フランスのGenymobileは、企業のために統一的なAndroidプラットホームを提供する、という意欲的なミッションを掲げている。同社はこのほど、Alven CapitalとBpifranceから770万ドルを調達した。現在同社は、AndroidデベロッパやITマネージャやOEMにとってAndroidをもっと使いやすいものにするための、3つのプロダクトを作っている。GenymobileはすべてのAndroidデバイスで使えるソフトウェアを作ることによって、よく言われるAndroidの分裂(fragmentation)問題を、過去のものにしようとしている。
協同ファウンダでCEOのArnaud Dupuisは語る、“Genymobileを始めたときは、Androidを選ぶのが当然、という世の中だった。多くのモバイルショップがあり、どこもかしこも、Androidアプリを作ろうとしていた。でも、そういう新興企業にはITの担当者がいない。だからちょうどRed Hatが企業世界でLinuxベンダを代表しているように、うちがAndroidのRed Hatになるべきだ、と考えた。最初のしばらくはコンサルティングで稼いでいたが、その後、うち独自のAndroidエミュレータGenymotionを作った。当時はまだ、Googleのエミュレータはプロフェッショナルな出来栄えではなかった”。
これまでGenymobileは、まさにそのAndroidエミュレータGenymotionで名前を知られていた。フリーミアムとして利用でき、330万のアクティブユーザがAndroidアプリを開発するために使っている。そして一つのエミュレータで、Androidのいろんな構成をシミュレートできる。
Genymotionでは、ほんの数クリックで仮想デバイスを始動でき、パフォーマンスを調べたり、電話の起呼や、ネットワークが落ちたり、デバイスのパフォーマンスが劣化する様子をシミュレートすることもできる。基本的にはこのエミュレータは、Androidのバージョン2.3から5.1までの、3500種のAndroidデバイスをシミュレートできる。
今ではSamsung、Facebook、Twitter、Microsoft、それにGoogleなど、大手テクノロジ企業のQA部門がGenymotionを使っている。これらの企業が払うライセンス料は、年間300ユーロだ。有料顧客数はほぼ1万だから、Genymobileの最初の製品の年商は順調である。
Genymobileがその後リリースしたGenydeployは、IT部門のためのデプロイツールだ。企業はAndroid機を社員たちに渡す前に、アプリケーションをインストールし、またAPNやVPNをセットアップしなければならない。Genydeployは、この面倒な作業を肩代わりする。
協同ファウンダで副CEOのAngélique Zettorによると、これまでのIT部門は電話機の構成を手作業でやっていたが、このツールのおかげで大幅なスピードアップが可能になっている。
今作っている同社3つ目のツールGenymasterは、いわば多機能構成ツールだ。たとえばユーザの社内事情によってはEthernetのサポートも加えるし、USB→Ethernet変換ドングルを社員たちに配ってそれをテストする。あるいはOSをユーザ企業独自のブランドへとカスタマイズする。オンラインアップデートを管理し、Androidのアップデートがユーザのアプリを干渉/破壊等しないようにする。などなど。
きわめて低レベルのカスタマイゼーションだから、Androidの裏も表も知り尽くした技術者でないと扱えない。したがって、Genymobileでプロダクト以上に価値があるのが技術者たちだ。そもそも、高度なAndroidエミュレータや企業向けのデプロイツールをAndroidの総元締めであるはずのGoogleが提供しないのがおかしい、とも言える。でもGoogleがやらないからこそ、今日のGenymobileの存在価値がある、とも言えるのだ。