世界最先端のクラウド国家 – エストニアの驚くべきデジタル戦略

あのskypeを産み出した東欧の小国エストニアが、世界でも屈指のデジタル国家という話は何となく耳にしたことはありますが、その実態を知る人は少ないでしょう。今回は世界でも屈指のIT系投資会社として名をはせるアンドリーセン・ホロウッィツの創業者ブログからデジタル国家エストニアについて学べる記事を。 — SEO Japan

テクノロジー業界である程度有名になった結果、最近、Healthcare.govに関する質問をよく受ける。 どうやら、まともに動かないウェブサイトを作るために、iPhoneの製作費の2倍から4倍の費用が、本当に必要なのかどうかを知りたがっている。素晴らしい疑問だと思う。しかし、経験上、プロジェクトの失敗の理由を理解することは、プロジェクトの成功の理由を理解することに比べると、遥かに重要度は低い。つまり、3億から6億ドルを支払って、healthcare.govの第一反復を構築することが、適切ではない理由を説明するよりも、私ならソフトウェアを活かした便利な政府機関のモデルに着目する。その上で、この記事は、テクノロジーがアメリカ政府を悪化させるのではなく、改善する仕組みを深く理解する上で、良いステップになるかもしれない。

ベンチャーキャピタリストとして新米の頃、私はSkypeに投資を行い、上場させたことがある。Skypeには興味深い面が幾つかあり、その一つは、非運な歴史を持つ、東欧の小さな国、エストニアを本拠にしている点であった。エストニアは、何世紀も前から、他国の侵略に晒され、デンマーク、スウェーデン、ドイツ、そして、最近ではソビエト連邦によって支配されてきた。現在は、独立しているものの、同国の市民は、過去の歴史をよく心得ており、慎ましく、実用的な考え方を持ち、同時に、自由に誇りを持っている。しかし、過剰に楽観的な推測は疑問視する。ある意味、テクノロジーの採用において、理想的な環境にあると言えるだろう — 期待はするものの、適度に懐疑的な考えを持つ思想が浸透しているのだ。

この文化に支えられ、エストニアは、アメリカ国民が羨むテクノロジープラットフォームを市民のために構築した。エストニアは、政府のテクノロジープロジェクトを減らすのではなく、増やしてほしいと市民が望むほど、市民が喜ぶインフラを開発した。この仕組みを説明してもらうため、私は、駐在起業家の一人であり、エストニア人のステン・タムキヴィ氏に話しをしてもらった。


ぱっと見ただけでは、エストニアは、アメリカの注目を引くような国ではないかもしれない。フィンランドの隣にある、東欧北部の小さな一国に過ぎない。エストニアにはオランダの領土があるものの、住んでいる人は少ない。エストニアの人口は、1300万人であり、ハワイとほぼ同じである。エストニアは、EU、ユーロ圏、そして、NATOに参加している。要するに、インド人の友人が、最近冗談のネタにしていた通り、「何を統治する必要があるのか?」と思わざるを得ない状況である。

この小さな国の銘柄としての魅力は、議員をインターネットで選出することが出来るだけではなく、2日間で税金が戻ってくる点である。このレベルの市民へのサービスは、政府が、幾つかウェブサイトを立ち上げるような取り組みから端を発したわけではない。エストニアは、開示性、プライバシー、セキュリティ、そして、未来を念頭に置きながら、情報インフラ全体をゼロから作り直す取り組みを断行したのだ。

e政府の基盤を作る上で、まずは市民を識別することが出来る点が条件になる。当たり前だと思うかもしれないが、社会保障番号で個人に対応したり、納税者番号で対応したり、あるいは、別の方法で対応したりする方針は、効果的とは言い難い。エストニアは、とてもシンプルで、尚且つ固有のIDメソッドを、パスポートから、銀行の記録、自治体の事務所、そして、病院に至るまで、すべてのシステムで利用している。個人のIDコード 37501011234を持つ市民は、20世紀(3)、1975年1月1日に生まれた123人目の男性を意味する。この番号は、コンピュータによるチェックサムで終わり、容易に入力ミスを検知することが出来る。

識別した市民が、お互いに取引することが出来るように、エストニアは、2000年にDigital Signatures Act(デジタル署名法)を通過させていた。国は全国レベルのPublic-key Infrastructure(PKI: 市民のアイデンティティを暗号キーと一体化させる取り組み)を標準に指定し、その結果、ティイトとトイヴォ(共にエストニアで多い名前)が、証明書付きの電子形式で契約を結ぼうが、あるいは、紙でインクを使って契約書を作成しようが、問題にはならなくなった。この方法の署名は、いかなる法律においても有効であるためだ。

しかし、この取り組みには、予想外の副作用があった。この基本となる法律は、すべての分散した政府のシステムを「マーケットの需要」に応じてデジタル化させる効力を持っていた。つまり、市民が電子署名を行った状態で、紙媒体のコピーを求めた場合、政府機関はこの要請に応じなければいけないのだ。市民は利便性を求めるため、デジタル形式が激増し、その結果、官僚はプロセスを管理しやすくするため、システムの改善に乗り気になる。小さな村のソーシャルワーカーでも、大きな投資を行うことなく、事務所が受信したデジタル署名付きのeメールを処理するだけで、同様のサービスを提供することが出来る。

この法律は、未来を見据えており、デジタル署名の技術面のニュアンスを固定していない。事実、時間の経過と共に、実装形態は徐々に変わりつつある。当初、エストニアは、身分の証明、そして、EU諸国内の移動に際して、従来型のID カードを給付していた。このカードのチップは、法的効力のある署名、そして、あらゆる信頼するウェブサイトやサービスへの本人確認(政府のサービスから、インターネット銀行に至るまで、幅広く利用されている)の2つの証明書を運ぶ。15歳以上の市民は、全員このカードを持つ義務があり、現在、120万枚のカードが利用されている。この枚数は、同国市民のほぼ100%に行き渡っていることを意味する。

モバイル機器の利用が急激に進み、現在の144%に近づくにつれ(ヨーロッパで3番目)、電子署名の利用も急激に増加した。スマートカードリーダーをコンピュータと一緒に持ち運びするのではなく、市民は、Mobile IDが搭載されたSIMカードを電話会社から得ることが出来る。追加でハードウェアやソフトウェアをインストールすることなく、PINコードを携帯電話に入力するだけで、システムにアクセスすることが可能である。

この記事を書いている時点で、IDカードと携帯電話を用いて、エストニア人は、2億3000万回認証を行い、1億4000万回法的に有効な署名を行っている。営利の契約と銀行での取引に加え、現在、選挙でも、このシステムが大活躍している: 2005年には、世界で初めて、地方選挙を電子上で認める国となっただけでなく、このシステムは、2011年のエストニアおよび欧州議会の選挙にも用いられ、票の全体の24%を占めるほど定着している(興味深いことに、この選挙では、選挙時に、たまたまいた場所から投票を行う人がおり、合計で105ヶ国から票が投じられていた — 私もその一人であり、カリフォルニア州から投票を行った)。

この所謂イノベーションをスピードアップさせるため、エストニアは、電子署名認証システムの構築と安全性の確保を、民間、すなわち、同国の銀行と電話会社で構成される合弁企業に委ねていた。しかし、民間と国の提携はこれで終わったわけではなかった。エストニア国内でデータがやり取りされる仕組みにより、国の団体も民営の団体も同じデータ交換のシステム(X-Roadと呼ばれる)にアクセスすることが出来るため、究極の総合的なeサービスが実現している。

その代表的な例が、エストニア人が、「埋める」納税申告である。「埋める」と表現したのは、一般のエストニアの市民が、年に一度納税の申告を行うためにフォーム(用紙)を提出する際、見直し用のウィザードのような手順を踏むためだ — 次に進む -> 次に進む -> 次に進む -> 提出する。これは、データが既に一年中動かされているためであり、雇用者が、毎月雇用税を申告する時点で、全てのデータエントリは、既に特定の従業員の納税記録にリンクされている。同じように、非営利団体が申告した慈善寄付は、寄付者に対して控除として記録される。住宅ローンの課税控除は、銀行とやり取りするデータを介して直接行われる。その他にも様々なケースが考えられる。また、エストニアでは、所得税率が、全員21%に統一されており、既にデータが入力されたフォームを提出すると、市民は、その翌日には、払い過ぎた金額を銀行の口座に振り込んでもらえる(もちろん、電子送金)。

このデータのシステム間の流動的な動きは、市民のプライバシーを保護する基本的な原則に左右される。一も二もなく、データを所有するのは市民である。市民は、データへのアクセスをコントロールする権利を持つ。例えば、完全にデジタル化された健康の記録や処方箋においては、市民は、アクセス権を一般開業医からかかりつけの専門医まで、詳細に決めることが出来る。法律によって、国による情報の閲覧を阻止することが出来ない場合、例えば、エストニアのe警察が、警察車両や警察署内でリアルタイムの端末を利用しているケースでは、市民は、少なくとも、データにアクセスした人物と時間の記録を取り寄せることが可能である。妥当な理由もなく、公務員が自分のデータをチェックしていることに気づいたら、問い合わせを行い、その人物をクビにすることが出来る。

しかし、当然ながら、何もかもデジタル化すると、個人だけでなく、システム全体、そして、国全体にセキュリティのリスクをもたらす可能性がある。事実、エストニアは、2007年のサイバー戦争の標的となり、政府、メディア、そして、金融機関をターゲットにした暴動が起きた後、組織的なボットネット攻撃が行われた。その結果、数時間にわたって、エストニア全体が、事実上、インターネットから寸断されてしまった。しかし、その結果、エストニアは、NATOのサイバーディフェンスセンターの本拠地となり、エストニアのトーマス・イルヴェス大統領は、世界の国々の指導者の中で、サイバーセキュリティを推奨する指導者として有名になった。

さらに面白いのは、エストニアが完全にデジタル化されたことで生まれた裏の側面である。エストニアの政府機関のクラウド化が100%完了すれば、この国への物理的な攻撃のコストは高くなる。このスカンジナビアの小さな国を侵攻したものの、政府の業務は中断されず、データのレプリカが、その他の友好的なヨーロッパの区域で起動する展開を想像してもらいたい。民主主義の政権が、すぐに再選挙によって生まれ、重要な決定が下され、文書が発行され、企業 & 不動産の記録は管理され、出生の記録が行われ、さらには、インターネットにアクセスする住民によって、税金が循環するのだ。遠い未来の話をしているように思えるかもしれないが、これは、エストニア政府のCIO、ターヴィ・コトゥカ氏が理想として掲げるだけでなく、同国が既に構築したe基礎に実際に実装しているシステムである。

エストニアを巡る状況は、色々な意味で特別である。エストニアは、50年もの間、ソビエトに支配された後、1991年に再び独立を果たした。その後、西欧諸国が1960-80年代に構築した、チェックブックやメインフレームコンピュータ等の多くのテクノロジーの遺産を飛ばし、90年代半ばのTCP/IPのウェブアプリの波にいきなり乗ったのであった。この社会的なリセットを行う中、エストニアの市民は、以前の社会主義の指導者を追い出し、新たな指導者を選んだ –また、大臣には、ディスプラティブな思考を期待することが出来る、20代後半の若者が任命された。

と言っても、すべて20年も前の話である。エストニアは、マクロ経済および政治の観念で考えると、どちらかと言うと、「退屈な状況」、つまり、安定し、予測しやすい国になった。しかし、その一方で、鉄のカーテンに遮られていた時代から、もともと独立していたヨーロッパの国々との間にあった差を、急速に埋めていった。20年が経過するが、エストニアを、年齢や年代ではなく、考え方において、今もスタートアップの国だと言えるだろう。

これは、米国をはじめ、インターネットを浸透させることに、そして、モバイル化が進む市民のデジタル化に苦戦する国々が、エストニアから学べる領域である — それは考え方だ。そのためには、基盤に疑問を投げかけ、鍵となるインフラを適切に整え、そして、継続的に作り変えていく姿勢が求められる。米国は、革新を起こすため、健康保険を仲介するサイトを構築することも出来るし、あらゆるサービスを構築するために必要な重要な要素 — 署名、取引、法的な枠組み等 — を本気で検討することも出来る。

最終的に、心地よい環境を作る国にモバイル市民は集まる。色々な意味で、この目標を目指す小さなエストニアの2014年の現状は、英米戦争の真っ只中にあった1814年のニューイングランドほど悪い状態ではないと言えるだろう。


この記事は、ben’s blogに掲載された「Estonia: The Little Country That Cloud」を翻訳した内容です。

人口130万人強の小国だからこそできることともいえるかもしれませんが、記事にあるように日本含め他国が学べることは多そうですね。そういえばエストニアもですが、お隣のベラルーシも最近楽天が買収したViberの開発拠点だったり、ウクライナもあのWhat’sAppの創立者が生まれた国ですし、東欧パワー最近スゴイです。実は私の会社も東欧に開発拠点があり、彼らの優秀さは日々感じています。先行する成功者に負けじと頑張って結果を出していきたいです。。。 — SEO Japan [G+]

イノベーションを潰す企業文化

私が関わっているスタートアップデータアーティストにて、新卒採用を今年から始めたのですが、予想以上にベンチャー志向の優秀な学生が多くて驚いています。10年前の日本でこんなことは考えられなかったと思いますが、日本の明るい未来を夢見る若者世代にもチャレンジングな起業文化が育ちつつあるのでしょうか?!こうした若者の多くがベンチャーに期待しているでもあろう、新しい製品、ひいては産業を世の中に産み出していくイノベーションの可能性。大企業は優秀な人材が多い割にイノベーションはいつもベンチャーから生まれるといわれることが多いですが、その真偽はともかくとして、その背景にある原因や理由を考えてみることが、あなたの会社にイノベーション文化を育むきっかけになるかもしれません。全米トップクラスのVCアンドリーセン・ホロウィッツの創業者が語るイノベーションを産む企業文化、イノベーションを潰す企業文化の差とは。 — SEO Japan

神が身体と心に宿り、魂を満たす。憎しみを持つと、心が空っぽになり、態度に表れる。
– リック・ロス 「Hold On」

分別のある人間は世界に合わせ、分別のない人間は世界を自分に合わせることに固執する。そのため、進歩は、分別がないものに左右される。
-ジョージ・バーナード・ショー

最近、新しいテクノロジー企業の欠点を記事で取り上げる行為、コメントを投稿する行為、そして、ツイートを投稿する行為が流行している。近頃は、問題に遭遇したスタートアップ、成功した起業家、あるいは、会社のアイデアをこき下ろすツイートを見ない日はない。どうやら、現在の希望と好奇心に溢れたスタートアップの文化を独りよがりの優越感に置き換える現象が起きているようだ。

この現象の何がいけないのだろうか?トーンが誤った方向に進んでいることを、なぜ気に掛ける必要があるのだろうか?そして、企業の悪い点よりも良い点を探すことは、なぜ重要なのだろうか?

テクノロジーと言うワードは、「より良い方法で物事を行う」ことを指す。言うのは簡単だが、実行に移すのは難しい。情報を保存する優れた方法、流通を改善する方法、あるいは、友達を作るより良い方法を実現するには、長年の人間の経験を改善することを意味するため、非常に難しい。ある意味、何かを改善することは論理的に不可能のように思える。大昔から2014年に至るまで誰も考えなかったことを、考案することが出来るのだろうか?心理学の観点では、飛躍的な発明を行うには、永久に疑念を持ち続けなければならない。テクノロジーのスタートアップ業界には、この「不可能」を想像するために、優秀な人材が集まっている。

私はベンチャーキャピタルの専門家であるため、小規模な企業がいとも簡単にイノベーションを実現しているように見える一方で、大企業が、革新を起こせずに苦労している理由を問われることがよくある。通常、この質問に対する私の答えは、相手を驚かせる。大企業は、素晴らしいアイデアを幾つも抱えている。しかし、新しいアイデアが、追求する価値がある点を大勢の社員に同意してもらう必要があるため、イノベーションを起こすことが出来ないのだ。優秀な社員にアイデアの欠点を指摘されると — 自慢するため、あるいは、権力基盤を固めるため — それだけで、お蔵入りになってしまう。その結果、やる気の出ない文化が生まれる。

イノベーションの難しいところは、驚くような革新的なアイデアは、どうしようもないアイデアに見えてしまう点である。今の今まで、誰一人として、良いアイデアだと考えなかったため、イノベーションがもたらされる。アマゾンやグーグル等の創造力に富む大企業は、イノベーターによって経営されている傾向が見られる。ラリー・ペイジ氏は、一方的に、劣悪に思えるアイデアに投資し、反対意見には耳を傾けない。こうすることで、ペイジ氏は、意欲的な文化を作り出すことに成功したのだ。

テクノロジーのスタートアップ業界を、退化する一方の「やる気のない文化」を持つ単一の大きな企業に変えようとする人達がいる。私は、このような挑戦に真っ向から立ち向かい、この痛ましい傾向を逆転するためにこの記事を作成した。

テクノロジーに対する否定的な発言は、今に始まったことではない。企業や発明が役に立たないと言う指摘が的を射ていることもある。しかし、指摘が正しいケースであっても、もっと重要なポイントを見落としている。この指摘の正しさを証明するため、これから過去を振り返る:

コンピュータ

1837年、チャールズ・バベッジは、アナリティカルエンジンと呼ばれる世界初の汎用コンピュータを作ろうとした。現代では、チューリング完全と呼べるデバイスである。バベッジが作ろうとしていたコンピュータに十分なリソースが与えられていたら、この機械は、現在の強力なコンピュータが、実施することが可能な計算を実行することが出来たはずである。計算スピードは少し遅く、若干大きなスペースを取るかもしれないが(実際には、とても遅く、非常に嵩張るデバイスになっていたはずだ)、バベッジは、現代のコンピュータに引けを取らないコンピュータを開発しようとしていた。当時は、木を使って、蒸気から動力を得る必要があり、コンピュータを作る取り組みは、非常に野心的なプロジェクトであった。結局、バベッジは、実用的なコンピュータを作ることは出来なかった。最終的に、1842年、英国の数学者であり、天文学者であるジョージ・ビドル・エアリーが、アナリティカルエンジンが「役立たず」であり、バベッジのプロジェクトに見切りをつけるよう大蔵省に進言した。英国政府は、その直後、プロジェクトを打ち切る決断を下した。懐疑主義者によって頓挫させられ、世論に忘れられたバベッジのアイデアに世界がようやく追いついたのは、1941年であった。

171年後の現在、バベッジのビジョンが正しく、コンピュータが役立たずではないことは、誰にでも分かる。バベッジの人生から学べる最大の教訓は、100年間生まれるのが早かったことではなく、バベッジが素晴らしいビジョンを持ち、ビジョンを追求する意志を持っていたことだ。チャールズ・バベッジは、今もなお、大きな刺激を大勢の起業家に与えている。一方のジョージ・ビドル・エアリーには、先見の明のない変人と言うイメージがついてしまった。

電話

電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルは、発明品と特許を、当時の電報プロバイダの最大手、ウエスタンユニオンに$100,000で譲ると言う取引を持ち掛けた。ウエスタンユニオンは、内部の委員会からの報告を基に、この取引を断った。このの報告の一部を以下に掲載する:

「電話機は、電信線を介して、話し声を伝送する機械である。しかし、話し声はとても小さく、ほとんど聞き取ることが出来ない点が判明した。また、送信機と受信機の間の電線が長い場合、さらに音量が小さくなる。技術の面で、このデバイスが、今後、数マイルの距離を聞き取れる話し声を送ることが出来るようになるとは考えられない。

常軌を逸したハバードとベルは、「電話機」を全ての街に導入することを望んでいる。実に浅はかなアイデアである。そもそも、電報局に使いを出し、明確に記したメッセージを米国内の全ての都市に送信することが出来るのに、わざわざ、この醜い、非現実的なデバイスを誰が使いたがるのだろうか?

ウエスタンユニオンの電気技師は、今まで、電報の技術を大幅に進化させてきた。現実の問題を全く知らないにも関わらず、大げさで、現実離れしたアイデアを持つ部外者のグループを受け入れる理由は何一つ見当たらない。ガードナー・グリーン・ハバード氏の空想的な推測は、確かに魅力的ではあるが、無謀な想像に基づいており、現状の技術的および経済的事実の理解に欠けていると言わざるを得ない。また、この玩具としか言いようがないデバイスの明らかな欠点を無視する姿勢がありありと見られる。

以上の事実を鑑みて、$100,000で特許を譲渡すると言うガードナー・グリーン・ハバード氏の申し出は、明らかに不当だと考える。このデバイスは、ウエスタンユニオンにとって、役に立たないからだ。購入は薦められない。

インターネット

現在、世論の多くが、インターネットの重要性を認めている。しかし、これはごく最近の現象である。事実、1995年、天文学者のクリフォード・ストールは、ニューズウィークに「ウェブがニルヴァーナにならない理由」と言うタイトルの記事を寄稿し、次のような嘆かわしい分析を行っていた:

そして、サイバービジネスの存在も気になるところだ。一瞬のうちにカタログを見て買い物が出来るらしい — お買い得の製品にカーソルを合わせ、クリックするだけでよい。今後は、ネットワークを介して、航空券を注文し、レストランに予約を入れ、売買を交渉するようになるだろう。店は時代遅れの産物と化すと言われている。しかし、それなら、地元のショッピングモールは、一体どうやって、1ヶ月間のインターネットでの売り上げよりも多くの売り上げを、1日の午後の営業だけで得ることが出来るのだろうか?インターネット上で信頼するに値する送金の手段があったとしても — 今のところ確認できない — このネットワークには、資本主義にとって欠かせない要素、つまり販売員が欠けている。

今回紹介した賢い人達は、同じ過ちを犯している。テクノロジーの強み、そして、今後のポテンシャルではなく、当時の欠点に執着していたのだ。これは、反対論者が最も犯しやすい過ちである。

「やる気の出ない文化」の被害を最も受けるのは、皮肉にも批判に走る人達である。アイデアや会社の欠点に固執すると、恐怖心が生まれ、他の人達が馬鹿馬鹿しいと思うアイデアを試すことが出来なくなってしまう。羨ましいため、優秀なイノベータから教訓を得ることも出来ない。また、頭が固すぎるため、優れた若いエンジニアが、自分よりも先に世界を変えていることに気づかない。その上、嫌味ばかりが先行し、周りに良い刺激を与えることが出来なくなる。その結果、後世に嘲笑されるようになる。

「憎む」のではなく、「創る」ことを意識してもらいたい。


この記事は、ben’s blogに掲載された「Can Do vs. Can’t Do Cultures」を翻訳した内容です。

新しい事業アイデアを考えた時その分野の人に意見を聞くと、とりあえず「厳しい。業界の慣習的に無理。」と否定されることは日常的にある話です。実際そこで諦めていたらイノベーションは絶対に起きないわけですが、コンピュータはともかく、インターネットも想像はつきますが、電話までかつて大否定されていたとは、今の常識の多くが過去の非常識なんですよね。そんな今日の常識をあえて疑ってかかることがイノベーションのきっかけにつながるかもしれないですし、それを突き破って進む一種の狂気ともいえる情熱もイノベーションを産むには必要です。

組織力を強みとしてきた日本企業にとって、イノベーションを育み仕組みを企業文化として持つことはチャレンジなのは想像がつきますし、最近ネットでも話題になっていますが、日本の他者に迷惑をかけないことを美徳とする文化も多少の障害になっている気はします。とはいえ、日本人のイノベーションを産む力は世界でもトップクラスと思いますし、日本でも近年次々に誕生しているスタートアップやベンチャー企業の中から新たなイノベーションが起きひいては日本を活性化することにつながれば素晴らしいですね。私も少しでもそんな現場の一端に入られるよう、頑張っていきたいと思います。 — SEO Japan [G+]

米国最強投資家からのシンプルすぎるアドバイス「会社の運命を自分で決めたいなら、利益を出せ」

日本でもスタートアップに数千万はもちろんのこと、数億円単位の投資が普通に行われる時代になってきた最近。そんな環境の変化が喜ばしくもあり、若手のスタートアップ経営者が羨ましくもある40代に入った中堅経営者でもある私です。今回は米国でもトップクラスの投資会社アンドリーセン・ホロウィッツの創業者が語る、起業家へのアドバイスについて。「利益を出せ」とは、利益どころか売上もさほどない会社が何十億、何百億、時には1000億で売却されるような今の時代に即していない言葉と思われる人も多いかもしれません。そもそも彼の投資会社自体、全く売上のないInstagramに2500万投資して、Facebookへの売却で78億円儲けたそうですし。。思わず「お前が言うな」といいたくなりますが、あえてその彼が改めて問う言葉だけに何かのヒントが隠されているはず?真相はいかに。 — SEO Japan

起業家なら、気難しいベテランのCEOや投資家から「キャッシュが王様」だと言われたことがあるはずだ。ツイッターのIPO関連の記事を読み、「あの爺さん達は、一体何を言っているんだ?」と心の中で呟いたのではないだろうか?ツイッターは、設立から6年が経過した今でも多額の資金を費やしている。キャッシュではなく、ツイッター(製品)が最も重要視されているように思える。

このような状況では、「これが経験則の問題点だ。理解することは出来るものの、分かち合うことが出来ない」と自分に言い聞かせるようにしている。しかし、この名言だけは、根本的に重要であるため、今回は、年寄りの役割を務めさせてもらうことにする。

私が会社を設立し、CEOを務めていた1999年-2000年においては、キャッシュは、王様と言うよりも奴隷のような存在であった。「冒険するか、諦めるか」の二者択一を迫られる時代であった。投資家は、インターネットビジネスなら何でも飛びつき、収益を度外視していた。私は会社を急速に発展させていった。設立してから9ヶ月も経たないうちに、2700万ドル/四半期を集めることに成功した。冒険の真っ最中であり、諦めるつもりはなかった。

その後、ドットコムバブルがはじけ、投資家達は考え方を一変させた。インターネットビジネスを嫌うようになり、自ら資金を得ることが出来ない会社には、投資を控えるようになった。

2年間にわたって四苦八苦し、3名の従業員を解雇し、睡眠時間を取れないほど身を粉にして働いた結果、ようやくキャッシュを得られる可能性を感じる位置まで辿り着くことが出来た。しかし、この時点では、事業運営が、成功するかどうかは微妙であった。手強い競合者に囲まれ、大量の仕事に追われていたが、倒産に追い込まれるほど追いつめられているわけではなかった。それでも、共同設立者であり、取締役会長であるマーク・アンドリーセン氏は、そろそろ利益を上げるべきだと話した。何となく、アンドリーセン氏の指摘は正しいと思えた。

そこで私は、従業員と話し合いの場を持ち、2003年の第2四半期までに黒字化を行い、投資機関にも約束するつもりだと話した。すると、最も優秀な従業員が、この方針を疑問視した。この人物は、現金の減少ペースが早い点、資金が不足している点、そして、すぐに完了しなければならない作業を次々と指摘していった。そして、「無理やり決定を下す必要はあるのか?」と尋ねた。考えをまとめるためには、厳しい質問を投げ掛けなければならない時もある。当時の私の答えは、今、同じ質問を問う起業家に与える答えと同じである:

「まずは、どれだけ従業員を解雇する意思があるのか考えるべきだ。躊躇せずに解雇することが出来るなら、赤字のままで構わない。収益を上げない会社には、資本市場が解雇のタイミングを教えてくれる。我々は、投資家の意見に真剣に耳を傾けなければならない。投資家に嫌われたら、会社はあっと言う間に傾いてしまうからだ。君はどう思うか分からないが、私はこんな方法で会社を運営するのは嫌だ。投資家にあれこれ指示される前に、従業員全員に対して、自分達が正しいと思うことを私は伝えたい。自分の運命は自分で決めたいんだ。」

この従業員は何も言葉を発さなかったが、目を見れば、私の言いたいことが伝わっている点は明白であった。これは、戦略や手法ではなく、自由を求める戦いである。自分達がベストだと思うように会社を作るための自由だ。

その後の5年間、投資家は様々な要求をした。賢明なアイデアもあれば、浅はかなアイデアもあった。私達は真摯に耳を傾けたものの、常に、自分達が正しいと思ったことを実行し、結果を気にしなかった。この会社の運命を決めたのは投資家ではなかった。自分達で運命を決め、自分達で決定を下すことが出来たこの5年の間に、会社の価値は40倍になった。

利益のない巨大な成長を介して、資金を調達している会社は多い。状況によっては、そして、会社によっては、この戦略は功を奏する可能性がある。例えば、ツイッターのような会社には、この戦略は向いている。その理由を二つ挙げる。まず、ツイッターは、今後、多額のキャッシュをもたらすと誰もが考えた、非常に重要な製品を構築している。次に、過去6年間の資本市場は、ツイッターを快くサポートしてきた(2000年から2006年の間とは対照的)。つまり、ツイッターと同じような製品を提供し、この時代に会社を経営しているなら、何もかもうまくいく。

しかし、製品がツイッターほど重要ではないなら、そして、時代の流れが変わったなら、注意が必要だ。利益を上げるまでは、たとえ誤った指摘であっても、投資家に従わなければならない。ある日、投資家が、突然、もうダメだと言ったら、会社は廃業を余儀なくされる。利益を上げれば、投資家からの浅はかな要請に対しては、カニエ・ウェストのように反論しても構わない:

え?何か言ったかい?あんたの意見は聞かないよ。


この記事は、ben’s blogに掲載された「Cash Flow and Destiny」を翻訳した内容です。

文中に出てくる会社とは、彼がVC設立前に経営していたLoudCloudという会社のことです。売上2億円でネットバブル時に無理やり上場したものの、その後、売上が伸びずネットバブル崩壊後にキャッシュを求める投資家との軋轢もあり、相当苦労したようですね。最終的には会社を成長路線に乗せ、2007年にHPに1600億円で買収し大成功したようですが。

記事を読めばわかるように、単純に全ての会社に当てはまるアドバイスでもないですが、Twitter等、圧倒的な将来性を持つ企業を除き、ちょっとした時代やトレンドの変化でその将来性が大きく左右される(つまり大半の)スタートアップ企業には、「勢いで出資を受けて利益が出ないまま突っ走る」行為には大きな可能性も逆にリスクもあることは認識した方が良いのかもしれません。

私の会社は幸運なことに最初から利益が出ていないので投資を受けることなくここまで来ましたが、新規に伸ばしていこうと思っている事業の幾つかは、外部からの投資受け入れも含めて今以上にスケールさせていきたいとは思っていますし。当面は利益優先か成長優先かギリギリの所を突き進んでいきそうな雰囲気ですし、彼のアドバイスを心に留め、成功失敗はともかく後で後悔しない選択をし一歩一歩進んでいきたいと思います。 — SEO Japan [G+]

創業者が失敗する最大の理由:プロダクトCEOのパラドックス

創業者が会社を軌道に乗せた後、大きく成長させる上で大きな課題となるのが、創業者が製品開発にいつまでも関わりすぎることによる弊害「プロダクトCEOのパラドックス」。世の中にはスティーブ・ジョブスみたいな製品開発の詳細の詳細までこだわって成功した人もいるわけですが、ジョブス自身がカリスマとなりジョブス=Appleブランドとなった余りに特殊な例でもありますし、現実的にはその拘りが中長期的な成長の足かせになることが多いようです。今回はそんな創業者への製品への拘りにまつわる興味深い話を全米No.1クラスのVCが語ります。 — SEO Japan

If I knew what I knew in the past
I would have been blacked out on your a**
?Kanye West,?Black Skinhead

私は、創業者が自分の会社を経営することを支持していることで有名なため、創業者がスケールに失敗したり、プロのCEOに取って代わられたりするといつも、人々が多くのEメールを私に送ってくる。Ben、何が起きたんだ?創業者の方が優れているのかと思っていたけど?“私が創業者CEOを好む理由”をアップデートするつもりがあるのか?

これらのEメールへの返答:いいや、私はその投稿を書き直すつもりはないが、私はこの記事を書くつもりだ。創業者が自分の作った会社を経営するのに失敗する理由は主に3つある:

  1. 創業者が本当はCEOになりたくない全ての発明家が会社を経営したいわけではない。そして、もしあなたが本当にCEOになりたいわけじゃないのなら、あなたが成功する確率はひときわ低くなる。CEOのスキルは習得するのが非常に困難なため、そうしたいという強い願望がなければ、創業者は失敗するだろう。もしあなたがCEOになりたくない創業者なら、それは構わないが、それを早い段階で把握して自分自身と他の全ての人達を多くの痛みから救うべきだ。
  2. 役員会がパニックになる時には、創業者はCEOになりたいのだが、役員会は創業者が間違いを犯すのを目にして、パニックになり、時期尚早に取り換える。これは痛ましいが、よくあることだ。
  3. プロダクトCEOのパラドックス多くの創業者は、プロダクトCEOのパラドックスにぶつかる。これについて以下に説明する。

プロダクトCEOのパラドックス

ある友人は、容赦なく自分のプロダクトビジョンを追求することによって、記録的な速さで自分の会社を利益ゼロから10億ドル以上に導いた。彼は、自らの会社のプロダクトプランニングと実行の複雑な詳細に密接に関与することによってそれを成し遂げたのだ。これは、従業員およそ500人に至るまでは見事にうまくいった。その後、会社が拡大し続けると、物事は悪化し始めた。彼は、複雑な製品ラインにわたって団結と文脈を維持した明確なビジョンを持つプロダクト創業者から、気まぐれに思える意思決定者および製品の障壁へと変貌した。これが従業員を苛立たせ、開発を遅くした。その問題を受けて、さらには会社を拡大するのを助けるために、彼は身を引き、全ての主要製品の決定と指示をチームへと委任し始めた。そして彼はプロダクトCEOのパラドックスにぶつかったのだ:プロダクトCEOが製品に大いに関与することにもまして早く会社を破たんさせる唯一のことが、CEOが製品から離れることなのだ

これはよくある話だ。創業者が飛躍的なアイディアを練り、それを築くために会社を始める。そして、そのアイディアを最初に思いついた人として、休むことなく働き、製品の出来栄えがビジョンに合っていることを確実にするために製品の細かいこと全てに関与することによってそれを実現する。製品は成功し、会社は成長する。すると、いつの間にか、CEOは自分なしで従業員がより上手にできることに注意を払い過ぎて、会社の他のことに十分に注意を払っていないと、従業員が文句を言い始める。役員会もしくはCEOコーチが、“従業員を信頼して委任する”ことを創業者にアドバイスする。そして、製品は焦点を失い、ラクダ(委員会によって作られた馬)のように見え始める。そうこうしているうちに、CEOが製品において唯一の世界クラスだったために、彼女が素晴らしい製品指向のCEOからくだらない汎用CEOへと事実上変身したということが判明する。私たちには新しいCEOが必要なようだ。

どうすれば私たちはそれを防ぐことができるのだろうか?製品指向の優れた創業者/CEOのほぼ全てが、そのキャリアを通して製品に関与したままであることが分かっている。Bill Gatesは、リタイアするまでMicrosoftでの全ての製品レビューに出席した。Larry Ellisonは、今もOracleで製品戦略を実行している。Steve Jobsは、Appleで全ての重要な製品のディレクションに介入していたことで有名だ。Mark Zuckerbergは、Facebookで製品ディレクションを行っている。彼らはどうやって会社を粉々に吹き飛ばさずにそれをやっているのだろうか?

長年にわたって、どの人も、個々の一連のプロダクト・ディシジョンへの関与のレベルを減らしたが、必要不可欠な関与は維持した。製品指向のCEOの必要不可欠な関与は、少なくとも以下のアクティビティから構成される:

  • プロダクトビジョンを維持し推進する – CEOが、全部のプロダクトビジョンを作る必要はないが、製品指向のCEOは自分が選択したビジョンを推進しなければならない。何が為されるべきかを見て、それを適切に準備するという立場にある人間なのだ。
  • クオリティ・スタンダードを維持する – 十分に良い製品とはどれくらい良くあるべきなのだろうか?これは、応えるのが非常に難しい質問であり、それは一貫していなければならないし、文化の一部でなければならない。Steve JobsがAppleを経営していた時、彼は素晴らしい顧客ロイヤルティを作ったスタンダードを推進したため、これを正しく行う力を見るのは簡単だった。
  • インテグレーターになる – Larry PageがGoogleのCEOを引き継ぐと、彼は全てのプロダクトグループに共通のユーザープロフィールに着手することを強いてパラダイムを共有することにたくさんの時間を費やした。なぜか?彼がそうしなければならなかったからだ。CEOがそれを起こさなければ、決して起こらなかった。それは他の誰かの優先事項ではなかったのだ。
  • 人々に自分が持っていないデータを検討させる – 今日の世界では、プロダクトチームは自分たちが作った製品に関する未曾有のデータを持っている。彼らのやりたいようにさせると、彼らは自分が持っているデータの周辺で製品を最適化する。しかし、彼らが持っていないデータはどうなのだ?顧客が想像することのできない作られる必要のある製品や機能はどうなのだ?CEOの出番だ。

しかし、これまでずっともっと深いレベルで製品に関与してきたのなら、あなたはどうやってそんなことをするのか?どうやっていくつかの分野では全く身を引かずに、総体的には体裁良く身を引くのか?ある時点で、あなたは自分の製品関与を正式に構造化しなければならない。密接に関与した動きから、チームから力を奪ったりチームの気を狂わせることなく自分が貢献することを可能にするプロセスへと移行しなければならない。厳密なプロセスは、あなた自身とあなたの強みとあなたのワークスタイル次第だが、通常は以下の要素から恩恵を受ける:

  • 言うのではなく、書く。 製品に求めることがあるのなら、それを完全に書き出すのだ。簡単なメールではなく、正式なドキュメントとして。これが、あなたが最初から最後まで考えたそれらのことへのあなたの関与を制限する働きをしながら、明確さを最大限にする。
  • 製品レビューを正式なものにして参加する。 もし、チームが、ビジョンとの一貫性やデザインの質や統一ゴールに対する進捗などをあなたがチェックする定期的なレビューを予期すべきことを知っているのなら、あなたが廊下で方向転換する場合よりも、力を奪われる感じは少なく感じるだろう。
  • 正式な過程以外で指示を伝えない。個々のエンジニアやプロダクトマネージャーとその場しのぎで話すのは構わないし必要なことだ。あなたは何が起こっているのかの自己理解を継続してアップデートする必要がある。しかし、これらの状況に飛び込んで指示を与えようとする試みは我慢することだ。上で説明したような正式なコミュニケーションチャネルを介してのみ指示を与えること。

必要とされる場所では関与したままで、必要不可欠ではない関与から手を引くのは本当に難しいということは留意すべきことだ。これがほとんどの人が自爆する場所なのだ:手放さないことによって、もしくは手放すことによって。もしあなたが、私の友人が気付いたこと―全てを手放さずに少しを手放すことはできない―に気付いたなら、CEOの変更を検討すべきかもしれない。しかし、そうするのではなく、これをする方法を学ぶのだ。


この記事は、ben’s blogに掲載された「Why Founders Fail: The Product CEO Paradox」を翻訳した内容です。

私も、零細ベンチャーの経営者なりに参考になる話でした。最も私の場合は、最初の成功が不十分なのでそちらを頑張らないといけないわけですが・・・汗 創業者なりの製品への愛情や拘りは製品や事業の成功には絶対不可欠とは思いますが(米国で大手に買収されたベンチャーの製品がその後飛躍的に進化する例って余りないですよね)、成長過程でいかに社員・チーム全体の意思を統一し、全員の力を発揮することによってより優れた製品に育てていくことができるのか、というのは成長前のスタートアップにとっても大事なこととは思いますし、スタートアップ経営者にとっても参考になる記事だったのではないでしょうか? — SEO Japan [G+]

あなたがCEOとして成長するために必要なこと

テック業界No.1レベルの成功を収めているVC、アンドリーセン・ホロウィッツのベン・ホロウィッツが語るCEO論。最近では、Google VenturesとGoogle Glass関連製品向けファンドを作るなど改めて話題のVCが語るCEO/経営者の在り方とは。 — SEO Japan

She got a big booty so I call her Big Booty.
- 2 Chainz, Birthday Song

ある日、友人が私に、CEOは先天性なのか後天性なのかと尋ねてきた。私は、“それはJolly Rancher(キャンディ)が育てられたのか作られたのかと尋ねるようなものだよ。CEOはとても不自然な職業なんだ”と答えた。そう言った後に彼の驚いた顔を見て、それは私が思っていたほど当たり前のことではなかったのかもしれないと気が付いた。

しばらく考えた後、私は、大部分の人が実際には逆の仮定をしているということに気が付いた―CEOは後天性ではなく先天性であると。私は、他のベンチャーキャピタリストとボードメンバーが創設者を素早く評価し、“CEOとして資質のある人”ではないという結論を出すのをよく耳にする。私には、彼らがどのようにしてこれらのことをそんなにも早く把握するのか分からない。創設者がCEOのスキルを身に付けるには通常何年もかかるし、私にとっては、彼女がそれをやり遂げるかどうかを知るのは通常非常に難しいことなのだ。

運動競技においては、短距離走者は比較的素早く学習することが可能だ。なぜなら、それは自然の動きを用いて洗練するからだ。一方、ボクシングのようなことは、熟練するのにもっと多くの時間がかかる。なぜなら、それらは不自然な動きをたくさん必要とするからだ。例えば、ボクシングで後ろに進む時には、もしあなたが自然な方法で後ろに下がっている間に―前足を先に動かす―パンチを受けると、完全にノックアウトされる可能性があるため、後ろ足を先に動かすことが非常に重要だ。この不自然な動きを自然に感じるように学習することは、ものすごい量の練習を必要とする。もしあなたが最も自然に感じることをCEOとしてすれば、あなたもノックアウトされることになるかもしれない。

CEOであることは、たくさんの不自然な動きを要する。人類学的な立場からすると、人々に好かれるようなことをするのは自然である。それはあなたが生き残るチャンスを強化する。しかし、優れたCEOになるためには、また、長期的に愛されるためには、短期的には人々に嫌われることをたくさんしなければならないのだ。それは不自然なことである。

実際、最も基本的なCEOの基礎的要素でさえ、最初は不自然に感じるだろう。もしあなたの相棒があなたにおかしな話をすれば、彼女のパフォーマンスを評価するのはかなり変に感じることになるだろう。こんな風に言うのは全く不自然だ:“う~ん、私はその話は最悪だと思ったよ。可能性はあるが、話はつまらないし、あなたは完全にオチで失敗した。もう一度やり直して明日また私に見せるように。”そうすることは、かなり奇妙であるが、人々のパフォーマンスを評価し、継続してフィードバックを与えることは、まさにCEOがすべきことだ。もしCEOがそうしなければ、レビューを書いたり、販売区域を奪ったり、政治を動かしたり、給与を設定したり、人々を解雇したりというようなもっと複雑な動きが不可能になるか、下手くそに取り扱われることになる。

フィードバックを与えることは、マネージメントの不自然なスキルを築く不自然な原子の積み木なのだ。しかし、どうやってその不自然さをマスターするのだろうか?

The Shit Sandwich(シット・サンドイッチ)

フィードバック初心者のための時に効果的で人気のあるテクニックは、経験豊富なマネージャーたちがThe Shit Sandwich(シット・サンドイッチ)と呼んでいるものだ。このテクニックは、古典的なマネージメントの教科書The One Minute Manegerの中で見事に説明されている。基本的な考え方は、あなたが褒めることから始めて(1枚目のパン)、その後に難しいメッセージを与え(シットの部分)、あなたがどれくらい彼らの力を評価しているかに気付かせる(2枚目のパン)ことで締めくくれば、人々がはるかに多くそのフィードバックに心を開くというものだ。あなたは前もって自分が相手を高く評価していることをはっきりさせるので、シット・サンドイッチには、人物よりもその行動に対するフィードバックに焦点を合わせるというポジティブな副作用もある。これはフィードバックを与える際の重要なコンセプトだ。

シット・サンドイッチは準社員にもよく機能するが、以下のような課題がある:

  • 過度に型通りになる傾向がある。あなたは、正しい結果が得られるように事前に計画をしてそのサンドイッチの脚本を書かなければならないため、そのプロセスは従業員にとっては型にはまった一方的な判断のように感じることがある。
  • それを何度かすると、信ぴょう性を失う。従業員はこう考えるようになる:“なんだ、また彼女は私に文句を言っているよ。次に何が来るか分かっている、批判(シット)だな。”
  • より多くのシニアエグゼクティブがシット・サンドイッチにすぐに気が付くと、それは素早くネガティブな影響を及ぼす。

キャリアの始めの頃、私が、慎重に作り上げたシット・サンドイッチを上層部の社員に伝えることを試みたところ、彼女は私を小さな子供のように見てこう言った:“Ben、褒め言葉はいらないから、私が何を間違ったのかだけ教えて。”その時私は、自分は間違いなく生まれついてのCEOではないなと思った。

重要なこと

フィードバックを与えることのエリートになるためには、あなたはシット・サンドイッチのような基本テクニック以上に自分を高めなければならない。あなたは、自分自身のパーソナリティと価値に合ったスタイルを開発しなければならないのだ。ここに、効果的になるためのカギがある:

  • オーセンティックであること。自分が与えるフィードバックを信じ、受け手の感情を操作するようなことは言わないことが重要だ。おじけづいているのをごまかすことはできない。
  • 適切な理由づけ。あなたが相手に失敗して欲しいと思っているのではなく、成功して欲しいと思っているからフィードバックを与えるというのが重要だ。もしあなたが誰かに本当に成功して欲しいと思うのなら、相手にそれを感じさせること。相手にあなたの気持ちを感じさせるのだ。もし相手があなたの気持ちを感じ、あなたがその人の味方なら、その人はあなたの話に耳を貸すだろう。
  • 個人的にならない。誰かを解雇することに決めたなら、その人を解雇すること。その人に解雇される準備をさせないこと。成功する準備をさせないこと。もし彼女がそのフィードバックを受け取らないなら、それは異なる話だ。
  • 同僚の目の前で人を嘲らない。グループの中である種のフィードバックを与えるのは構わないが、決して同僚の前で恥をかかせてはならない。もしあなたがそんなことをすれば、a)従業員に酷い恥をかかせることになり、b)あなたは従業員に心から憎まれ、あなたのフィードバックが他の人に与える影響は小さくなる。
  • フィードバックは全ての人に当てはまるものではない。全ての人は一人一人異なる。フィードバックに対して神経質な従業員もいれば、顔の面が厚い人や、時には頭蓋骨の厚い人もいる。文体的に、あなたの口調は、あなたのムードではなく従業員のパーソナリティに合わせるべきである。
  • 直接的に、でも意地悪ではなく。鈍くならないこと。もしあなたが誰かのプレゼンテーションを最悪だと思うなら、こう言わないこと:“かなりいいけど、もう一つの道筋を使って結論を簡潔にすることができたかな”。厳しいように聞こえるかもしれないが、こう言った方がずっといい:“私はついて行けなかったし、あなたの言いたいことが理解できなかった。理由はこうだ。”水で薄まったフィードバックは、全くフィードバックがないよりも悪い。なぜなら、それは人の目をごまかし受け手を混乱させるからだ。しかし、相手を叩きのめしたり、自分が優れていることを示そうとしたりしないこと。そうすることは、あなたの目的にそぐわない。なぜなら、適切に行わる時には、フィードバックは独り芝居ではなく対話だからだ。

フィードバックは、一人芝居ではなく対話である

CEOはあなたで、あなたは自分が好まないことや同意しないことについて誰かに伝えているかもしれないが、だからと言ってあなたが正しいとは限らない。あなたの従業員は、自分の機能についてあなたよりもよく知っているべきだ。彼女はあなたよりもたくさんのデータを持っているべきだ。あなたは間違っているかもしれない。

その結果、あなたの目的は、自分のフィードバックが閉ざされた議論ではなく開かれたものにすることであるべきだ。人々があなたの判断に食ってかかったり議論することを奨励するのだ。文化的観点から言って、あなたには、高い水準の徹底的な話し合いが必要だ。あなたは、ハイクオリティな思考を得るために膨大なプレッシャーをかけながらも、自分が間違っている時にそれが分かるようなオープンさが必要だ。

頻度の高いフィードバック

重要なことをマスターしたら、あなたは自分がマスターしたことを常に練習するべきである。CEOとして、あなたは全てのことについて意見を持っているべきだ。あなたは、全ての予測、全ての製品プラン、全てのプレゼンテーション、全てのコメントについて意見を持っているべきだ。人々にあなたが考えていることを知らせるのだ。もしあなたが誰かのコメントを気に入っているのなら、そのフィードバックを相手に伝えるのだ。もしあなたが異なる意見を持っているなら、そのフィードバックを相手に伝えるのだ。自分が考えていることを言うのだ。自分自身を表現するのだ。

これには非常に重要なポジティブな効果が2つある:

  • フィードバックが、あなたの会社の中で個人的なことにならない。もしCEOがコンスタントにフィードバックを与えれば、CEOが関与する全ての人がそれに慣れるようになる。誰もこんな風には考えない:“おっと、彼女はそのコメントで本当は何を言いたかったのか?彼女は私のことを嫌いなのだろうか?”みんなが自然と、暗示的でランダムなパフォーマンスの評価ではなく、問題に焦点を合わせる。
  • 人々が悪いニュースについて議論することに慣れる。もし人々がお互いに間違ってやっていることについて話すことに慣れれば、会社が間違ってやっていることについて話すのもとても簡単になる。質の高い企業文化はデータネットワーキングのルーティングプロトコルからヒントを得る:悪いニュースは素早く出回り、良いニュースはゆっくりと出回る。質の低い企業文化は、“誰も私に悪いニュースを持ってくるな”という、オズの魔法使いの東の邪悪な魔女の特性を帯びる。

CEOを作るということ

CEOになることは、幅広いより高度なスキルを要する―私はこのブログの中でその多くについて書いてきた―が、上級レベルに達して自分が生まれながらにしてCEOであるかのように感じるために重要なことは、不自然さをマスターすることだ。

もしあなたが創設CEOで、これらのことをする時に決まりが悪かったり不適任であるように感じ、自分の会社が100または1000人規模になった時に自分にはそれができるわけがないと思うのなら、あなたも仲間だ。それはまさに私が感じていたことなのだ。そして、私が出会った全てのCEOが同じように感じていた。こうやってあなたは作られるのだ。


この記事は、ben’s blogに掲載された「Making Yourself a CEO」を翻訳した内容です。

スタートアップ起業家や会社経営者はもちろん、部下を持っている人であれば誰でも考えさせられ参考になる点も多い記事だったのではないでしょうか。もちろん人間であれば無理に人に嫌われたくはないと思いますが、嫌われてしまうようなことをしなければいけないのも経営者・上司の役割。それをいかに円滑に行い、事業や部下を正しい方向に導けるかが腕の見せ所。この記事のあるヒントを参考に最強のチームを目指していきたいものです。

しかしフィードバックを常に出し続けるということが、コメントに対して変に暗示的な
意味を与えないという指摘はナルホドと思いました。これを逆に利用している人もいそうですが、本質的には前者の方がより正しく間違えのないコミュニケーションの形であり、それが機能した時のチームは強い気がします。 — SEO Japan [G+]