していくという。特に携帯電話には注力し、常時100万台の取扱いを目指す。
また、今回ブックオフコーポレーションが調達する資金をもとに、関東圏にサッカー場7面分ほどにあたる1万5000坪のリユースセンター(倉庫)を2015年度中にも開設する。このリユースセンターでは、BOOKOFF各店舗で買い取った商品を集めるだけでなく、BtoB向けのマーケットプレイスを展開するほかフルフィルメントサービスも提供することも検討する。
リアル進出を進める「ヤフオク!」
2年前に経営陣を刷新して以降、「異業種最強タッグ」の取り組みをしてきたヤフー。代表取締役社長の宮坂学氏は、今回の提携もその一端だと説明する。ヤフーの目線はネットではなくリアルを向いている。
ヤフオク!の年間出品数は約50億点で、年間利用者数約1000万人。年間取扱高は6800億円に上る。これはネットリユース市場8100億円の84%に上る。しかしリアルを含めたリユース市場は1兆8000億円とまだ大きい。そのためリアル拠点の必要性を感じていたそうだ。宮坂氏はブックオフコーポレーションと組むことで、このリアルリユース市場のシェアを拡大し、さらに市場自体の拡大を進めたいと同日開催された会見で語っている。
また一方でブックオフコーポレーションとしては、年間買い取り額約5億点、年間売買客数約1億人でありながら、(もちろん「ブックオフオンライン」でネット事業も展開しているものの)店舗に縛られることで物理的な商圏の限界があったのだという。話題の書籍ならさておき、店舗で数週間売れなかった本でも、その店舗以外ではニーズがあるということは少なくない。
単価よりも商圏や販売機会の拡大が重要
では年間5億点の買い取りがある中からわずか2%の1000万点の商品が出店されることでどういうことが起こるのだろうか。会見で宮坂氏が、試験的にBOOKOFFで販売されていたネオジオ(かつて存在したゲームプラットフォームだ)の100円のソフトをヤフオク!に出品したところ、7万4000円で落札されたという話をしていた。僕はこの話を聞いて、つまりは「レア物」の商品にプレミア価格がつくということなのだろうかと勘ぐってしまい、「実際売上がどれくらい上がる見込みなのか」と尋ねた。
それに対するブックオフコーポレーション代表取締役社長の松下展千氏の説明は「単価が上がるよりも商圏、販売機会が広がることでロスがなくなることが大きいのではないか」とのことだった。店舗によっては5〜10%の売上増が見込まれる試算だという。さらに会見後の囲み取材で聞いたところでは、広く商品が流通されている話題書などよりは、ニッチな商品などにスポットがあたる印象を受けたが、このあたりは実際にどのような商品が出品されるのかを見ないことには分からなさそうだ。ブックオフオンラインについても、当面は現状のまま運用するという。
ちなみに、7月に総合買取受付窓口を設置すると、出品までのオペレーションを各店舗にてすることになるという。これも始まってみないと分からないが、マニュアル化されるまでは、店舗スタッフにとってもなかなか大変な作業になりそうだ。とは言えヤフーにとってもリアルな拠点を全国に持てる意味でも、ブックオフの販路拡大という意味でも今回の提携は大きな話になることは間違いない。「リユースのBtoBマーケットプレイス」「リユースのフルフィルメント」という今までになかった市場も広がっているわけだし。
ちなみに余談だが、今回の提携によってBOOKOFFでかつて利用できたTポイントが復活することはないそうだ。よく考えれば、Yahoo!ショッピングなどではポイントとしてTポイントを使うようになっているが、ヤフオク!ではTポイントを採用していないからだ。
「ヤフ!OFF」のポロシャツを着たブックオフの松下氏(左)とヤフーの宮坂氏(右)