動きをトラッキングするハイテク衣服、東大発ベンチャーXenomaが2億円調達

スマートアパレル「e-skin」を展開する東大発ベンチャーのXenomaは9月27日、東京大学協創プラットフォーム開発Beyond Next Ventures国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)を引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は2億円だ。

以前にもTechCrunch Japanで紹介したe-skinは、通常の服のような着心地でありながらユーザーの動きをトラッキングできる“IoT衣服”だ。

e-skinに使用されているのは、Xenomaが開発した「布状電子回路基板Printed Circuit Fabric(PCF)」と呼ばれる変形・伸縮可能な電子回路基盤。高い引張耐久性を持つだけでなく、洗濯にも耐える。

「e-skin Shirt」という名のTシャツをはおり、胸の部分にコントローラーとなる「e-skin Hub」を取り付けて使用する。Shirtには14個の伸縮センサーが搭載されていて、Hubには加速度計、ジャイロセンサー、6軸のモーションセンサーが備わっている。Bluetooth経由でスマホやPCに接続して、データを取り込む仕組みだ。

e-skinの特徴は、屋外を移動しながらでもユーザーの動きをトラッキングできる点だ。その特徴を生かし、Xenomaは屋外で行なわれるスポーツのゴルフでスイングの正しさを計測する「Golf-Swing」を開発した。

「将来的には人の生体情報ビッグデータから予防医療や安心・安全な社会の実現に貢献することを目指す」(Xenomaプレスリリースより)

Xenomaは、東京大学の染谷研究室およびJST ERATO染谷生体調和プロジェクトからのスピンオフとして誕生したスタートアップ。設立は2015年11月だ。また、2017年9月にはクラウドファンディングプラットフォームのKickstarterでキャンペーンをローンチ。目標額である5万ドルを超える支援を獲得した。

同社はこれまでに、今回も出資に参加したBeyond Next Venturesをリード投資家とする調達ラウンドで1億8500万円を調達している(2016年4月)。

Xenomaはプレスリリースのなかで、今回調達した資金を利用して「プロトタイピングから量産までの一貫した開発力を生かし、様々なセンサーを搭載したカスタマイズe-skinの法人向け受託開発に対応するための体制を強化」するとしている。

個人向けへの提供は2019年をめどに開始する予定だという。

このタトゥーのようなディスプレイは極薄の電子回路保護膜“Eスキン”(E-skin)でできている

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まるでStar Trekに出てきそうだが、バンドエイドよりも薄いフィルムを腕に貼ると、数秒後にそれは、心拍や血糖値などなどに反応してライトアップする。そして数日後には、はがれる。それが、東京大学の研究者たちの目標だ。彼らが発明したのは極薄の“Eスキン”(電子皮膚)で、それが可撓性の電子回路を保護して、皮膚上のディスプレイのようなものを可能にする。

もちろん、皮膚に貼り付ける電子回路は前にもあったし、伝導性のインクで描くやつもあった。しかし回路基板の厚さが1ミリもあれば、可撓性に限界がある。Takao Someya(染谷隆夫)とTomoyuki Yokota(横田知之)が率いるこの研究は、その厚さを大幅に減らす。

このEスキンは、スマート(電脳)なプラスチックラップじゃないか、と冷たく言われるかもしれない。シリコンオキシニトライド(Silicon Oxynitrite)とパリレン(Parylene)の層が極薄の基板を包み、その上に同じく薄くて可撓性のOLEDディスプレイと感光性ダイオード
を載せる。これが皮膚面に広がり、皺にも沿うが、密封性が良いので数日は保(も)つ。それまでの厚いデバイスは、数時間しか保たなかった。

上図のディスプレイは、概念実証である。まだ電源は体温や可撓性電池ではなくて、電極を要する。そしてもちろん、まだ何も読むことはできない。

ペーパーの付録のニュースリリースでSomeyaは、“ディスプレイを体に付着できて、人間の感情や、ストレスと不安の程度を表せたら、どんな世界になるだろうか?”、と問うている。ペーパーは金曜日(米国時間4/15)にScience Advancesに載った

気持ち悪い、と思う人も多いかもしれない。でも、医療や消費者製品の分野には、本格的な応用製品がいくらでもありえる。研究は、われわれをそこに連れて行くことを、目指している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))