Alphabet(アルファベット)のロボティクスに関する歴史は、これまで公にされている限りではムラのあるものだった。特にGoogle X(グーグルX、現在は単にX)の大規模な買収活動は、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)をソフトバンクに売却するという結果に終わった(ソフトバンクは最終的に同社をHyundaiに売却した)。その後のAlphabet / Googleのアプローチは、派手さはなく、より身近なロボットの用途に焦点を当てている。
米国時間7月23日、Xブログで発表されたIntrinsicは、まさにその条件に当てはまるものだ。確かに、今日のAlphabetにとっては理想的なテイクと言えるだろう。実質的に、X開発チームの最新ブランチは、産業用ロボットのソフトウェアを扱っている。それらは多くのメーカーが望むほど軽快ではない、大型で重いマシンだ。
この投稿は、AlphabetでMoonshots(ムーンショット)のVPを務め、現在はIntrinsicのCEOという肩書きを持つWendy Tan-White(ウェンディ・タン゠ホワイト)氏が執筆したもの。この会社の成り立ちについて、SaaS型ウェブサイトビルダーMoonfruitの共同創業者でもある同氏はこう書いている。
ここ数年、私たちのチームは、産業用ロボットがより幅広い環境や用途で活躍できるように、作業中に感知し、学習し、自動的に調整する機能を持たせる方法を研究してきました。Alphabetグループ内のチームや製造現場のパートナーと協力して、自動認知、深層学習、強化学習、動作プランニング、シミュレーション、力制御などの技術を使ったソフトウェアをテストしてきました。
Veo、Symbio、Covariantなど、大型・重型ロボットの拡張を目指すスタートアップのコミュニティは活気に満ちている。これらの企業は、Veoの人間とロボットのインタラクションにおける安全プロトコルのように、ある特定の要素に焦点を当てていることが多い。対するIntrinsicは、いわば月を目指しているようなもので(ムーンショットと同様、不可能に近い最高峰を目指している)、一度にいくつもの異なる問題に取り組む計画を持っている。
「私たちは、(ソーラーパネルから自動車まで、あらゆるものの製造に使用されている)産業用ロボットをより使いやすく、より低コストで、よりフレキシブルにするためのソフトウェアツールを開発することで、より多くの人がロボットを使って新しい製品、ビジネス、サービスを構築できるようにしています」とタン゠ホワイト氏は書いている。
確かにAlphabetには資本力と人材を引き寄せる力があるため、先行している競合他社がいくつかあったとしても、彼らとしのぎを削ることは可能だ。とはいえ、Intrinsicも決して新しい会社ではない。この投稿によると、同社は5年半にわたってX恒例のステルスモードで活動してきたようだ。
今回のニュースは、IntrinsicがAlphabet傘下の「独立した」企業としてデビューすることを意味している。同社はムーンショット分野を離れ、自動車、ヘルスケア、エレクトロニクス分野のパートナーを探して、自社の技術を実証していく予定だ。
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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Alphabet、Intrinsic、Moonshot
画像クレジット:Gramazio Kohler Research, ETH Zurich
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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)