VRチャットサービスの「cluster.」が優勝——IVSのピッチコンテストLaunch Pad

6月5日〜7日にかけて兵庫県で開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2017 Spring Kobe」。7日の朝には同イベントで恒例となっているピッチコンテスト「Launch Pad」が開催された。1社6分間のプレゼンテーションに審査を通過した14社のスタートアップが挑戦した。1位となったのはVRチャットサービスの「cluster.」だった。2位はネイルプリントサービスの「INAIL」、3位のWiFi接続サービス「タウンWiFi」、4位ビザ申請サービス「one visa」、5位飲み会マッチングサービス「LION Project」だった。登壇企業のサービスは以下の通り。

Popshoot:「よろペイ

お金の立て替えや貸し借りについての「メモ」を記録していく機能を軸にした個人間決済アプリ。ユニークなURLを発行し、貸し借りの相手がそのURLにアクセスすることでクレジットカード決済ができる。今後は店舗での支払い機能などを導入したり、独自のローンを提供することも検討する。詳細はこちら

タウンWiFi:「タウンWiFi

公衆WiFiの接続サービス。事前にWiFiサービスを選択すれば、接続可能なエリアに入るだけで自動的に対象のWiFiに接続できる。世界6カ国・200万スポットをカバーしており、累計200万ダウンロード、100万MAU(月間アクセスユーザー)。8月にはアジア、10月にはヨーロッパに展開する。今後は有料WiFiのアクセス権利販売、接続情報に合わせたプッシュ広告サービスでマネタイズを進める。

アスツール:「Smooz

ブラウザアプリ。レンダリングエンジンは標準のWebkitだが、高度なタブ操作や、履歴を元にレコメンデーションを行う検索、独自のソーシャルブックマークといった機能を提供することで、標準ブラウザであるSafari以上の体験を提供する。1人あたりのエンゲージメントは1日80ページ、起動回数5.6回。マネタイズは検索画面でのネイティブ広告、プレミアム機能の月額課金を準備中。現在日本、iOSのみで提供しているが、8月からAndroid版、海外対応を進める。詳細はこちら

ookami:「PLAYER!

スポーツエンタテインメント体験アプリ。スポーツの試合情報をリアルタイムに掲載。また観戦中の感想を投稿し、ほかのユーザーでコミュニケーションを取ることができる。試合の情報などはプッシュ通知を行うことで、試合の観戦を忘れるのを防ぐ。ビジネスモデルは広告に加えて、スポーツ動画の提供などを準備中。今後は観戦の熱量をアイコンで投稿できる「歓声エンジン」を導入する予定だ。詳細はこちら

クラスター:「cluser.

「引きこもりを加速する」を掲げるVRチャットサービス。数千人の同時接続が可能で、チケッティングサービスなども備える。VRデバイス(HTC Vive、Oculus Lift)だけではなく、PCでのアクセスも可能。また今後はスマートフォンでのアクセスも可能になる予定だ。5月31日に正式版をリリース。開発者の加藤直人氏は、同大大学院を中退後3年間“引きこもり”を体験していた。エイベックスなどと提携しており、今後はVR×ライブのイベントを展開していく予定だという。詳細はこちら

HoloEyes:「HoloEyes

CTスキャン、MRIの画像データ(匿名化)を元にVRデータを作成、VR、MRデバイスなどで操作して、さまざまな角度から閲覧したり、手術のミーティングなどに利用できる。すでにNTT東日本関東病院と東京都立墨東病院でも実証実験を実施している。年間50件まで100万円で提供中。データは症例の論文発表にも利用許諾している、今後はそのデータ閲覧サービスも準備しているという。
BIT:「INAIL」

自動ネイルプリントサービス。通常ネイリストが手書きでネイルを行う場合、2時間、8000円程度のコストがかかるが、このスピードとコスト削減を実現する。操作はタッチパネル。デザインを選択すれば、1本15秒程度(ネイリストなら15分程度)で高精細なネイルを実施できる。ハードウェアは独自開発。爪の形状を認識し、インクジェットプリンタと同じ仕組みでプリントを行う。マネタイズはハードの初期導入、データの月額課金、インクカートリッジの販売。今後ハードウェアの小型化、低価格化を進める。今後は海外展開も視野に入れる。

ネイン:「APlay PULSE

スマートフォンに届く通知を、音声で聞くことができるBluetoothイヤフォン。音楽や通話で利用するだけでなく、メールや天気予報、Twitterの投稿までを音声で確認できる。またボタンを押しながら放すことで、音声での入力を実現する。あらかじめ利用したいアプリを選択すれば、あとはそのアプリの通知が音声プッシュされる。現在Kickstarterでクラウドファンディングを展開中。今後はデバイスの9軸センサーをもとにした、音声によるナビゲーションサービスも提供することを検討する。

Cansell:「Cansell

「キャンセル不可」で提供されている宿泊予約の権利を売買できるサービス。出品された予約は審査をを実施し、予約の実在確認、予約金額の正当性確認、名義変更可否の確認を行うことで安全性を高めている。2016年9月にベータ版をローンチ。ビジネスは売買成立時の手数料15%。今後は旅行に限らず、さまざまな領域でのキャンセル、途中解約などの領域に参入。「権利の二次流通」を実現するとしている。詳細はこちら

Matcher:「Matcher

採用手段としてのOB訪問のメリット最大化をうたう。自社の社員と、「○○についてやってみませんか」といったプラン、会う場所をサイト上に登録。あとは学生ユーザーからの問い合わせを待つだけ。サービス開始から15カ月、学生ユーザー数は1万人。2000社が登録。リクルートでは新卒30人の採用に寄与したという。今後は学生のデータを閲覧してスカウトを行う機能を提供。スカウト機能は現在40社のスタートアップが利用するという。

Scouty:「Scouty

競争の激しいエンジニア採用。その転職潜在層にアプローチするスカウトサービス。SNSやGithubをはじめとしたネット上のオープンデータを取得人工知能で予測退職度を判断し、公開メールアドレスを通じてスカウトを行う。スキルやキーワードをもとに、80万人の人材からオススメの10人をピックアップする。5月にオープンベータ版をローンチ。すでに複数のテック企業に導入実績がある。ビジネスは月額10万円と採用時に年収の10%を課金する。詳細はこちら

Residence:「one visa

企業が採用する外国人の在留資格の申請・管理サービス。外国人雇用企業は前年度比13%(年間2万社)、その雇用のためのビザ取得は平均18種類の書類、申請の待ち時間は約4時間、行政書士の代理申請で10万円と非常に高額。これを解決するのがone visa。社員のビザ取得に向けて、人事が社員を招待し、必要な情報を入力すれば、書類を自動作成する。また代理申請もサービス上から可能だ。6月5日よりオープン版を後悔。月額費用と都度課金でサービスを提供する。今後は世界のビザ取得の支援サービスも準備中だ。詳細はこちら

ディライテッド:「RECEPUTIONIST

iPadを活用した無人受付システム。受付にiPadを設置、あらかじめ発行しておいたコードを入力することで(事前登録していない場合は担当者を検索も可能)、担当者を呼び出し可能だ。呼び出しにはSlack等を利用するため、電話や特別なシステムを導入する必要はない。10人以下の利用は無料。それ以上は登録者数に応じて従量課金。今後は遅延等を伝えるメッセージ送信機能なども提供するほか、スケジューラー、労務管理システム、名刺管理ツール等との連携も進める。詳細はこちら

ハイパーエイト:「LION Project

「キャバクラ版Uber」をうたうサービス。暇な女性と飲みたい男性をマッチングするCtoCサービス。男性側が時間やエリア、人数を選択してリクエスト。10分以内に条件に合うメンバーが集まれば飲み会の開催となる。過去実績では、深夜2時以降を除きマッチング確度95%だという。料金は60分5000円、延長は30分2500円。女性は対面面接(合格率20%)、男性との相互評価を実施し、点数が一定値以下になると男女とも利用できない。飲み会の手数料25%でマネタイズする。

インフィニティ・ベンチャーズが3号ファンド設立、中国出資ではリクルートと連携

インフィニティ・ベンチャーズLLP(IVP)は11月6日、3つめのファンドとなる「Infnity e.ventures Asia III,L.P.」を設立したことを明らかにした。

ファーストクローズの金額は約3200万ドル(1ドル110円換算で約35億円)。ファンドに出資するのはリクルートホールディングス、大和証券グループ本社、サミーネットワークス、ORSO、ミクシィ、ユナイテッドなどの法人のほか、個人経営者など。IVPは2009年に1号ファンドを立ち上げているが、これにはKDDIやミクシィが出資していた。IVP共同代表パートナーの小林雅氏によると、「当時に比べて、規模の大きい事業会社において新規事業開拓のニーズが増えている」とのことで、事業会社による出資が多くなっている。

また10月に上場したばかりのリクルートホールディングスもファンドに出資するが、今後はリクルートグループで海外に特化投資に特化したコーポレートベンチャーキャピタルである「合同会社RGIP」などとも連携して中国での投資を進める。今後IVPでは海外の大口投資家なども含めて、2015年前半に1億ドル規模までファンドを拡大するとしている。

IVPはこれまで、1号ファンドからの累計調達額は約1億2800ドル(1ドル110円換算で約141億円)で、これまで国内外合わせて40社以上に投資をしている。投資金額に対して投資先のバリュエーション(評価額)は3倍だそう。小林氏にもう少し詳しい話を聞いたところ、これまでのイグジット事例として最も大きいのは1号ファンドで出資したグルーポン・ジャパン。

2012年末にクロージングした2号ファンドでは、企業名は非公開とのことだがすでに一部の株式を売却しているほか、中国で決済事業を手がけるYeahkaやアプリ解析のApp Annieをはじめとしてバリュエーションが100万ドル超の企業が4社ほどある状況。「現時点で大きなイグジイットは無いが、含み益は見えている」(小林氏)。3号ファンドでもこれまで同様に日本と中華圏での投資に注力する。