ファッションECのIROYA、自社ノウハウをもとにオムニチャネル基盤を提供——大和ハウスや東急など提携

毎月特定の「色」をテーマにしたセレクトショップとファッションECを展開するIROYA。これまでC向けにサービスを展開してきた同社が、大和ハウスグループや東急グループと組んでB向けビジネスを展開する。同社は7月12日、アパレルなど小売流通事業者向けのオムニチャネル支援に向けたプラットフォーム「Monopos」の提供を開始した。

IROYAは2013年10月の創業。代表取締役社長兼CEOの大野敬太氏は、学生時代に地元・神戸のアパレルショップの店員を経験。その後広告代理店やコスメ系IT企業、コーポレートベンチャーキャピタルなどを経てIROYAを起業した。

冒頭で書いた通り、毎月特定の色をテーマに、幅広いブランドを集めたセレクトショップ「IROZA」を展開。東京のほか京都、名古屋、博多などでポップアップストア(期間限定ショップ)を出店した後、現在は東京・渋谷の東急百貨店東横店に旗艦店を出店。同時にECサイトの「IROZA」も展開している。

IROZAの実績について

IROZAの実績について

そんな同社が展開するMonopos。これはIROZAの店舗、ECサイト運用の経験をもとに、倉庫や物流のマネジメントから在庫登録、配送、ECサイトの運用、店頭でのPOS利用、決済代行まで、サプライチェーンの行程を一元管理するプラットフォームだ。“オムニチャネル支援”とあるように、EC、実店舗むけそれぞれに機能を提供している。EC向けに自社サイト構築やウェブでの集客サービス、決済代行、配送といった機能を提供する一方、実店舗向けにはスマートフォンベースのPOSレジを提供するほか、集客支援などの機能を提供する。

この仕組みを実現するため、IROYAでは大和ハウスグループの大和物流(倉庫提供やフルフィルサービスを支援)、VOYAGE GROUP傘下のVOYAGE VENTURES(アフィリエイトによるウェブ集客支援)と資本提携業務提携を実施。また東京急行電鉄(東急電鉄)、東急百貨店(新規出店店舗向けにオムニチャネルサービスを提供)と業務提携、ヤマト運輸(配送連携および決済代行)とサービス連携を実施している。なお資本提携による調達額やバリュエーションは非公開となっている。

「Monopos」のサービスイメージ

「Monopos」のサービスイメージ

Monoposを利用するメリットの1つは、ECサイトと店頭の在庫を共有できること。これまではシステムが分かれているため、ECサイトと店頭で販売アイテムの在庫を分けて管理する必要がった。だがMonoposではそれを一元管理できるため、販売チャネルごとの在庫を用意する必要がなく、結果としてアイテムの消化率を高めることができるという。また、ECサイト向けのアイテム撮影や商品登録などのフルフィルメント業務はパートナー各社が対応。登録したアイテムは、IROZAに在庫シェアが可能。新たな販路を開拓することもできる。ユーザーにはそれぞれ固有のIDとQRコードを発行。このQRコードによって、ユーザーごとのEC・店舗両方の利用を管理できる。

今回の取り組みは、東急電鉄が手がけるスタートアップ向けアクセラレーションプログラム「東急アクセラレートプログラム(TAP)」がきっかけになっているという。プログラム発表の際にはその温度感が分からないところがあったのだけれど、今回の発表といい、クローズドで開催している着実に成果を出しているということだ。もちろん大和グループには倉庫の新しい利用用途の発掘、東急グループにはテナント誘致といった狙いはあるだろうが、小売流通事業者にとっても、EC・実店舗を1つのプラットフォームで管理できる意味は大きいはず。最近だとアパレル業界の不況について報じられることも増えているが、このプラットフォームを利用して事業の効率化を図るといったケースも今後出てくるんじゃないだろうか。

「色で服を選ぶ」ニーズはあるか? ファッションECサイト「IROYA」が資金調達

洋服を選ぶ基準はブランドやデザイン、価格などさまざまだが、「IROYA(イロヤ)」は毎月設定する「色」に応じて、国内外の有名ブランド品から1点モノの古着までを販売するECサイトだ。東京・渋谷にはリアル店舗も構えていて、例えば「黄」の月には黄色いアイテムだけが並ぶ。ECサイトと店舗はデータベース連携していて、ユーザーは1点モノであってもどちらからも購入できるようになっている。

ファッションECといえばブランドやカテゴリー、検索で商品を探すものがほとんどだが、果たして、色で服を選ぶニーズはあるのか? この点についてIROYA代表取締役の大野敬太氏は、「色は購入決定のすべての要因にはならないが、ブランドを知らなかったり、気分で商品を買う人のタッチポイント(入り口)になる」と説明する。会員数は非公表だが、毎月のECサイトや店舗での購入リピート率は「1〜2割」といい、これまでの流通総額は「数千万円程度」に上る。

8月11日には、金額は非公表ながらも、ニッセイ・キャピタルに対する第三者割当増資を実施したことを発表した。これに先立ち6月には、はてなやバイドゥ、DeNAなどでエンジニアを務めていた水野貴明氏を取締役兼開発統括担当として、auのINFOBARのUIを設計したことで知られる奥田透也氏を社外取締役兼クリエイティブ統括担当として迎えるなど、チーム強化を図っている。

今後は、ユーザーが頻繁に閲覧する商品の色に合わせたコーディネートを提案するアプリを投入し、売上拡大を図る。IROYAが扱うアイテムはすべてRGBデータがタグ付けされていて、「赤寄りのオレンジ」や「ピンクがかった赤」などの色による精密なソートが可能となっている。コーディネート機能では、白のトップスに関しては「ピンクがかった赤」よりも「赤寄りのオレンジ」が似合うといった「左脳的なアプローチ」で提案するとともに、自社のスタイリストによるチェックで精度を上げていくという。