3Dプリンティングはもうあらゆる産業分野で利用されているので、いまさらデモをしなくも誰もがその有用性を知っている。しかし、だからといってデモがなくなるわけではない。そのほとんどは「またか」というものだが、中には驚かされるケースもある。その1つが高さ1ミリメートルのダビデ像だ。ミケランジェロの有名な彫刻を、新しいテクノロジーを用いて銅で出力したのだという。
タイニー・ダビデと名づけられたミニ彫刻は、スイス連邦工科大学チューリッヒ校のスピンオフ企業、Cytosurge(サイトサージ)からさらにスピンオフしたExaddon(エクサドン)が製作した。幅は1ミリメートルの数分の1、重量は0.002ミリグラム(2マイクログラム)しかない。
用いられた3プリンターはCERESと呼ばれ、イオン化された液状の銅の微粒子を噴霧する。噴霧量は1秒あたりフェムトリットル(1000兆分の1リットル)のレベルだという。直径が1000分の1ミリメートル程度の物体まで出力可能で、タイニー・ダビデのプリントには12時間かかった。もっと簡単な構造の物体であれば、もちろんずっと速くできたはずだ。
出力された像のディテールは驚くべきものだ。当然、ミケランジェロの傑作をこのサイズで100%表現するのは不可能だが、髪の毛や筋肉まで見事に再現されている。仕上げのバフがけや外部の支持構造などはいっさい必要としなかった。
もちろん高度なリソグラフィーの技術を使えば、ナノメートル級の微細な構造を作ることはできるが、これは半導体チップ製造でもわかるとおり、途方もなく金のかかる大掛かりな設備を専門家が細心の注意を払って操作しなければならない。3Dプリンターなら、データさえ与えれば任意の形状の3Dプリントを、室温で数時間のうちに出力できる。
もっともExaddonの専門家によれば、やはりノウハウが必要だったようだ。
ExaddonのGiorgio Ercolano(ジョルジオ・エルコラーノ)氏のブログ記事によれば「タイニー・ダビデは、ミケランジェロの傑作の単なるミニチュアではない。製作に使う3Dコンピュータモデルの元データにはオープンソースのCADファイルを利用したが、3D出力が可能なマシンコードに変換には、3Dプリンティングのプロセスに関する深い理解が不可欠だった。我々は元データを微少部分へとスライスしたが、ここにCERESの積層マイクロ製造システムの核心部分がある」という。
もちろん縮小化にも限界があり、マイクロメートルのサイズでは、ダビデ像は子供用の色粘土で作ったヘビのように見える。しかし、いずれはこうしたサイズでも3D出力できるようになるのだろう。
Exaddonのテクノロジーは Micromachinesに詳細が発表されている。最初に開発されたのは数年前だが、改良を重ねて当時よりはるかに進歩しているということだ。
(原文へ)