“ものづくりワークショップ”でリアル店舗の体験を変えるCraftieが1.1億円を調達

左からグローバル・ブレインの池田翔氏、同社の百合本安彦氏、Craftie代表取締役の康瑛琴氏

アート・クラフト領域に特化したワークショップ予約プラットフォーム「Craftie(クラフティ)」を展開するCraftieは1月23日、グローバル・ブレインと複数の個人投資家より約1.1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドではグローバル・ブレインが1億円を出資。コミュニティファクトリー創業者で現在はメルペイ取締役CPOの松本龍祐氏やエウレカ共同創業者の西川順氏、元nanapi CTOの和田修一氏を含む数名の個人投資家も参加している。

もともとは個人が手芸や絵画、アクセサリー作りなど“ものづくりのワークショップ”を気軽に検索して予約できる場所として2017年3月に正式リリースされたCraftie。現在では「ワークショップを軸に新しい体験やコミュニティを作りたい」というリアル店舗を持つ法人からの問い合わせが増加し、当初に比べてサービスの幅も広がった。

同社では法人向けのサービスを「Craftie Partnership」として正式に提供し、今後さらに拡大させていく計画。今回調達した資金を基にパートナーシップの強化と提供エリアの拡大に向けて、人材採用を進める。

多様なものづくりワークショップを集約したオンラインプラットフォーム

リリース時にも紹介した通り、Craftieはものづくりワークショップを開催する個人や教室と、そこに参加したいユーザーを繋げるプラットフォームだ。

一口にものづくりワークショップと言ってもアロマやアクセサリー、クレイアート、ペーパークラフト、陶芸、染物、絵画、アメイジングクッキーなど、その種類は実に幅広い。Craftieには多様なワークショップが集約されていて、探すだけでなくその場で予約できる。

ワークショップを開催する講師や教室にとっては、熱量のあるユーザーに自分の存在を知ってもらえる場所になる。特に近年は副業のひとつの形として、個人が自分の趣味やスキルを他人に“シェア”するような事例も増えてきた。

例えば語学やプログラミングをレクチャーしたり、エクセルの使い方やプレゼン方法などビジネススキルを伝授したり。ものづくりも例外ではない。

Craftie代表取締役の康瑛琴氏によると現在Craftieには約300人の講師が登録していて、本業を別に持つ人が約1/3ほどを占めるそう。仕事以外の時間を有効活用し、自分の好きな領域のワークショップを開催する。そんな人たちが講師として一歩目を踏み出す場所としても機能し始めているという。

仕組みとしてはスキルシェアのマーケットプレイス「ストアカ」などに近しい部分もあるが、Craftieではものづくり領域に特化してサービスを磨いてきた。現在ワークショップのメニュー数は1000種類ほどまで拡大。このコンテンツを活用して昨年から徐々に取り組み始めたというのが、法人向けのサービスだ。

ワークショップ軸に新しい店舗体験を展開

今回Craftie Partnershipとして正式にサービス化された同社の法人向け事業は、ワークショップを軸にリアル店舗の新しい体験づくりをサポートするものだ。具体的には各クライアントの店舗スペースを活用したコンテンツをCraftieの運営チームが一緒に設計し、Craftieに登録している講師とワークショップを展開していく構造になっている。

今の時代、それこそAmazonや楽天のようなサイトに行けば大抵のものがオンライン上でスピーディーに購入できる。僕自身ここ数年で食料品や一部の生活用品などを除いた多くのものをオンラインで購入するようになったけれど、同じような人もいるはずだ。

だからこそ「単にモノを売るだけではなくそれ以上の価値を出すにはどうしたらいいか、という考えが小売業界では共通認識になっている」と康氏は話す。そして顧客がわざわざ店舗に行きたいと思うような新しい体験のフックとして、ワークショップのニーズが増えているという。

「リアルな店舗における新しい価値を提供したいという企業から問い合わせを頂くケースが増えてきた。店舗、講師、参加者が一緒になって楽しめる1〜2時間のワークショップを実施すると、そこには独自のストーリーや、これまでになかったコミュケーションが生まれる。顧客とは通常のショッピングよりも長い時間付き合うことができ、新しい関係性やコミュニティ作りのきっかけになる」(康氏)

すでにFlying Tiger Copenhagenや蔦屋家電のほか、全国規模で店舗を展開する企業がクライアントになっている。康氏の話ではこれからワークショップを実施する企業も含め「今集客に苦しんでいるというのではなく、先を見据えてお店の新しい体験づくりにチャレンジしようという背景で取り組んでいる企業が多い」そう。そのため企業内で集客数1位の店舗など、すでに人気のあるスペースと連携することも珍しくない。

法人向けのサービスはもともとスケーラブルなイメージがわかなかったため、Craftieリリース当初はあまり力を入れてこなかった領域だ。ただ昨年ごろからパイロット版としていくつか事例を積み上げる中でナレッジも蓄積され、収益が上がるモデルも見え始めてきたという。

Craftieでは単発のワークショップを企画するのではなく、月額定額制のサブスクリプションモデルでクライアントと中長期的に渡って毎月ワークショップを実施していく。継続的に実施することが店舗に根付くコミュニティを構築することに繋がるほか、エンドユーザーに質の高い体験を提供することにも繋がるからだ。

約2年に渡って、様々なものづくりワークショップに携わってきたCraftie。そこで培ってきたワークショップ運営やコミュニティ作りに関するノウハウやデータが参加者の満足度を高める上では欠かせないものであり、クライアントからの問い合わせが増えてきていることにも繋がっていると言う。

「企業を巻き込んだ一連の体験づくりをスケーラブルにやっていけるかが今後の肝になる。いかにビジネスとしてきちんと成立するモデルを作り、付加価値の高いサービスにしていけるか。単発のイベント屋さんではなく、ブランドのコミュニティ作りを後押しするサービスとして、いろいろな店舗へ広げていきたい」(康氏)