DNAベースのデータストレージプラットフォームを開発中するCatalogが約39億円調達

膨大な量の高密度データや情報オーバーロードを処理するのにエネルギー消費をともなうフラッシュドライブやハードドライブなどのような従来型の電子メディアは、ストレージ容量が限られているためにセキュリティ問題で脆弱だ。格納されたデータを移送するとなれば、高額の費用が発生するという問題もある。

従来型の電子メディアの問題を解決しようと、ボストンのスタートアップCatalog(カタログ)は共同創業者でCEOのHyunjun Park(ヒョンジュン・パク)氏を含むマサチューセッツ工科大学の科学者らによって2016年に創業された。同社は合成DNAを使ってエネルギー効率が良く、価格競争力もあり、そしてより安全なデータストレージと計算プラットフォームを開発している。

同社は米国時間9月30日、DNAベースのデータ計算ツールの開発を継続するためにシリーズBラウンドで3500万ドル(約39億円)を確保したと発表した。

韓国のHanwha Impactが同ラウンドをリードし、香港を拠点とする既存投資家である李嘉誠氏のHorizons Venturesも参加したとCEOのパク氏がTechCrunchとのインタビューで語った。

今回調達した資金は、Catalogの合成DNAで動く計算プラットフォームの開発を加速させるのに使用される。このプラットフォームはデータ管理や計算、自動化を可能にする。また今後2、3年で同社は計算機能の開発にさらに資金を注ぐ計画だとパク氏は話した。プラットフォームは2025年ごろに商業化される見込みだという。

DNAストレージアライアンスの会員であるCatalogは引き続き業界が成長できるよう、DNAベースの計算システムの協力者やパートナーを支援するとパク氏は話す。

シリーズBにより、同社の累計調達額は約6000万ドル(約67億円)になった。パク氏はバリュエーションの公開は却下した。同氏によると、シリーズBはHorizons Venturesがリードした2020年の1000万ドル(約11億円)のシリーズA、そしてNew Enterprise Associates、OS Fund、その他の投資家が共同でリードした2018年の900万ドル(約10億円)のシードラウンドに続くものだ。

DNAをデータストレージやコンピューティングの媒体として利用するというコンセプトは何年も前からあるが、その多くは学術的な領域に追いやられている。Catalogは、DNAをアルゴリズムやアプリケーションに組み込む手段を発見し、独自のデータエンコーディングスキームを用いて自動化することで、広く商業的に利用できる可能性を見出している。

「DNAへの情報書き込みに対するCatalogの独自のアプローチ、すなわち符号化スキームは、膨大な量の情報を保存するのに最小限の新規DNA合成を必要とするという革命的なものです。というのも、DNA合成の低スピード・高コストはこれまでこの分野のボトルネックだったからです」とパーク氏は説明した。

Catalogが独自に開発したDNAライターの「Shannon」は1秒で何百、何千もの化学反応を処理できる。フル稼働で1秒あたり10MB超のスピードで書き込むようデザインされており、1回の駆動で最大1.63TBの圧縮データを保存できる。

Catalogのテクノロジーは、金融サービスにおける不正検知、製造業における欠陥発見のための画像処理、エネルギー分野における地震処理などのデジタル信号処理などへの応用が期待されています。

「CatalogはIT、メディア、エンターテインメント、エネルギー部門などの企業と協業してきました。これらの取り組みを通じて、さまざまな産業やヘビーデータユーザーで当社の(DNAベースのデータストレージと計算の)プラットフォームが適用性を持つことがあることがわかりました」とパク氏はいう。そして共同開発パートナー、コラボレーターとして協業している12社ほどが米国と欧州を拠点としている、と付け加えた。

IT産業は過去数年、アクセラレーター(GPU、FPGA)や量子コンピューター、超並列コンピューターなど、目的にかなうテクノロジーの急増を目の当たりにしてきた。DNAベースのコンピューターの出現はこのポートフォリオを補完するものだ。同社の声明によると、DNAベースのコンピューターは低エネルギー、空間的に密、そして安全なコンピューティングで、電子システムの現実と限界とは無縁なものだ。

「基準点として、高パフォーマンスのコンピューティングマーケットは現在年400億ドル(約4兆4580億円)で、急速に成長しています」。グローバルのマーケット規模について尋ねると、パク氏は言った。

「Microsoft(マイクロソフト)、Twist(ツイスト)、Illumina(イルミナ)、Western Digital(ウェスタン・デジタル)などの企業が2021年、DNAストレージアライアンスを設立しました。Catalogはこの組織のメンバーであり、計算に注力することでこれを次のレベルにもっていき、企業がそうでもなければ廃棄したり冷たいストレージに放置したりするデータから事業価値を生み出すことができるようにします」とパク氏は語った。

「Catalogのテクノロジーは、大量のデータの蓄積や保存だけでなく、より重要なことにデータの有効活用の問題を解決する実行可能な方法を示しています」とHanwha Impact Partnersの副社長Nick Ha(ニック・ハ)氏は述べた。

Catalogは2021年初め、アジアでの事業拡大のために完全子会社として韓国・ソウルにオフィスを開設したとパク氏は話した。

画像クレジット:catalog

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

DNAベースのデータストレージプラットフォームを開発中するCatalogが約39億円調達

膨大な量の高密度データや情報オーバーロードを処理するのにエネルギー消費をともなうフラッシュドライブやハードドライブなどのような従来型の電子メディアは、ストレージ容量が限られているためにセキュリティ問題で脆弱だ。格納されたデータを移送するとなれば、高額の費用が発生するという問題もある。

従来型の電子メディアの問題を解決しようと、ボストンのスタートアップCatalog(カタログ)は共同創業者でCEOのHyunjun Park(ヒョンジュン・パク)氏を含むマサチューセッツ工科大学の科学者らによって2016年に創業された。同社は合成DNAを使ってエネルギー効率が良く、価格競争力もあり、そしてより安全なデータストレージと計算プラットフォームを開発している。

同社は米国時間9月30日、DNAベースのデータ計算ツールの開発を継続するためにシリーズBラウンドで3500万ドル(約39億円)を確保したと発表した。

韓国のHanwha Impactが同ラウンドをリードし、香港を拠点とする既存投資家である李嘉誠氏のHorizons Venturesも参加したとCEOのパク氏がTechCrunchとのインタビューで語った。

今回調達した資金は、Catalogの合成DNAで動く計算プラットフォームの開発を加速させるのに使用される。このプラットフォームはデータ管理や計算、自動化を可能にする。また今後2、3年で同社は計算機能の開発にさらに資金を注ぐ計画だとパク氏は話した。プラットフォームは2025年ごろに商業化される見込みだという。

DNAストレージアライアンスの会員であるCatalogは引き続き業界が成長できるよう、DNAベースの計算システムの協力者やパートナーを支援するとパク氏は話す。

シリーズBにより、同社の累計調達額は約6000万ドル(約67億円)になった。パク氏はバリュエーションの公開は却下した。同氏によると、シリーズBはHorizons Venturesがリードした2020年の1000万ドル(約11億円)のシリーズA、そしてNew Enterprise Associates、OS Fund、その他の投資家が共同でリードした2018年の900万ドル(約10億円)のシードラウンドに続くものだ。

DNAをデータストレージやコンピューティングの媒体として利用するというコンセプトは何年も前からあるが、その多くは学術的な領域に追いやられている。Catalogは、DNAをアルゴリズムやアプリケーションに組み込む手段を発見し、独自のデータエンコーディングスキームを用いて自動化することで、広く商業的に利用できる可能性を見出している。

「DNAへの情報書き込みに対するCatalogの独自のアプローチ、すなわち符号化スキームは、膨大な量の情報を保存するのに最小限の新規DNA合成を必要とするという革命的なものです。というのも、DNA合成の低スピード・高コストはこれまでこの分野のボトルネックだったからです」とパーク氏は説明した。

Catalogが独自に開発したDNAライターの「Shannon」は1秒で何百、何千もの化学反応を処理できる。フル稼働で1秒あたり10MB超のスピードで書き込むようデザインされており、1回の駆動で最大1.63TBの圧縮データを保存できる。

Catalogのテクノロジーは、金融サービスにおける不正検知、製造業における欠陥発見のための画像処理、エネルギー分野における地震処理などのデジタル信号処理などへの応用が期待されています。

「CatalogはIT、メディア、エンターテインメント、エネルギー部門などの企業と協業してきました。これらの取り組みを通じて、さまざまな産業やヘビーデータユーザーで当社の(DNAベースのデータストレージと計算の)プラットフォームが適用性を持つことがあることがわかりました」とパク氏はいう。そして共同開発パートナー、コラボレーターとして協業している12社ほどが米国と欧州を拠点としている、と付け加えた。

IT産業は過去数年、アクセラレーター(GPU、FPGA)や量子コンピューター、超並列コンピューターなど、目的にかなうテクノロジーの急増を目の当たりにしてきた。DNAベースのコンピューターの出現はこのポートフォリオを補完するものだ。同社の声明によると、DNAベースのコンピューターは低エネルギー、空間的に密、そして安全なコンピューティングで、電子システムの現実と限界とは無縁なものだ。

「基準点として、高パフォーマンスのコンピューティングマーケットは現在年400億ドル(約4兆4580億円)で、急速に成長しています」。グローバルのマーケット規模について尋ねると、パク氏は言った。

「Microsoft(マイクロソフト)、Twist(ツイスト)、Illumina(イルミナ)、Western Digital(ウェスタン・デジタル)などの企業が2021年、DNAストレージアライアンスを設立しました。Catalogはこの組織のメンバーであり、計算に注力することでこれを次のレベルにもっていき、企業がそうでもなければ廃棄したり冷たいストレージに放置したりするデータから事業価値を生み出すことができるようにします」とパク氏は語った。

「Catalogのテクノロジーは、大量のデータの蓄積や保存だけでなく、より重要なことにデータの有効活用の問題を解決する実行可能な方法を示しています」とHanwha Impact Partnersの副社長Nick Ha(ニック・ハ)氏は述べた。

Catalogは2021年初め、アジアでの事業拡大のために完全子会社として韓国・ソウルにオフィスを開設したとパク氏は話した。

画像クレジット:catalog

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi