元Adobe CTOでクラウドの導師ケビン・リンチが、Appleの技術担当VPに

Adobe CTOのKevin LynchがAppleに移った。AppleはiPhoneからFlashを疎外しこの技術の衰退を早めたであろうことで知られている。Adobeが本誌に対して正式に認めた。かつてLynchは、Adobeの公式ブログでFlashを強く擁護する記事を書いたが、最近はAdobeを未来へと導くことに専念し、過去について語ることはなかった。

Lynchは近年Adobeのクリエイティブクラウド立ち上げと推進に尽力してきた。クリエイティブクラウド(および同じくLynchが開発を率いたマーケティングクラウド)は、Adobeがパッケージ販売からクラウド主体のSaaS型商品へと移行する上で鍵となるサービスだ。Lynchのおかげで、Adobeはクラウド中心の会社への移行を、同様の遷移を試みるどの会社よりも早く成功したと言ってもいい。

Appleは、クラウドが同社ユーザーにとって世界の中心になると明言しており、2011年WWDCのキーノートで発表したiCloudは、Appleエコシステムのまさに中心となるものだ。iCloudは情報やメディアをあらゆるデバイス利用可能にしてiOSとOS Xを結びつけることにある程度の成果を得た。しかし、他の面は必ずしもうまくいっていない。iCloud、iTunes Matchなどクラウドベース製品の性能に関するAppleに対する苦情は多くシステムダウンも稀ではない。

Appleのインターネットソフトウェア・サービス担当SVPのEddy Cueは、現在iCloudの責任者で、その前身でさらに不評をかっていたMobileMe時代からの担当者だ。Cueは、iTunes、App StoreからSiri、マップ、iAdにいたるまで数多くのApple製品を見ている。このためCueがiCloudの定常的問題を解決するために、定評あるクラウドサービスのベテランの力を借りることは十分に考えられる。

Lynchは、Adobeのマルチプラットフォーム開発および迅速な製品デザインに対する強い関与についても責任を負っていた。モバイル端末用にフル機能の製品を要求するユーザーの声に答えて、Photoshop Touch for iPadや、最近さらにiPhone版も発売したのは、Lynchの力によるものだ。

AllThingsDのJohn PaczkowskiとCNBCのJohn Forttの報道によると、LynchはAppleの技術担当SVP Bob Mansfield直属の技術担当VPに就任すると見られている。Mansfieldの専門分野はワイヤレスと半導体技術だが、役職上社内で多くの権限を持っている。LynchのAdobeでのソフトウェア経験は、Mansfieldのチームと直接一致しないように見えるが、Mansfieldは昨年引退を撤回した際、「将来の商品開発」を手伝うために会社に留まったと言われている。Appleはハードウェア製品とソフトウェア製品を隔離することの会社なので、全デバイス横断で使えるクラウドを強く推進するためには、所属に関わらず推進役にはLynchが有力な候補者になるだろう。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)