ソフトバンクが支援する料理配膳ロボ開発のBear Roboticsとは?

今年8月、TechchCrunchは米国カリフォルニア州レッドウッドの興味あるロボットスタートアップをレポートしたBear Roboticsは創立2年半、社員40人でレストランで料理を客に届けるロボットを開発している。

SEC(証券取引委員会)への届け出によれば、同社のシリーズAの株式売出総額は3580万ドル(約40億円)あまりだった。米国時間1月21日に資金調達ラウンドが完了したことが発表されたのを機に、創業者のCEOのJohn Ha(ジョン・ハー)氏 にインタビューした。なお調達された資金3200万ドル(約35億円)だった。

このラウンドはソフトバンクグループがリードした。同グループはロボティクスのスタートアップへの投資にも力を入れている(ピザ配送車両のZumeにも投資しているが、同社の不振が報じられている)。マサチューセッツ州レキシントンを本拠にする創立7年目のBerkshire Greyは、フルフィルメントセンターにおけるパッケージの取り扱い全般をこなすロボットを開発しており、ソフトバンクがリードしたシリーズBのラウンドで2億6300万ドルという巨額の資金を得ている

もっとも、読者の多くはBear Roboticsが受けた出資の内容より開発中のプロダクトの方が興味があるだろう。創業者でCEOのハー氏にプロダクトの詳細と会社のビジョンを尋ねてみた。ハー氏はIntel(インテル)の研究者からGoogle(グーグル)の技術幹部に転じたが、その後起業家としてレストランを開き、閉鎖した経験がある。

TC:グーグルの幹部エンジニアだったのに、自分でレストランを始めた理由は?

JH:レストラン経営が夢だったというわけではない。有利なビジネスだと思ったのが主な理由だ。それに面白そうだった。しかし実際にやってみると面白いどころではなかった。特にショックを受けたのは(スタッフが)ひどい重労働なのに給与水準が非常に低いことだった。これを一生の仕事にはできないと(思って店を閉めた)。そして私の持つノウハウを活かしてレストラン業界を改革しようと思ったわけだ。繰り返しの多い単調な重労働を取り除き(フロアスタッフが)ホスピタリティの提供のような人間でなければできないことに集中できるようにしたいと考えた。料理を提供することがレストラン業の主目的のはずだが、離職率がおそろしく高いので経営者はほとんどの時間をスタッフの採用に費やしている。われわれが開発しているロボットはフードサービスが置かれているこうした状況を打破するはずだ。

TC:Pennyというロボットを開発しているわけだが、このアイディアはどこでどのように思いついたのか?

JH:Fiレストランのスタッフと始終「この仕事をロボット化できるならどんな感じになるだろう?」と言いあっていた。どんな外観でどんな機能が必要か、とかだ。まず混雜した店内を動きまわる必要があるのだからサイズはあまり大きくできない。それに風変わりなロボット・レストランにはしたくなかった。あくまで普通のレストランの中に溶け込み、誰も(存在を)気にかけないようなものでなくてはならない。スター・ウォーズのR2D2と同じで主役はあくまでルーク・スカイウォーカーだ。ロボットの役割はあくまで控えめな補助だ。仕事はきちんとこなすが個性は目立たず誰も注目しないというのが理想だ。

TC:ロボットそのものにについて少し詳しく知りたい。

JH:背景となるテクノロジーは自動運転車だ。それを屋内版にしたものと考えてよい。A点からB点までスムーズかつ安全に移動するテクノロジーだ。Pennyの場合は路上を走行して乗客を運ぶのではなく、レストランの通路を移動して目的のテーブルに料理を運ぶ。デフェレンシャル・ギアを装備した2輪駆動でキャスターがついている。非常に安全だ。外観が似たようなロボットがたくさんあるが、ほとんどはどこかしら見えない部分がある。Pennyは全周を確認しており、床を這っている赤ん坊がいても手をひいてしまうなどということはない。誰かがテーブルから財布のような薄いものを落としても気づく。

Pennyでは客が料理を取り出す。混み合ったスペースではロボットハンドは安全性を100%確保するのが非常に難しいのでわれわれは装備しなかった。素材は基本的にプラスティックだ。軽く、安全で、清潔を保ちやすい。レストランで常用される洗剤、殺菌剤などにも耐久性が高い。.また安全規則上の問題を起こさないよう車輪に料理の残滓が残るなどがないよう注意を払っている。

TC:まだ実用化はされていない?

JH:今のところ量産段階にまでは進んでいない。

TC:どこで製造されるのか?またビジネスモデルは?

JH:製造はアジアのどこかになるだろう。中国かその周辺だと思う。まだ市販価格は決めていないが、売り切りではなくリースという形にするつもりだ。月極めのサブスクリプションになると思う。これはメンテナンス一切をわれわれが受け持ち、レストラン側で心配する必要はまったくない。

TC:Pennyロボットは異なる目的、環境のためにカスタマイズ可能だろうか?レストラン以外の用途を考えているのか?

JH:Pennyは異なるモードにカスタマイズ可能だ。デフォールトでは3段の料理トレイを備えており、料理を運び、洗い場に下げるために動き回る。

TC:客とのコミュニケーションはできるのか?

JH:Pennyには発声、会話機能がある。音楽を鳴らしながら通路を進んだり、テーブルについたら「料理を取り出してくさい」と言ったりできるが、ソフトウェアはまだ複雑な会話ができるところまで行っていない。それぞれのレストランで特色を生かしたカスタマイズができるようにしたいと考えている。

TC:利用者と考えているのはレストランだけか?

JH:料理を提供する場所ならどこでもターゲットになる。現在はレストランでテストを行っているが、カジノでも社食でもいいし個人の家でもいい。高齢者施設も当然考えている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

レストラン向け料理運搬ロボのBear Roboticsが資金調達中

放射線治療医からトラック運転手ジャーナリストまで、仕事の内容のたとえ一部であっても、スマートマシンに取って代わられる可能性があり、そのような仕事の数が際限なく増え続けているような気がする。レストランのフレンドリーなウェイターやウェイトレスに泣きついて相談したくなるかもしれないが、待って!それもロボットだ!

カリフォルニア州レッドウッドシティに拠点を置く25人のスタートアップであるBear Robotics(ベア・ロボティクス)がそんな状況を実現しつつある。創業して2年になる同社は「役立つロボット」(Robots that help)、具体的にはレストランで客に料理を運ぶのを手伝うロボットを作っている。

ディスラプションが起こりそうなマーケットだ。自社の会社概要に記述されているように、同社は「賃金、人手確保、コスト効率面で外食産業が直面している高まるプレッシャー」に対処するために設立された。

元インテルのリサーチ・サイエンティストであるCEOのJohn Ha(ジョン・ハー)氏は、Googleで長年技術リーダーを務めた。自身のレストランを開店したこともあり(その後閉店)、飲食店の苦労を目の当たりにした。筆者はレストラン経営者の子(および孫)として、費用のこと、そしてもっと厄介な、売上高のことを考えると、レストランを所有・運営することが難しい試みであるとはっきり言える。

投資家はロボットサーバーを使うというアイデアに乗っているようだ。SECに新しく提出された書類によると、Bearは今回のラウンドを3580万ドルでクロージングする目標だが、これまで12の投資家から少なくとも1020万ドルを確保した。今日の多くのスタートアップにとってはそれほど大きな金額ではないが、フードサービスロボットのスタートアップとしては注目に値する。最初のモデル「Penny」はR2-D2のように回転し、料理が出来上がると、キッチンからテーブルへ運ぶ。

Bearがレストランと契約すると、少なくともそのような情景が見られると想定される。レストランはBearに毎月使用料を支払う。使用料には、ロボット、レストランのセットアップとマッピング(Pennyが物と衝突しないように)、技術サポートが含まれる。

Bearは支援者が誰なのか明らかにしていないが、支援者たちはAlibabaから少しヒントを得られるかもしれない。Alibabaが昨年開店した上海のレストランは高度に自動化されており、小さなロボットが専用トラックを滑り客へ食事を運ぶ。

Bearとその支援者たちは、レストラン内のすべてが自動化されるというもっと大きな青写真を描いているかもしれない。食材を揚げるロボットシェフからテーブルに取り付けられたセルフペイタブレットまで。ロボットサーバーがパズルの最後のピースの1つとなる。

だからといって、Bearや志を同じくする他のスタートアップが、未来的な体験を提供していないレストランですぐにビジネスを始められるというわけではない。人間がレストランに行く理由の1つは、古き良き人間との交流のためだ。テイクアウトの注文が増えている昨今、ウェイター、バーテンダー、ダイニングルームの周りを飛び回って挨拶をするレストランオーナーなど、人間こそが客を店にひきつける唯一の理由になるかもしれない。

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(翻訳:Mizoguchi)