East Bayに生まれY Combinatorに育てられたIndustrial Microbesは、バイオ燃料で長年の経験を持つ三人の合成生物学者が創始したスタートアップだ。
三人はバイオ燃料のスタートアップLS9で出会った。同社はクリーンテクノロジのブームに乗って8000万ドルあまりを調達し、人工的に作ったバクテリアから燃料を作ろうとしていた。しかしベンチャー企業としてのLS9は、その後鳴かず飛ばずで、結局昨年、6150万ドルで買収された。
でもLS9で出会った三人、Derek GreenfieldとElizabeth ClarkeとNoah Helmanは、それぞれ、スタンフォードとUC BerkeleyとUCSFでPhDを取っており、自分たちの新しい企業を作って出直そうとしている。Industrial Microbesの目標は、天然ガスを工業用化学物質に変える微生物を設計することだ。
重要な違いは、バクテリアが糖ではなく天然ガスを消費すること。LS9のようなバイオ燃料企業は、糖のコストが大きいため、他と競合できるエネルギー価格を実現することが難しい。燃料以外の化学物質の市場は170億ドルの規模だが、やはり原料が糖ではなかなか難しい。
Greenfieldは曰く、“糖は原材料と見なされることが多いが、しかし良い原材料ではない。天然ガスは糖の1/4の価格だ。石油よりも安く、埋蔵量も多い。しかもそれは、合衆国で産出される。エネルギー効率は高いし、パイプラインのインフラもすでにある”。
Greenfieldらは、1970年代に発見された、泥炭湿原などで天然ガスを消費している微生物の遺伝子素材を利用しようとしている。元の微生物を育てるのは困難だが、それらのバクテリアから採取した酵素と遺伝子を一般的な微生物に注入してやり、天然ガスを食べて工業用化学物質を作り出す能力を持たせることはできる。
同社の最初の目標化合物はリンゴ酸だ。それはあらゆる生物が作り出すジカルボン酸の一種で、りんごの酸っぱさの元だ。リンゴ酸は、食品添加物として広く利用されている。これを十分な低コストで作れば、生分解性のプラスチックを作れる。そして最終的に彼らは、糖ではなく天然ガスから、安価な液体燃料を作るつもりだ。
DNA解読の費用はムーアの法則よりも高速に下がりつつあるので、Greenfieldらが行うさまざまな実験も、10年前に比べると、とても安くできるようになっている。費用の低下傾向に伴って今では、生物情報科学や合成生物学の分野のスタートアップが数多く生まれている。Y Combinatorの同窓生としては、Counsylや20nなどがいる。
[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)