煩雑な輸出・輸入通関手続きのデジタル化を狙うKlearNowが17億円を調達

税関は国際サプライチェーンの篩(ふるい)だ。しかし、その重要な役割にもかかわらず、貨物仲介業者の通関手続きは、手作業のデータ入力に依存した低速で不透明なプロセスとなりエラーが発生しやすいものになりがちだ。

米国シリコンバレーを拠点としたKlearNow(クリアナウ)は、通関手続きをデジタル時代に対応させることを目的としたプラットフォームを開発した。現在1600万ドル(約17億円)の新たな資金調達により営業する地域を拡大し、ますます複雑化する輸出・輸入分野や、時間的制約のある出荷業務にも対応できるように製品を改善しようとしている。

同社は、米国への輸入を処理するための認証を商品を問わず取得している。そして現在カナダと英国での認証を間近に控え、オランダ、ベルギー、スペイン、ドイツへの拡大を計画している。KlearNowは20社強の顧客を抱えている。

シリーズAの資金調達ラウンドは、GreatPoint Venturesが主導し、Autotech Ventures、Argean Capital、そしてMonta Vista Capitalも参加した。GreatPoint VenturesのマネージングパートナーであるAshok Krishnamurthi(アショク・クリシュナムルティ)氏が、KlearNowの取締役会に加わる。またAutotech VenturesのDaniel Hoffer(ダニエル・ホッファー)氏が取締役会オブザーバーとして参加する。「これは、世界的な商取引の鍵である昔ながらの産業を変革する、大切なチャンスです」とクリシュナムルティ氏は声明で述べている。

貨物のエコシステムには、工場や港湾当局に始まり、定期船やラストマイル配送会社に至るまで、さまざまなプレーヤーが参加していて、それぞれが独自のシステムを持っている。「データを送信できる単一のシステムはないのです」と、KlearNowの創業者でCEOのSam Tyagi(サム・ティアギ)氏は最近のインタビューで語っている。「そのため、誰でも読むことのできるPDFやPNGといったローテクへ、わざわざレベルを引き下げているのです。通関業者はこれらのドキュメントを入手して印刷します。つまり、その時点でデジタルではなくなるということです」。

「通関業者のオフィスに行くと、まるで古い医者のオフィスのように見えます。そこでは、それぞれのフォルダーがすべて整然としていて、本当に整理されてはいるのですが、手作業に頼った仕事が中心で行われているのです」と彼は付け加えた。ティアギ氏によれば、業者はそうした印刷されたドキュメントを読み取って、そこから税関と国境警備隊のシステムに送信するための別のシステムに、情報をタイプ入力するのだという。

「それは手作業中心で、非常に小規模で、他とは隔絶されたシステムとして動いているのです」とティアギ氏は語る。「このため顧客や輸入業者にとって可視性がなく、手作業が介在することで非常にコストがかかっているのです」。

KlearNowは手作業への依存を排除するデジタル通関プラットフォームを開発した。これを使えば、輸入業者、通関業者、および運送業者を、現地の税関と連携させながら、単一のデジタルプラットフォーム上で、リモートおよびリアルタイムでビジネスを行うことができる。プラットフォームはこのプロセスを自動化してエラーを排除し、通関手続きにかかる時間を短縮する。KlearNowは、通関時間を数時間から数分に短縮できると述べている。

このスタートアップはまた、そのプラットフォームが、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックによって引き起こされたこの遠隔作業時代中で、新しい顧客を見つけられることに賭けている。通常は中央の事務所に赴き、物理的な事務処理を処理しなければならない通関業者たちは、いまやそのタスクを自宅から完了する必要がある。

「こうした人たちは遠隔作業は不可能なのです、なぜなら、しばしば大判プリンターにアクセスする必要があるから」とティアギ氏は言う。同社は、そのデジタルプラットフォームを使うことで、こうした新しい遠隔作業者のような新規顧客を、国際通関のために通関業者に直接送り込むことができると語る。

ティアギ氏によれば、同社は新型コロナウイルスへの対応のために、多くの必要な医療品を通関させるために、FDA関連の書類申請を迅速化するといった新機能の追加を行っており、マスクや手指消毒器、人工呼吸器を輸入している非営利団体のために、一時的な無料通関サービスも提供しているという。

画像クレジット: Klearview

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(翻訳:sako)

日本を世界最高水準の技術力国家へ「日本CTO協会」が発足、企業の壁を超えて知識や経験を共有

日本を世界最高水準の技術力国家へ——。そんな大きな目標を掲げる日本CTO協会が発足した。

一般社団法人として9月2日に設立されたこの協会にはベンチャーやスタートアップのCTO経験者複数名が理事として参画。代表理事を務める元ミクシィ取締役CTO / 現レクター代表取締役の松岡剛志氏を筆頭に、かなり豪華な顔ぶれだ(以下松岡氏以外のメンバーは理事として参画)。

  • レクター代表取締役 松岡剛志氏
  • DMM.com CTO 松本勇気氏
  • GMOペパボ 取締役CTO 栗林健太郎氏
  • VOYAGE GROUP CTO / レクター 顧問 小賀昌法氏
  • カーディナル 代表社員 安武弘晃氏
  • グリー 取締役上級執行役員CTO 藤本真樹氏
  • クレディセゾン 取締役 CTO 小野和俊氏
  • ビズリーチ 取締役CTO兼CPO / レクター 取締役 竹内真氏
  • メルカリ 執行役員CTO 名村卓氏
  • ヤフー 取締役 常務執行役員 CTO 藤門千明氏
  • レクター 取締役 広木大地氏

CTO協会の前身は2013年に本格スタートした「CTO会」だ。松岡氏がミクシィのシステム本部長に就任した2012年に、他社の先輩らに教えを乞う会を開いたことがきっかけ。その後“CTOの互助会”のような位置付けで10人程度からスタートしたこのコミュニティも現在は400名規模までに拡大している。

今回このCTO会を発展させる形でCTO協会を設立した目的の1つは、よりフラットな形でこのコミュニティを進化させていくこと。リアルなイベントも含めて最新の技術や組織マネジメントのナレッジを、企業の壁を超えて共有する場を定期的に設ける計画だ。

また並行してDX企業の基準づくりや調査・レポート活動にも力を入れていくという。

軸は「DXの基準作成」「調査・レポート」「コミュニティ」

改めて整理するとCTO協会の軸となる活動は「DX企業の基準作成」「調査・レポート」「コミュニティ運営」の3つだ。

近年「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉が広く使われるようになり、テクノロジーの活用に取り組む企業が増えてきている。これについては経産省も昨年「DXレポート」を公開し、DXが実現できない場合のリスクや具体的なDX実現シナリオなどを記した。

松岡氏は2016年にCTO経験者4名で技術戦略コンサルファームのレクターを立ち上げ、様々な企業を技術面からバックアップしてきたが「日本全体で見るとまだまだ十分にITを活用できておらず、技術水準が高いとはいえない」と危機感を持っている。

そこでCTO協会では各社が現状を可視化できるような「DX企業の基準」を作成する。松岡氏によると、もともとレクターで保有していた技術組織の状態を図るサーベイの商品を協会に帰属させ、理事を中心としたCTO陣でブラッシュアップした上で公開する予定だ。

「そもそもDXの度合いを測る具体的な基準がないので、現場で使えるものを提供していきたい。『あの会社は60点なのにうちは40点だった』という形で基準が明確になれば、それを基に議論したり改善することもできる。この基準は時代の変化に応じてどんどんアップデートされていくものだと考えているので、随時更新していくことを目指したい」(松岡氏)

具体的には「プロダクトサーベイ」「チームサーベイ」「コーポレートサーベイ」という切り口から、開発者だけでなく企業全体のカルチャーまでを測定する。ゆくゆくは各社がセルフアセスメント結果をネット上で公開する仕組みを作りたいという。

そうすればスコアが高い企業に優秀な人が集まるようになり、各社が競ってスコアをあげようとすれば日本企業全体で技術の活用も加速するという考えからだ。

日本CTO協会で代表理事を務める松岡剛志氏

また2つ目の柱として「最新の技術トレンド」や「オープンソースの変化」などを調査結果やレポートとして公開することも計画している。現時点では会員にアンケートをとって作成した白書のようなものや、国外のレポートを取り寄せ翻訳したコンテンツを想定しているとのこと。将来的には政策提言も見据える。

そして最後の柱が冒頭でも触れたコミュニティの運営だ。前述した通り松岡氏は以前からCTO会を通じてCTO同士のノウハウ共有に取り組んでいたが、規模が大きくなるに連れて議論が希薄化し、当初ほどの熱量を保てなくなったことを課題に感じていた。

2017年からはレクターを母体として会を運営する形になっていたため「もっとピュアな形で、みんなの互助会としてやりたい」という気持ちも強くなった。

そこでCTO協会としてレクターと切り離すことを決断。CTOが集うコミュニティとして1000人規模を目指す一方で、業種やテーマごとにより密なコミュニケーションを行う分科会やワークショップも並行して実施し、活発に議論や質疑ができる空間を作る。

今の所は大規模なイベントを半年ごと、分科会やワークショップを月に一度を目安に開催する予定。オンライン上で交流ができるグループも設ける。

ちなみに松岡氏が先日中国のCTO協会が開催したイベントに参加したところ「設立3年目にも関わらず2日間で1000人規模のCTOが参加して盛り上がっていた」そう。日本でもそれに負けないくらいの熱量高いコミュニティを作っていきたいと刺激を受けたという。

今後アップデートしていく可能性もあるようだが、現時点では3年後のビジョンとしてDX企業の基準が完成し、多くの企業が自社の結果を公開している状況を目指す方針。そのタイミングでは多くの経営者が必ず読んでいるようなレポートを手がけ、複数のチームが政策提言に動き、エスタブリッシュな企業のCTOも参加する活発なコミュニティができているのが1つの理想だ。

その先の10年後のビジョンとしては「理事の誰かが日本のDX担当大臣になっている」という大きな目標も掲げている。

日本CTO協会では本日より個人・法人会員の募集を始め、2020年までに個人会員400名、 法人会員100社を目標にしていくとのこと。企業の壁を超えたCTOのコラボレーションからどのようなものが生まれていくのか、CTO協会の今後の活動に注目だ。