FacebookはIPOから1年でどう変わったか–12の重要な数字を見る

$FBは$26.25と低迷し、IPO時の$38から相当下げているが、しかし1年前の公開時に比べて企業は大きく成長している。一日のユーザは26%アップ、モバイルの月間ユーザは56%アップ、売上は38%アップだ。先進国では新規登録が枯渇気味だが、成長は順調で天敵も現れず、困難な初年度を無事に生き延びた。

〔以下の各項目のパーセンテージは、とくに記銘のないものは“アップ”を意味します。〕

  • Like(いいね!) – 45億 – 67% – 本年5月の1日平均。2012年8月では27億。
  • 共有コンテンツ数 – 47.5億 – 94% – 本年5月の1日平均。2012年8月では24.5億。

[データと画像はFacebook提供]

Like(いいね!)と共有の増加率はFacebookのユーザ数のそれを上回っており、ユーザのエンゲージメント(参加性)が強いことを表している。Facebookは飽きられつつあるという噂にも反している。Mooreの法則をもじったCEO Zuckerbergの法則によると、人びとの共有数は各年で倍増する。94%はほぼ倍増を意味するから、Markの説は当たっている。この数字の増加は、共有されたコンテンツを見に来るユーザが増えるという意味だから、Facebookの広告収入にとっても重要だ。

そのためFacebookは最近とくに、モバイル体験の参加性アップに努めている。とりわけFacebook Homeは、まだ絶対数は少ないものの、アクティブユーザのFacebook滞留時間を25%上げている。滞留時間が増えれば共有も増える、という算術だ。また人気の高いiOSとAndroidアプリは、HTML5からネイティブアプリに切り替えることによって倍速くなった。これもセッションタイムの増に貢献している。そのほか、コンテンツ特定型のニューズフィードで閲覧密度を高め、 グラフ検索によりデータの付加価値増と(その付加価値への)人びとの貢献度アップを図っている。

iOSとAndroidに関してはモバイルSDKを充実し、いろんなアプリがFacebook上でコンテンツを共有しやすいようにした。Facebookがデベロッパ育成に熱心なのも、そのためだ。デベロッパがwinすればFacebookもwinするという、winwinの関係がある。

  • 月間アクティブユーザ数 – 11.1億 – 23% – 2013年3月。2012年3月では9.01億。
  • 各日アクティブユーザ数 – 6.65億 – 26% – 2013年3月の平均。2012年3月の平均は5.26億。
  • モバイル月間アクティブユーザ数 – 7.51億 – 54% – 2013年3月。2012年3月では4.88億。
  • Instagram – 月間アクティブユーザ数1億 – 2013年2月。

Facebookの新規登録は今でも活発だが、地域によって差がある。2013Q1では、合衆国とカナダでのユーザ一人当たり収益$3.50に対し、インドとブラジルを含む途上国ではわずかに$0.50だ。Facebookのユーザ数が大きく増加しているのは後者の市場だが、増加ぶんがFacebookに持参する新規の‘ユーザ価値’は、したがって年々薄くなっている。

モバイルの成長も、同じ問題を抱える。デスクトップでは最大7つの広告を表示できるFacebookも、モバイルの小さな画面では遠慮しなければならない。だから、デスクトップからモバイルに移行するユーザが増えると、ユーザ一人当たりの広告収入は減る〔広告単価は同じか?〕。デベロッパが自分のアプリを見つけやすくするための、ニューズフィードへの課金にFacebookは期待しているが、アプリのローンチ数と途上国のスマートフォンユーザ数は今後増える一方だから、それは確かに成長市場だ。

しかし全体として見ると、Facebookは立ち上げから9年にして、いまだに強力に成長している。Facebookの、まるで空気や水のような遍在性が持つネットワーク効果は、もはや無敵だ。Facebookを、今の‘万人の万人のためのソーシャルネットワーク’の座から引きずり下ろすためには、何かものすごく画期的なものが必要だ。いまのところは、特定のユースケースを売りにする競合サイトはいくつかあっても、Facebookの、インターネットの住民登記所のような普遍的な性格に勝てるものは見あたらない。Facebookは、Instagramの例に見られるように、若干脅威を感じたものは自分で買ってしまうから、なかなかディスラプトされないし、その支配は今後何年も続くだろう。

  • 地域企業 – 1600万 – 100% – 2013年5月の企業ページ数。2012年6月では800万。
  • 投稿の宣伝(Promoted Posts) – 750万 – 2012年6月から2013年5月までの累積。
  • 売上 – 14.6億ドル – 38% – 2013Q1。2012Q1では10.6億ドル。
  • 広告収入 – 12.5億ドル – 43% – 2013Q1。2012Q1では8.72億ドル。
  • 社員数 – 4900 – 38% – 2013年3月。2012年3月では3,539。
  • 有料ゲームプレーヤー数 – 24%あまり – 2012年3月と2013年3月の対比。

明らかにFacebookは、公開企業になってからお金儲けにまじめに取り組むようになった。ゼロだったモバイルの売上は四半期で$375Mになり、総広告収入の30%を占めるに至った。それは昨年後半に立ち上げたモバイルアプリインストール広告に依るところが大きい。デベロッパが自分のアプリをFacebookのニューズフィードで宣伝すると、広告のリンクがユーザをApple App StoreやGoogle Playストアのダウンロードページへ連れて行くのだ。今やこれらのストアは大量のアプリで渋滞しているが、デベロッパたちは、だからなおさら、Facebookにお金を払って自分のアプリを見つけてもらおうとする。

FacebookのFacebook Exchangeも、広告ビジネスとして順調だ。これはユーザのブラウザの履歴を見て、そのユーザ向きと思われる広告を表示する。Facebookは、企業の通常の広告費のほかに、ターゲット広告のための広告予算も取れるようになった。これに対し、eコマースへの進出ともいえるFacebook Giftsは、あまりうまくいってない。Giftsは成績がよろしくないので、より魅力的なギフト/プレゼント買い物サイトへのオーバホールを迫られている。有料ゲーム等のさや取りも、あまり伸びていない。ゲームのモバイル化で今繁盛しているのは、Apple(iOS)とGoogle(Android)の二大陣営だ。Facebookは、いまいち。

Facebookがグラフ検索に広告を出し始めたことは、投資家を喜ばせるかもしれない。今はFacebookの通常のターゲット広告だが、キーワードターゲットを導入すればGoogleのAdWordsという強敵と互角に戦える。今後は地域企業もますます、ネット志向Web志向になってくるから、(彼らのページのある)Facebookにとっては有利な展開になる。今のところソーシャル広告の活用例が少ないが、でもターゲット性の希薄な印刷広告や電話帳広告からFacebookへの移行の流れが、これからはますます太くなる。

というわけで、これからのFacebookのお金儲けのネタはまだまだある。テレビコマーシャル的な自動再生ビデオ広告はまだやってないし(やるという噂はあるが)、モバイルの広告ネットワークも実験を中断してしまった。個人化〜ターゲット化された広告の再利用が進むと、一部のユーザは不快に思うかもしれないが、売上増には大きく貢献する。広告ネットワークでは、Facebookの無尽蔵な個人データが、よそで表示される広告にも利用されるのだから、自分のサイトやページの物理的な限界が打ち破られ、濡れ手で粟のような広告ビジネスとなる。こういうことを考えると、今のFacebookの株価は実体に対してあまりに低すぎる。

しかもFacebookの場合は、お金儲けに精を出しても本業の“世界を結びつける”仕事が阻害されない。広告は(とくにモバイルで)これからもどんどん増えるが、それはユーザがエンゲージメント意欲を削がれるほどの困惑材料ではない

Facebookは、成長し成熟した。毎年ユーザ数が倍増していたぴちぴちのスタートアップでは、もはやない。しかしその成熟は、まだ円熟にはほど遠い。そのデータとユーザアクションが持つ大きな潜在的付加価値は、まだ十分に掘り起こされていない。IPOを無難に切り抜け、ユーザ体験を損なうことはまったくなかったが、世界の基盤的ユーティリティとなった今とこれからは、直接的な金儲けよりも、そのコミュニティの長期的な健康に注力することによって、人びとの人生そのものをシリアスなビジネスに変えていけるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))