免疫療法の改善からの新療法開拓のためバイオテックImmunaiが63億円を調達

創設からわずか3年で、バイオテックスタートアップImmunai(イミュナイ)はシリーズA投資6000万ドル(約63億円)を調達し、合計調達額は8000万ドル(約84億円)を超えた。若い会社ではあるが、Immunaiはすでに、単一細胞の免疫学的特質に関する世界最大のデータベースを確立し、既存の免疫療法の効果を高める機械学習を用いた同社の免疫解析プラットフォームを運用している。今回調達した資金で、同社はそのデータと機械学習の強みと幅を基盤に、まったく新しい治療法の開発へと業務を拡大する準備を整えた。

Immunaiでは「マルチオミクス」アプローチを採用し、ヒトの免疫システムに関連する新たな見識を獲得している。つまりそれは細胞のゲノム、微生物叢、エピゲノム(ゲノムの化学的命令セット)など、複数の異なる生物学的データの階層化分析だ。同スタートアップのユニークな点は、世界をリードする免疫学研究機関と提携して築き上げた、免疫に関する最大規模で奥深いデータセットと、独自の機械学習技術とを組み合わせて前代未聞のスケールで解析が行えるところだ。

「ありふれた表現かも知れませんが、私たちには、ゆっくり構えていられるだけの余裕がないのです」とImmunaiの共同創設者でCEOのNoam Solomon(ノーマン・サロモン)氏はインタビューで語った。「それは思うに、現在、私たちは最悪の状況にあるおかげで、機械学習やコンピューター処理技術が高度に発達し、そうした手段を活用して重要な見識を掘り出せるまでなったからです。周囲の人々と仕事ができる速度には上限があります。そこで私たちは、私たちのビジョンを活かし、そしてMITからケンブリッジ大学、スタンフォード大学、ベイエリアからテルアビブまで、非常に大きなネットワークの力を借りて、この問題を一緒に解決しましょうと人々に言ってもらえるよう、とにかく迅速に動きました」。

関連記事:がんの標的治療の開発を改善するMission Bioが約75億円を調達して技術のスケールアップを目指す

サロモン氏とその共同創設者でCTOのLuis Voloch(ルイス・ボロシュ)氏は、どちらもコンピューター科学と機械学習における幅広い経験の持ち主だ。彼らはまず、そうしたテクノロジーと免疫学とを結びつけ、テクノロジーが応用できる免疫学上のニーズを特定した。その後、Scientific(サイエンティフィック)の共同創設者で戦略的研究担当上級副社長を務めるDanny Wells(ダニー・ウェルズ)氏が、がん性腫瘍の免疫療法の効率化に集中できるよう、彼らのアプローチの改善に力を貸した。

Immunaiのプラットフォームは、既存の治療法の最適な標的を特定できることを、すでに実証済みだ。ベイラー医科大学と提携して行われた、神経芽細胞腫(副腎に見られることが多い免疫細胞から発生するがんの一種)の治療での細胞療法製品の使用試験もその1つだ。同社は現在、治療の新たな領域に進出し、その機械学習プラットフォームと業界をリードする細胞データベースを使った新しい治療法の発見、つまり既存の治療法の標的の特定と評価だけでなく、まったく新しい治療法の開発に進もうとしている。

「私たちは、ただ細胞を観察するだけの段階から脱して、細胞をかき混ぜて、何が起きるかを見るという段階に移行しつつあります」とボロシュ氏。「これは、コンピューター技術の面からすれば、やがて相関性評価から実際の因果関係の評価への移行が可能になり、私たちのモデルがずっとパワフルなものになることを意味します。コンピューター技術と研究室のどちらの面においても、これは極めて最先端のテクノロジーです。私たちは、あらゆる規模での実用化を最初に果たすことになるでしょう」。

「その次の段階は、『よしこれで免疫プロファイルがわかったから、新しい薬を作ろうか?』となることです」とサロモン氏はいう。「私たちはそれを、免疫システムのGoogleマップを数カ月以内に作るようなものだと考え、実際に、免疫システムのさまざまな道路や経路のマッピングを行っています。しかしある時点で、まだ作られていない道路や橋があることに気がつきました。私たちは、これから新しい道路の建設が支援できるようになります。現在の病気の状態、つまり病気の街を、健康の街に建て替える先導役になれたらと願っています」。

関連記事:がんの標的治療の開発を改善するMission Bioが約75億円を調達して技術のスケールアップを目指す

カテゴリー:バイオテック
タグ:Immunai免疫がん治療機械学習資金調達

画像クレジット:Immunai

原文へ

(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)