ビジネス向けコミュニティーツールのSlackはDPO(直接上場)を行う予定だ。証券会社の一括引受けにより上場のための新株を発行するという通常の方式ではなく、昨年のSpotifyの上場と同様、発行済株式を直接投資家に販売する。
SlackがSEC(証券取引委員会)に提出したS-1申請書では販売予定株式総額は1億ドルとなっているが、これは仮の数字だろう。
一方、申請書に記載された財務情報によれば、今年1月31日を終期とする会計年度の純損失は1億3890万ドル、収入は4億60万ドルだった。その前年度は赤字1億4010万ドル、収入2億2050万ドルだった。
Slackでは巨額の赤字を計上している理由を「市場シェアを獲得し会社を急成長させるための先行投資」によるものと位置づけ、収入に対する赤字の率が対前年比で減少していることを指摘している。
またSlackは昨年11月から今年1月にかけての四半期で一日あたり1000万アクティブユーザーを得ており、60万の会社その他のユーザー組織のうち、8万8000が有料プランに加盟していることを明らかにした
申請書によれば、Slackはもともと自社内の連絡ツールとして開発されたのだという。同社は自社のサービスについて次のように述べている。
2014年に一般公開して以来、世界の無数の組織がSlackが提供するようなサービスをを必要としていたことが明らかになった。そのためわれわれのマーケティングは主として口コミの推薦によっている。組織におけるSlackの導入はほぼすべてボトムアップであり、まずエンドユーザーが利用を始めている。そうであっても(われわれ自身も含めて) Slackというサービスの本質を説明することは難しい。「チーム活動のOS」「共同作業のハブ」「組織を結合させる何か」その他さまざまな呼ばれ方をしているが、ビジネステクノロジーのまったく新しいレイヤーであり、まだ充分に定義されているとはいない。
同社はビジネスの共同作業のためのコミュニケーションツールの世界市場の総額は280億ドル前後と推定している。Slackの成長戦略は機能を拡充し続けることによって既存のユーザー企業内の地位をさらに強固にしつつ、Slackを中心とするデベロッパーエコシステムを確立することだという。
申請書が触れているリスク要素は他のインターネット企業の場合とあまり変わらない。巨額の赤字を計上している以上、現在の成長率が維持できない事態となれば経営は深刻な問題を抱えることになる。またヨーロッパのGDPR(一般データ保護規則)も.リスクとなリ得る。
Slackはこれまでに総額で12億ドルの資金調達を行っている。Crunchbaseのエントリーによれば、大口投資家はAccel、Andreessen Horowitz、Social Capital、ソフトバンク、Google Ventures、Kleiner Perkinsなどだ。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)