オンライン広告の業界団体であるInteractive Advertising Bureauの技術開発部門のTech Labが、オンラインのユーザー追跡の新しいやり方を提案している。そしてそれは、長命のCookie(クッキー)に置き換わることを狙っている。
IAB Tech LabのJordan Mitchell(ジョーダン・ミッチェル)氏、自身が書いた長い記事で、ユーザー追跡の歴史を述べるとともに、Cookieはインターネットの宝物だと言っている。Cookieがあることによってウェブサイトは、広告やコンテンツを各ビジターに合わせることができるからだ。しかし一方ミッチェル氏は、クッキーの欠点にも触れている。
各社独自のHTTPクッキーがこれまで、そして今だに、個々の消費者を識別するための中核的な仕組みとして使われ、個々のクッキーはそれをセットした者にしか読めない。消費者が自分の関心や個人的好みを伝えるための標準的で統一的な仕組みがないから、彼らがWebをサーフィンしたり、モバイルデバイス上でアプリからアプリへと渡り歩いたりするとき、自分の嗜好などを適切な相手に確実にブロードキャストする方法もない。
このような、プライバシーへの「分断化され私企業化されたアプローチ」により、今日の「データとプライバシーの危機」がもたらされていると彼は示唆している。
IABは広告主とメディア企業の業界団体として、デジタル広告のさまざまな規格を設定している。そのIABが今アクションを起こそうとしているのも、まさにこの危機が理由だろう。昔は何もなかったところに、今ではオンラインのプライバシーの取り扱いに関して政府の精査の機会が増えている。またApple(アップル)、Google(グーグル)、Mozilla(モジラ)などの企業は揃って、クッキーの効果を弱めることによってブラウザーのプライバシー保護を強化している。
このような動向に対してIABは「中立的で標準的な識別子によるプライバシー設定と、消費者によるそのコントロールのための標準的手法」を呼びかけている。
つまり、1回限りのクッキーに代わって、消費者を単一の識別子(Identifier)によりウェブ全域で追跡できるようにする。ミッチェル氏によると企業はその際、「そこに付随しているプライバシー選好へのコンプライアンスを整合的に開示しなければならない」。そして、それに関してミッチェル氏の説でIABは 「これらの標準規格の設定を一種の公共事業として行い、政府の規制に従う。またデジタルメディアとマーケティングの業界はブラウザーのプロバイダーと共にその標準規格を統轄する」と提案する。
「業界団体がユーザーを広範囲に追跡するための新しい識別子を作る」なんて話に対しては、警戒心が先立つかもしれない。たとえば広告をブロックするブラウザーを作っているBraveのCEOであるBrendan Eich(ブレンダン・アイヒ)氏は「連中は誰をからかっているんだい?たった一つの証明データがその人を、その人だけを指し、それが名前や個人情報にリンクしていて、大量のサイトや彼らのサードパーティが一瞬にして共有できるなんて、ひどい話だ」とツイートしている。
ミッチェル氏はCNETのインタビューで懐疑論があることを認め「広告業界が救世主だとは、誰も思わないよ。選好は消費者がセットすること、それには説明責任と信頼性が伴うことを、分かってもらう必要があるね」とコメントした。
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