Peatixが3周年で流通総額15億円突破、イベント版AdSenseをベータテスト中

テクノに合わせて踊って足でうどんを踏んでこねるという「テクノうどん」という謎のクラブイベントや、字面だけ見るとちょっとエロい図を想像してしまう「ローションズモウ」、ビニール製の巨大ボールに上半身を包まれて安全な体当たりが可能な「バブルサッカー」、あるいは最近各地で流行の兆しを見せている「大人の運動会」――、2011年12月創業のイベント管理・決済サービスの「Peatix」には最近、そんなイベントも増えているという。

3周年を迎えてチケット流通総額は15億円を突破。延べイベント参加者数は50万人以上、開催イベントは2万件を超えた、とPeatixは今日発表した。全体の75%が有料イベント。

Peatixは決済手数料2.9%に加えて決済ごとに70円を徴収している。ざっくり言って1枚チケットが売れるたびに、その4%が売上となるといい、チケットの中央値が2500円だそうだから、「50万人 x 75% x 2500円 x 4%」として勝手に荒っぽく計算すると累計3000〜5000万円の売上。まだ事業としては厳しそうだが、チケット代が3000円とか5000円するような興行イベントではなく、より草の根に近いイベントのロングテールを開拓するという方向性で、2013年2月に決済手数料を2.9%に下げて以来、Peatixのイベント開催実績の推移に勢いがついているようだ。Peatix代表取締役の岩井直文氏は「手数料を下げて効果が出るのに時間がかかった。イベント開催は、年に1度など頻度が低いので、浸透に時間がかかったと見ている」と話す。

イベントジャンルはセミナー・トークショー(26.1%)、ワークショップ(14%)、音楽ライブ・フェス(12.8%)が上位3位で50%以上を占める。その一方、冒頭にあげたような、Peatix運営側が驚くような種類のイベントや、歓送迎会、結婚式二次会といった「幹事」の個人利用も増えているのだという。「大規模イベントのフリンジイベント(付随して開催される小規模イベント)でも良く使われている」(岩井氏)

新規ユーザーの3分の2は口コミで、「最近ようやく1日100イベントという数字になってきた。手応えを感じている」(岩井氏)。スタートアップらしく、当初はPeatix営業チームが訪問して獲得するイベントが多かったものの、今では口コミなどでオーガニックに増えるイベントが全体の6割程度となっているそうだ。

ロングテールをつかむ、という意味でも手応えを感じているそうで、たとえばPeatix上で「スポーツイベント」に分類されるのは、スポーツ観戦のような興行チケットというよりも、ヨガ教室やスポーツのセミナー、あるいは自転車メーカーの企業イベント、大人の運動会、バブルサッカーといったといった幅広いイベントが出てくるという。

Peatixは大規模イベントではなく、こうしたロングテールのイベント市場をつかむことで、新しい市場を開拓しようとしている。

こうした小さなイベントの主催者に対してPeatixは、イベントページを作ったり、決済サービスを利用するハードルを下げているわけだが、それに加えて営業リソースがないケースでも、イベントスポンサーをマッチする仕組み「Peatixイベントアド」を提供予定という。現在ベータ版だが、目指すのは「イベント版のAdSense」。

スポーツ系のイベントにリーチしたい飲料系メーカーのマーケターは、個別イベントを探して協賛するのではなく、Peatix上の小さなイベント群に対してまとめて協賛するといったことができるようになる。現在は単純なキーワードによる検索のインターフェースを内部的に試している段階だが、「興味を持っているスポンサーにダッシュボードの解放を考えている。イベント種類や場所を選べるようにする」という。このPeatixのイベントアドでは、1つのイベントに協賛すると、協賛企業は5つの接点でエンドユーザーにブランドや商品を訴求できるという。イベント告知ページへのロゴ掲載(イベント参加者の5倍程度のユーザーが閲覧する)、開催前の2度の通知メールでのバナー掲載、デジタルクーポンの配布(開封率はベータ版で5、6割程度)、開催後のメール。これまでの事例には以下がある。

Babyと一緒に!代官山おでかけツアー 10月開催
「リスカン!~Listen&Respect!!! 春の菅野よう子祭り~ 」

両イベントはだいぶ性質が違い、協賛企業も散歩イベントでは地元自転車会社が入っていたりする。このほかの事例でデジタルクーポンの配布例だと、Uberのチケットなどの事例があるという。

広告効果の精度を高めるのがイベントアドの課題だ。参加規模やチケット代、あるいはイベントページの閲覧数だけでは見えてこない「良いイベントなのかどうか」というのを判定していく部分は「カンに頼ってる面もある。ちゃんと人が動くイベントの価値が高いことは分かっている」(岩井氏)という。この部分を、いずれはアルゴリズム的に自動化していく必要があるというのも、AdSenseに似ているのかもしれない。

Peatixは2012年7月に500 Startups、DGインキュベーション、伊藤忠テクノロジー・ベンチャーズ、個人投資家から100万ドルのシード資金を調達。その1年後の2013年7月にはフィデリティ・ジャパンなどからシリーズAラウンドとして300万ドルを調達してアメリカとシンガポールに進出している。すでに国外でのチケット流通量は15%なっていて、特にシンガポールでは広く受け入れられているという。英語圏から来ていて、競合のEventbriteなどに親和性が高い人も多いはず。「そのシンガポールでイケるとなると、残りのアジア圏も期待が持てる。TEDxなど特定コミュニティが使ってくれて、そこからその国のコミュニティに広がるパターンが多い」そうだ。

2014年は開催者向けに集客の手伝いをする機能を多く出していく予定という。


日本のイベント切符販売のスタートアップ、PeatixがシリーズAのラウンドで300万ドル調達―アメリカとシンガポールに進出

東京に本拠を置くオンライン・チケット販売のスタートアップ、Peatixはフィデリティ・ジャパンがリードするシリーズAのラウンドを完了し、300万ドルを調達した。

PeatixはアジアのEventbriteを目指しており、各種イベントの主催者にチケットはんbプラットフォームを提供している。2011年5月のサービスのスタート以来すでに1万件のイベントを処理してきたという。

同社はちょうど1年前に100万ドルのシード資金を調達している。投資家は500 Startups、DG Incubation伊藤忠テクノロジー・ベンチャーズ、SurveyMonkeyのCEO、Dave Goldberg〔FacebookのCOO、シェリル・サンドバーグの夫〕などだった。

500 Startupsと伊藤忠テクノロジーは今回のシリーズAのラウンドにも参加している。またフィデリティ・ジャパンのDavid MilsteinがPeatixの取締役に就任した。

今回の増資を機に、Peatixは海外への進出を行う。共同ファウンダー、竹村詠美取締役は家族ぐるみでシンガポールに移住するという。また今日からサービスをアメリカにも拡大する。日本、シンガポール、アメリカで社員を採用する計画だ。現在Peatixの社員は日本に20人、シンガポールに3人、ニューヨークに6人いる。

竹村氏はわれわれの取材に対し、来年には3万から5万のイベントを取り扱うべく計画していると語った。

シンガポールにはSisticという現地のチケット販売で圧倒的なシェアを誇る手強いライバルが存在する。Sisticは主要なイベント会場やイベント・プロモーターとの間で独占的な販売だり契約を結んでおり、 The Business Timesによれば、2010年にはシンガポール市場の60%から70%を押さえていたという。

竹村氏は「PeatixはSisticに正面から競争を挑むつもりはない。日本でもアメリカでも既存の支配的なチケット販売プラットフォームが存在する。Peatixは日本でこの2年間、そうした大手チケット販売会社と直接競争することなく成長を続けてくることができた。伝統的なイベントに適した既存のチケット販売ルートに乗りにくい、オンライン登録に適した非伝統的なイベントが膨大に存在するからだ」と述べた。

ここでいう非伝統的なイベントとは、インディーの主催者によって小規模な会場で行われる各種イベント、勉強会、パーティーなどだ。竹村氏によれば、こうしたイベントの数は急速に拡大しているという。

〔日本版〕シリーズA資金調達についてのPeatixのブログ記事はこちら。こちらはTechCrunch Japanによる紹介記事[jp]PeaTiXはクレジットカード課金でチケットを発行できるイベント作成・管理ツール。 

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+