機械学習アプリケーションを展開する際の問題点の1つは、高い計算能力を必要とし、コストがかかる傾向があることだ。モントリオールに拠点を置くスタートアップのDeeplite(ディープライト)は、モデル全体のサイズを縮小し、より少ないリソースのハードウェアで動作させる手段を提供することで、この状況を変えたいと考えている。
カナダ時間4月13日、同社は600万ドル(約6億6000万円)のシード資金調達を発表した。ボストンを拠点とするベンチャーキャピタルのPJCがこのラウンドを主導し、Innospark Ventures、Differential Ventures、Smart Global Holdingsが参加した。またSomel Investments、BDC Capital、Desjardins Capitalも参加している。
DeepliteのCEOで共同創業者のNick Romano(リック・ロマーノ)氏によると、同社の目標は、実行に大量の計算能力と大量のメモリを必要とし、速いペースで電力を消費する傾向のある複雑なディープニューラルネットワークを、少ないリソースでより効率的に実行できるようにすることだという。
「私たちのプラットフォームは、そうした学習モデルを新しいフォームファクターへと変換し、制約のあるエッジハードウェアに展開することができるのです」とロマーノ氏は説明する。それらのデバイスは、携帯電話やドローン、あるいはRaspberry Pi(ラズベリーパイ)のような小さなものにすることも可能だ。つまり、開発者は、現在のほとんどのケースでは不可能な手段でAIを導入することができるのだ。
同社が開発したNeutrino(ニュートリノ)というプロダクトは、モデルの展開の仕方や、モデルを全体のサイズを小さくし実運用に必要なリソースを削減するために、どの程度の圧縮を行うべきかを利用者が指定することを可能にする。基本アイデアは、極めて限られたリソースの下で、機械学習アプリケーションを実行しようというものだ。
最高製品責任で共同創業者のDavis Sawyer(デイビス・ソーヤー)氏は、同社のソリューションが活躍するのは、機械学習モデルが構築されてトレーニングが終わり、実運用の準備が整った後だという。ユーザーはモデルとデータセットを提供し、より小さなモデルをどのようにビルドするかを決めることができる。そのためには、許容範囲内で精度を多少落とす可能性もあるが、主に行われるのは、圧縮レベルの選択(すなわちどれだけモデルを小さくするか)だ。
「より安価なプロセッサーへ展開できるように、圧縮することでモデルのサイズを小さくすることができます。中には、200MBが11MBになったり、50MBが100KBになったりする事例もあります」とソーヤー氏は説明する。
PJCで今回の投資を担当しているRob May,(ロブ・メイ)氏は、チームならびに、スタートアップが開発しようとしている技術に感銘を受けたという。
「AI、特に深層学習をリソースに制約のあるデバイスに展開することは、AI人材やノウハウが乏しい業界で幅広い課題となっています。エッジAIが主要なコンピューティングパラダイムとして成長し続ける中で、Deepliteの自動化されたソフトウェアソリューションは、大きな経済的利益を生み出すでしょう」とメイ氏は声明の中で語っている。
この会社のアイデアは、モントリオールにあるインキュベーターTandemLaunch(タンデムローンチ)にルーツがある。Deepliteは2019年半ばに会社として正式に立ち上げが行われ、現在の従業員は15名だが、2021年中にその数を倍増させる予定だ。会社を創業するにあたり、創業者たちは多様性と包括性のある組織を作ることを重視していると、ロマーノ氏はいう。
彼は「私たちは、確実に多様で包括的な方法で、適切な人材を見つける戦略を採用しています。それが組織のDNAなのです」と語る。
この先可能になったときには、モントリオールとトロントに従業員同士のハブとなるオフィスを設置する予定だが、オフィスに出社する必要はない。
「私たちがすでに議論済ですが、基本的にはみんなが自由に出入りできるようにし、かつてのように大きなオフィススペースを必要とするとは考えていません。皆、自分の都合に合わせて、リモートやバーチャルで仕事をすることができるようになります」とロマーノ氏はいう。
カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Deeplite、機械学習、資金調達、エッジAI、カナダ
画像クレジット:Andrii Shyp / Getty Images
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(文:Ron Miller、翻訳:sako)