韓国eコマースCoupang、ビジョンファンドから20億ドル調達

ジャーナリストJamal Khashoggiの殺害はサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の指示だったとCIAが結論づけてからわずか数日後、サウジアラビア政府系公共投資ファンド(PIF)が450億ドルも拠出している途方もなく大きなソフトバンクのビジョンファンドは投資活動を再開させた。

韓国最大のeコマース企業Coupangは今日、ビジョンファンドから20億ドルを調達したことを明らかにした。ソフトバンクにとってこの投資は、10月のKhashoggi殺害以来最も大きなもので、ソフトバンクが保有するCoupangの株式がビジョンファンドに移された数週間後に行われた。

この調達により企業価値がいくらかになったのかは明らかにされていないが、この件に近い情報筋がTechCrunchに語ったところによると、今回の調達で企業価値90億ドルになったという。我々が理解しているところでは今回のディールは新規株式発行で、Coupangはこれまでに34億ドル調達したことになる。前回の調達は、2015年のソフトバンクからの10億ドルだった。

今回の調達はCoupangにとって、韓国企業としては初めてビジョンファンドから出資を受けた企業という非常に大きな意味を持つ。ビジョンファンドはソフトバンク会長の孫正義が世界の勝ち組ネットワークとして有しているものだが、Khashoggi事件とのつながりが活動を難しいものにさせている。

ムハンマド・ビン・サルマン皇太子はワシントン・ポスト紙の記者で、サウジの体制に批判的だったKhashoggiの殺害を指示したとして広く批判されている。サウジ主導の調査では皇太子の関与を否定している;しかしながら先週発表されたCIAのレポートは、全ては皇太子の指示によるものだったと、前面から非難しているーその一方でサウジ王室の一部は王位継承者を入れ替えることを企んでいる、と報道されている。

殺害について孫は「人道にもとる行為だ」と非難したが、最近の投資家向けプレゼンテーションでは、「ソフトバンクは資本を展開する“責任”をサウジアラビアに負っていて、ビジョンファンドを継続する」と付け足している。

ビジョンファンドへの最大の出資者というPIFの同ファンドでの役割は、これまでの成果を汚すことになりかねない。シリコンバレーでは、多くのスタートアップ創業者が汚れのないところからの資金を選ぶだろうとする声も聞かれる。しかしながらこうした懸念とは裏腹に、ソフトバンクはここ数週間、多くの案件を発表したーここにはロボット調理スタートアップZumeへの3億7500万ドルの出資ガラスメーカーViewへの11億ドルの出資も含まれる。孫は、ビジョンファンドからの出資を断るスタートアップがあったとは聞いていない、と述べたが、将来“いくらかの影響はあるかもしれない”と認めている。

そうした事情はあっても、Coupangはビジョンファンドからの投資を受け、その旨を発表した。

「ビジョンファンドは将来を見通したファンドであり、彼らに選ばれたことを誇りに思う」。CoupangのCEO、Bom KimはTechCrunchとのインタビューでこう語った。

Kimは、Khashoggi殺害をめぐっての緊張は“我々や、投資を受ける企業を表すものではない”として、今回の投資による過激な反動は予想していないと語った。

果敢にも体制を批判したジャーナリストを殺害した(とされる)国が主に支えるファンドから多額の資金を受け取るというのは、良くは思われない。しかし究極的には、いかにその事実を振り払うかは今後わかることだ。世界は、CIAの正式な調査結果、サウジ王室とソフトンバンク・孫の反応を待っていて、この事件はCoupangの前向きなニュースの重荷になる可能性がある。

Coupangは韓国で最大のeコマース事業者となり、他のエリアへの進出にも積極的だ。

2010年の創業で、Kimによると2018年の売上は前年比70%増の50億ドルに近づいている。Coupangは、韓国の成人2人に1人がスマホに同社アプリを入れている、としている。Coupangの事業は韓国でのみだが、北京、LA、シアトル、上海、シリコンバレー、そしてソウルにエンジニアリング部隊を抱える。

50億ドルという売上は2014年の14倍で、これはCoupangが方向転換にフォーカスしたからだとKimは説明する。

「我々は株式を公開する計画を持っていて、それに向かって動いていたが、株式公開は我々のビジョンを満たさないだろうということに気づいた」とKimは語る。「その代わり、我々はテックプラットフォームやインフラへの何年にもわたる投資という、複数の長期的投資を行うことにした」。

それは、自前のトラックやドライバーのネットワークを発展させ、あらゆるレベルのテクノロジーを取り入れ、韓国中の顧客に素早く商品を届けるためのインフラとキャパシティを構築することを意味する。

これにより、Coupangは同日宅配やオーバーナイト配達などができるようになった。Coupangはまた、RocketPayという自前の支払いサービスも持っている。

たとえば、もし親が学校の前の日に子供に新しいレインジャケットが必要だと気づいたとき、午前零時までに注文すれば翌朝7時までにCoupang経由で受け取れる、とKimは説明する。オーバーナイト配達サービスではまた生鮮食品や“数百万”の商品も対象となる、と言う。これにより、Coupangはコールドチェーン物流ネットワークをわずか1カ月で構築した。

“何百万”もの顧客がCoupangのサービスを年間少なくとも50回、つまり毎週利用している、とCoupangは説明する。これは曖昧とした数字であり、全体の顧客ベースのどれくらいを占めているのかはわからない。にもかかわらず、注意を引く事実ではある。

今回の資金の使途について「Coupangは“多くの異なるプラン”を持っている」とKimは明かしたものの、詳細を語るのは避けた。

Kimはメディアのような近隣サービスは除外しなかったーAmazonはビデオや音楽ストリーミングを展開している。彼はまた、Coupangは「韓国以外のマーケット開拓を行うつもりだ」と明らかにしたが、どの国にいつごろといった詳細はまたも語らなかった。

株式を公開するという計画が復活する可能性はあり、その場合は韓国ではなく米国での公開になるかもしれない。しかしKimは、それがいつになるのか「具体的なタイムテーブルはない」としている。

イメージクレジット: Coupang (Image has been modified)

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(翻訳:Mizoguchi)

SoftBank、韓国のeコマース大手、Coupangに10億ドルを投資―評価額は50億ドルか

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6月はソフトバンクにとって早くも大忙しの月になっている。評価額10億ドルのフィンランドのゲーム会社、Supercellを事実上買収した翌日(米国時間6/2)、ソフトバンクは韓国最大のeコマース企業、Coupang.に10億ドルをt投資したことを発表した。

Coupangはいわば韓国のAmazonのような存在で、昨年巨額の資金調達を行った。2014年5月にSequoiaが10億ドルの評価額で1億ドルを出資し、12月にはBlackrockがさらに3億ドルを投資している。

CoupangもSoftBankも今回の出資における会社評価額を公表していないが、TechCrunchが得た情報によれば、50億ドルだという。

10億ドルクラブ

この投資でCoupangは評価額が10億ドルを超えるスタートアップのクラブ入りした。しかも同時に、さらにメンバーが少ない(XiaomiとFlipkartなどを含む)1回のラウンドで10億ドル以上を調達したクラブのメンバーにもなった。いったいCoupangのどこがそれほど魅力的だったのだろう?

Coupangのビジネスはいわば「次世代のeコマース」の先駆けだ。同社のアプリは2500万ダウンロードを数えている。韓国の人口が5000万であることを考えると大変な普及率だ。モバイルが売上の75%、サービスへの全トラフィックの85%を占める(ちなみにAmazonは、2014年のクリスマス商戦でモバイル経由の注文が60%だった と発表している)。

またCoupangは独自の物流ネットワークとフルフィルメント・センター群を構築している。消費者への配送の最後を受け持つのは‘Coupangメン’と呼ばれるドライバーとトラックの大部隊だ。

Coupangも当初はサードパーティーの運送業者と契約していたが、Coupangメンの導入によってブランド認知と消費者との会話を格段に向上させることに成功したという。Coupangメンは配達の際にしばしばキャンディーやサンプル商品などを無料で配り、お礼のメモを置いてくるなどの努力をしている。

こうした消費者サービに加えてCoupangは配達が非常に速い。2014年から即日配達(ときには数時間で配達)をスタートさせている。今回のSoftBankの投資と支援により、「フルフィルメントとモバイルアプリの両面でイノベーションが加速される」とCoupangは述べた。シリコンバレー、シアトル、上海、ソウルに所在する同社の研究開発センターには一層のリソースが流れ込むことになるだろう。

SoftBankのバイスチェアマンで元GoogleのNikesh Aroraは声明を発表し、「クーパンは、世界のインターネット企業の中でも非常に成長が著しく、かつ革新的な企業のうちの一つだ。同社は、先端テクノロジーを活用して世界中で展開するEコマース事業における同日配送、モバイルコマース、カスタマーサービスはどうあるべきかという観点において、新しい業界基準を確立することになるだろう」と述べた。

SoftBankはアジアへの投資を加速

今回の巨額の投資は、アジアにおける有望なeコマース企業を傘下に収める最近のSoftBankの戦略の延長線上にあり、それを加速させるものといえる。昨年SoftBankはインドネシアのeコマース、Tokopediaに1億ドルを投じ、インドにおけるAmazonのライバル、Snapdealの6億2700万ドルのラウンドをリードしている。

SoftBankはまたアジア地域におけるタクシー・アプリにも大金を出資している。東南アジアのGrabTaxiは2億5000万ドルをSoftbankから得ている。同社はインドにおけるUberのライバル、Olaの2億1000万ドルのラウンド 、中国におけるDid Dacheの6億ドルのラウンドでもリード投資家を務めている(Did Dacheはその後最大のライバル、Kuaidi Dacheと10億ドルの評価額で合併した)。

〔日本版〕ソフトバンクが発表した日本語プレスリリースはこちら(PDF)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+