フェムテックブランドNagiを運営するBLASTが総額1.5億円のシリーズA調達、ブランド拡大を強化

フェムテックブランドNagiを運営するBLASTが総額1.5億円のシリーズA調達、ブランド拡大を強化

フェムテックブランド「Nagi」(ナギ)を運営するBLASTは2月9日、シリーズAラウンドにおいて、とした第三者割当増資および日本政策金融公庫などからの融資を合わせ、総額1億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、赤坂優氏らが運営するエンジェルファンド、ANRI、セゾン・ベンチャーズ。調達した資金により、生理期間に限らずすべての女性たちがどんな日も自分らしく過ごせる世界の実現に向けて、Nagiブランドの拡大に取り組む。

Nagiは、吸水機能や防水機能に加え、防臭機能、制菌効果(菌を減らす効果)のある機能素材を使用した吸水ショーツ。ショーツの形は、フル、スタンダード、スリムの3タイプ。防水布を折り返す独自の積層構造を採用しており、特許出願中という。2020年5月にブランドをスタートしてから、2022年2月までで約6万枚を超えるショーツを販売したそうだ。

また日本の生地メーカーの生地を使用しており、高い技術を持つ国内の工場で生産。1枚ずつ丁寧に人の手で縫製し、パッケージ包装は、プラスチック素材を一切使わず紙素材のみを使用している。自宅でお手入れ可能で、くり返し使うことを考慮し環境にも配慮したエコフレンドリーなプロダクトになっているという。フェムテックブランドNagiを運営するBLASTが総額1.5億円のシリーズA調達、ブランド拡大を強化

2018年1月設立のBLASTは、「すべての女性たちが人生をコントロールできる世界へ」というビジョン、また「女性をエンパワーメントする」をミッションに掲げる、WOMEN EMPOWERMENT COMPANY。メディアとプロダクト、コミュニティの3軸の事業で女性のライフスタイルをエンパワーするとしている。フェムテックブランドNagiを運営するBLASTが総額1.5億円のシリーズA調達、ブランド拡大を強化

「初めて生理が楽しみになった」女性150名の声から生まれた生理用品D2C「Nagi」

「初めて生理が楽しみになった」女性150名の声から生まれた生理用品D2C「Nagi」「ジェンダーギャップ指数」という言葉をご存知だろうか。国際機関の世界経済フォーラム(WEF)が発表している世界各国の男女格差を測るランキングで、最新データ「ジェンダー・ギャップ指数2020」によると、日本は調査対象となった153カ国のうち121位と下位に位置している。

「先進国だと思っていた日本のジェンダーギャップ指数が低いことにとてもショックを受けました。この事実を日本の女性たちに伝えなきゃいけない、と使命感を持ったのが起業のきっかけです」と話すのは、BLAST CEOの石井リナさん。

石井さんは2018年に創業し、女性向けエンパワーメントメディア「BLAST」(ブラスト)を立ち上げ。Instagram(blast.jp)とTwitter(@BLAST___JP)を主戦場に、セックスや社会問題などジェンダーにまつわる情報を発信した。2018年3月には資金調達を実施し、D2C事業に参入。2020年5月に生理用品ブランドの「Nagi」をローンチしている。

「女性にとってポジティブなものを発信していきたい」と語る彼女に、ジェンダーギャップに取り組むようになった背景や生理用品に着目した経緯について話を聞いた。

石井リナ
1990年生まれ。新卒でIT企業に入社し、ウェブ広告のコンサルタントを担当する。その後独立し、SNSコンサルタントとして企業のマーケティング支援に従事。2018年にBLASTを起業し、エンパワーメントメディア「BLAST」を運営。2020年にNagiをローンチする。

欧米の企業やインフルエンサーのSNSを見て、フェミニズムを知った

欧米の企業やインフルエンサーのSNSを見て、フェミニズムを知った石井さんは2013年に新卒でIT企業に入社し、3年ほど働いたのちに退職。フリーランスとベンチャー企業の会社員を兼業しながらSNSマーケティングに携わる。

「ジェンダーについて昔から関心はありましたが、より興味を持ったのは業務の一環として、欧米の企業やメディア、インフルエンサーのSNSを追っていたとき。海外ではダイバーシティやフェミニズム、#MeTooやジェンダーに関する情報が積極的に発信されていることを知ったんです。

一方、2016年当時の日本は、それらの言葉について情報発信している人やメディアも少なく、まだまだ声をあげづらかった。さらに、日本はジェンダーギャップ指数も低いことを知り、危機感を持ちました。日本の女性がジェンダーギャップのある現状を理解し、制約なく自分の意思で生き方を選択できる世の中にしたい。そう思い、多様な選択肢を提案すべくまずはメディア事業を立ち上げました」。

10代~40代の女性150名にヒアリングしてプロダクトに落とし込んだ

10代~40代の女性150名にヒアリングしてプロダクトに落とし込んだ次に着手したのがプロダクト事業。「女性の身近なところから変えていきたい」という思いから、生理用の吸水ショーツを手掛けることに。

「日本と欧米では生理用品の種類やブランドの数が違います。たとえば、欧米では膣内に装着する『月経ディスク』があったり、CBD(カンナビジオール)入りのタンポンも。しかし日本では7割の人が紙ナプキンを選択しています。生理用品の選択肢を増やしたいと思い、海外でも注目されていた吸水ショーツに着目しました」。

10代から40代までさまざまな世代の女性150名にアンケートを実施し、「生理用品に対する課題」や「どのような吸水ショーツが欲しいか」などをヒアリング。加えてInstagramのライブ配信でも意見を集め、プロダクトに落とし込んだ。

「『どのような吸水ショーツが欲しいか』という問いに対しては、『リボンやフリルのついたデザインよりシンプルなものがいい』という意見が多く、希望のデザインにあまりばらつきはありませんでした。一方、『生理用品に対する課題』に対しては、『かゆみ』『漏れ』『におい』『痛み』など様々な意見が。身体のことなので当たり前ですが、人によって課題感がまったく異なることを知ることができました」。

1年半かけて完成したNagiには、ヒアリングをした女性たちの声を数多く反映。生地は30秒で97.2%の水分を吸収できる「速乾シート」、水分を吸収する「吸収シート」、Ag(銀)を配合した「防臭シート」、吸水した水分の漏れを防ぐ「防水シート」の4枚構造となっている。

発売1週間で2000枚が完売。今後は年齢別・目的別のラインを展開していく

発売1週間で2000枚が完売。今後は年齢別・目的別のラインを展開していく2020年5月にローンチするや否や、1週間で2000枚が完売。石井さんたちも予想外の反響で、供給が追いつかず、うれしい悲鳴だったという。

「今までいかに生理でストレスが溜まっていたのかに気づき、『初めて生理が楽しみになった』『ナプキンがないとこんなに快適だと思わなかった』という感想も多く寄せられました」。

「毎月使うものだから、手に取りやすい価格にしたい」という考えのもと、デザインショーツと変わらない5000円台に抑えたのも売り上げが伸びた要因のひとつ。さらに、1人当たりの平均購入数は2枚弱。生理は数日続くため、2枚以上買う人も少なくないという。

2020年の9月と10月には、希望の多かったベージュやブランドカラーのグリーンなどのニューカラーを発売。今後もNagiを主力商品に置き、初潮を迎えた子ども向けや尿もれする方向けなど、年代別、目的別のラインを展開していく予定だ。

関連記事
きっかけは原因不明の体調不良、40代女性起業家が更年期夫婦向けサービスに込める想い
女性向けヘルスケアD2Cブランド「WRAY」が約4500万円調達、月経前症候群の悩みにアプローチ
「起業は甘くない、困難だらけだとわかっている」、それでもウーマンウェルネスD2Cブランドを立ち上げるまで
女性向けサプリメントD2Cのnatural tech、卵子凍結・不妊治療の福利厚生プラットフォーム「Stokk」ほか

カテゴリー:フェムテック
タグ:ジェンダーギャップ指数生理用品NagiBLASTD2C日本